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第6回一橋オープン体験レポート

 この大会は1997年3月8日、一橋大学小平校舎にて、一橋大学クイズ研究会主催で行われたオープンクイズ大会です。関東の大学クイズサークルによって行われるオープン大会では最古の歴史を誇る(そう大げさなものではないが)この大会は、今でも予選に三択クイズを残すという昔の形式を踏襲し、また見応えのある名勝負を数々と残してきた大会でもあります。そんな大会も今年で第6回。今回はどんな名勝負を見ることができたのかを記します。そしてまた、自分がそんな名勝負を演じることができた機会を与えてくれたことに感謝します。
 快く資料提供してくださった飯田にも感謝します。


スタッフ
問読み:金谷竜太郎
司会:飯田暁、東田典子
正誤判定:小田典生


1R:ペーパークイズ(全員→55名)

 開始前、前回・第5回の優勝者である秋田さん、第4回の優勝者ノビさんへのインタビューが行われた。秋田さんが無難にかわしたのに対し、大学院を辞めたノビさんが、それを知っている飯田から遠回しなわざとらしい質問をされまごつき、笑いの種になっていた。その後、参加はしていないものの、第3回優勝者・菊地英豪さん、第2回優勝者・那谷明弘さん、第1回優勝者・布川尚之さんといった、おそらく現在のプレイヤーの大半は知らないであろう懐かしい名プレイヤーを列挙していた。
 一連の前振りが終了して、ペーパークイズが配られる。参加者はおよそ130人程度だが、三択という運の要素もある程度重要であるペーパーだけに、いかに自分のペースで解答できるかが鍵だった。
 ペーパーの三択は、過去の傾向とはうって変わって大部分が知識重視の出題。勘で3分の1という出題はほとんどなく、確かな知識が要求された。筆記問題の方はというと、大部分は基本問題で、中には聞いたことはあるけれど覚えていないといった出題がちらほら見られる。

 三択は問題文が短くパッと読めるので、時間に余裕を持って解答することができ、まず予選落ちはないだろうという出来で終える。
 しばしの休憩後、解答発表。三択が面白いように的中し、筆記も絶好調。67+α点が自己採点となり、近くで採点していた秋田さんから「うっわ、負けたわ、こりゃ。俺60ちょいだもん」ということを言われ、「もしかしてペーパートップじゃなかろうか?」などと本気で考え始めた。ただ、秋田さんは前回ノビさんに「ペーパー何点?」と聞いたら「40ちょいですよ」とか言われたので、「よし、トップいただき」とほくそ笑んでいたら、「ペーパー1位、54点、田中伸之さん」と発表されているという過去があるので、ぬか喜びにならないようにおとなしくしていた。


2R:2○2×早押し(55→30名)

 昼休みが終わっていよいよペーパー成績の発表。「ペーパー1位、三択29問、筆記21問、合計71点、所属団体・コンモリヰ連卍、池田忍さん!」拍手と共に黒巣やラガーが「何じゃコラァ」「ぶっ殺すぞぉ」と抗議の声を張り上げる中、司会者の前に歩み出た忍へインタビューが始まる。「しっかし、このペーパーでよく70点以上取れるなぁ〜」と感心していたら「2位、70点、鈴木舟太さん」と発表。正直これには自分でも驚いた。そして3位には栗田修が呼ばれ、何とコンモリヰ連がワン・ツー・スリー・フィニッシュを飾り、また秋田さん、ノビさん、能勢さんといったクイズ王世代を追いやり、この世代が関東のオープン大会では初めて予選上位3位までを独占する快挙を達成した。近年、世代交代が起こりづらかっただけに、うれしくもあった。逆に、先輩であった人々がオープンに参加しなくなってきていることもあり、淋しい面もあった。まぁ、これ一回の快挙で終わらせず、何度でも予選上位に顔を出したいというのが一番の本音であるが。


ペーパークイズ各種ベスト10

総合
順位名前得点
第 1位池田忍71点
第 2位鈴木舟太70点
第 3位栗田修67点
第 4位田中伸之67点
第 5位舛舘康隆66点
第 6位秋田芳巳64点
第 7位黒巣弘路64点
第 8位半田茂幸64点
第 9位沼田正樹62点
第10位神野芳治60点

三択
順位名前得点総合順位
第 1位大倉太郎36点総合11位
第 2位秋元雅史36点総合29位
第 3位鈴木舟太34点総合2位
第 4位秋田芳巳34点総合6位
第 5位田中伸之33点総合4位
第 6位遠藤誠33点総合17位
第 7位松本隆一33点総合26位
第 8位戸田賢司33点総合38位
第 9位相田聡一33点総合39位
第10位沼田正樹32点総合9位

筆記
順位名前得点総合順位
第 1位池田忍42点総合1位
第 2位舛舘康隆38点総合5位
第 3位鈴木舟太36点総合2位
第 4位栗田修36点総合3位
第 5位田中伸之34点総合4位
第 6位黒巣弘路34点総合7位
第 7位半田茂幸34点総合8位
第 8位木下良太34点総合12位
第 9位吉屋大樹32点総合16位
第10位村上彰32点総合19位

 ペーパークイズにおける3種類のベスト10を列記したが、これを見て気付くのは、三択は総合順位にかなりのばらつきがあるが、筆記はより順位に反映している点であろう。


 さて、予選通過者は控え室(=廊下)に集まり、セットごとに分かれていった。私は2組目の先頭で待機していたが、黒巣、木下、遠藤と強豪が続々と入ってきて(=教室から出てきて)、「何で今回に限ってペーパー上位のシードがないんだよぉ〜」と一人ぼやいていた。
 とりあえずはペーパー上位50名までが発表され、ボーダーラインが46点と判明。ペーパーの次点となったのは、一橋期待の新人・駒形哲郎その人であった。三択上位5名は、2○2×を行うときに発表される。

1セット目
予選 1位 池田忍  (慶応大学4年)
予選 6位 秋田芳巳 (東京大学OB)
予選11位 大倉太郎 (早稲田大学2年)
予選16位 吉屋大樹 (慶応大学4年)
予選21位 松村憲昌 (明治大学3年)
予選26位 松本隆一 (なんたまクラブ)
予選31位 渡辺徹  (法政大学3年)
予選36位 佐々木繁樹(東京大学3年)
予選41位 宮崎和彦 (日本大学3年)
予選46位 西村陽  (東北学院大学3年)
三択 1位 小野大佐 (早稲田大学OB)
 予選1位の忍、前回チャンピオンの秋田さん、前回3位のラガーがいるが、ほぼ互角の争いを展開できるプレイヤーが揃っている組である。
 1問目は秋田さんが誤答と痛い出だし。

2問目「サケやコマイなどの魚を凍らせて薄く切った/」
ラガー「ルイベ」

先制点を挙げたのはラガー。さすが北海道通である。その後秋田さん、吉屋が1○とし、

6問目「日本では当初東京日比谷の「みゆき座」ただ1館だけでしか公開されなかったものの、観客が殺到したため近くの「シネマ2」でも上映されるようになったという、タイの首都バンコクを舞台にシルビア・クリステル/」
秋田「エマニエル夫人」

この正解で、いきなり誤答の出だしだった秋田さんが2R最初の通過者となる。やはりベテランは勝負強い。しばらくは1○を付ける人が続く展開となり、2人目の通過者は13問目に「あさりど」を正解した大佐。それで勝負の勢いがついたか吉屋、ラガーが立て続けに抜けて残る席は2つ。

19問目「1938年のアメリカ映画「少年の町」ではスペンサー/」
忍「フラナガン神父!」

1×先行で苦しい状態が続いていた忍が見事な正解で5人目の通過者となった。20問目は大倉が勝負に出るも誤答、21問目に西村さんが正解して1セット目の戦いに終止符を打った。


一口メモ


2セット目
予選 2位 鈴木舟太(明星大学4年)
予選 7位 黒巣弘路(法政大学3年)
予選12位 木下良太(慶応大学4年)
予選17位 遠藤誠 (早稲田大学1年)
予選22位 西岡能範(明治大学2年)
予選27位 串戸尚志(明治大学2年)
予選32位 千田裕之(慶応大学3年)
予選37位 春日誠治(明治大学2年)
予選42位 松石徹 (慶応大学2年)
予選47位 豊田治 (京都産業大学OB)
三択 2位 西村友孝(明治大学1年)
 私より年上が豊田さん一人で、同年でも木下だけ、1年2人・2年4人と、フレッシュな顔ぶれが揃った。はた目から見ると、上位2名は法政リバティのプレイヤーが占め、慶応・明治が席を取り合っている状況でもある。さて、私のここ最近の2○2×系は、「モンキーズ(3○2×)」「ダダイスト」「マンオブ」と3連続で敗退しており、今度こそはという意識が強かった。「ブーブー」「舟太帰れー!」という暖かい声援が飛ぶ中で席に着く。

1問目「これまでに増永丈夫、田所康雄、秋元貢などが受賞している/」
松石「国民栄誉賞」

松石はモンキーズの時に3○2×で対戦しており、その時にも感じていたが、こうしたちょっと変化した問題に対して柔軟性がある。それに対して私は答えを言われてからようやく渥美清や千代の富士の本名だということに気がついた。何だか不安な出だし。

2問目「1920年のアントワープオリンピックの男子テニスダブルスで熊谷/」
串戸「柏尾誠一郎」
3問目「「美男のおじさん」という意味の主人公のあだ名/」
遠藤「ベラミ」

忍の言葉を借りれば、「若者の血気盛んな押し」というところだろうが、正直早すぎる。ますます雲行きが怪しくなってきた。おまけに続く数学系の問題がさっぱりわからない。「舟太、専門じゃん」とのヤジが飛び、今回もダメっぽい雰囲気が頭の中で大部分を占めつつあった。

5問目「英語では「チャースティティ・ベルト」という、かつて、戦場へ向かう十字軍の兵士たちが妻の不倫を防ぐ/」

 「戦場へ向かう十字軍の兵士たち」という単語から、どっかの雑学本で呼んだ事項を思い出した。「そういえば兵士の妻が無事に帰ってくるようにネクタイを贈ったとかいう逸話があったよな〜それに何とかベルトって言い方もあるのかもしんないし、どのみちこのままでいると押さずに負けそうだから、思い切って押してみよう。」と、長いこと考えた末にボタンを押す。そして解答権を取った段階で、「あれ?兵士が妻に贈る?逆じゃん、やばい、どうしよう」と、頭が真っ白になった。ただ、「不倫」という単語が出ていたので、そこから正解そうな単語をひねり出した。

舟太「貞操帯?」

何とこれが正解。場内から笑いが漏れ、さらに司会の飯田から「不倫といえば舟太さんですね。」と突っ込まれて場内大爆笑。それまで不安であった頭の中が一掃され、いい感じになってきた。

6問目「セッコ、アコンパニャート/」
黒巣「レチタティーヴォ」

 もっとも、「貞操帯」を正解したからといって他のプレイヤーの攻め手が緩むことはあり得ない。とりあえず前半のうちは守りに入っておくことにした。

9問目「イランでは十字軍の侵略をイメージさせることから、赤獅子/」
松石「赤十字」

 2セット目最初の勝者となったのは松石。1×を背負ってこんな押しができるとは....とただ感心するしかなかった。11問目で串戸が抜け、また続々と1○にするプレイヤーが増えてきた。

15問目「1979年にコスラエ、ポナペ、ヤップ、トラックというカロリン諸島の4つの島が連邦を結成してできた国で、首都をパリキ/ール」

 ポナペやヤップといったらあの国では?とすでに導き出していたが、カロリン諸島が出ても押す人がいなかったので、最後に首都を言ったところで読ませ押しをして、確定させるつもりでいた。そしてその考えが壺にはまり、難なく解答権を取ることができた。

舟太「ミクロネシア」

ところが正解の音が鳴らない。やっべー間違えたか?と一瞬は思ったが、完全な間違いだったらブーが鳴るはず。ということは....

舟太「ミクロネシア....連邦」

この解答で正解の音が鳴り、私が3人目の勝者となった。リバティからは「やっぱり半濁音が入ってるよ〜」と、サークルネタでヤジを飛ばし、ここでも飯田が「黒巣さんが隣にいるのに強いですね」と突っ込んでくる。

20問目「「アガメムノン」「供養する女たち」「慈み/」
黒巣「オレステイア」

 ちょっと前の問題を「わかんない!」と大絶叫して1×を付け、ここでも押してから少し考えていたので、「また飛んだか?」とハラハラさせたが、解答をひねり出して4人目の勝者に。勝ち抜けた後もしばらく壇上でパフォーマンスを繰り広げ場内の笑いを誘い、飯田から「おい引っ込め」と言われる始末。残る席には1×を付けながらも春日、遠藤が滑り込み、2セットの勝者6名が決まった。


一口メモ


3セット目
予選 3位 栗田修  (早稲田大学4年)
予選 8位 半田茂幸 (明治大学4年)
予選13位 山本剛  (早稲田大学OB)
予選18位 佐々木貴之(東北学院大学OB)
予選23位 神山学  (早稲田大学2年)
予選28位 深澤岳大 (法政大学1年)
予選33位 宮澤大輔 (駒澤大学3年)
予選38位 戸田賢司 (一橋大学5年)
予選43位 小野寺慶一(東北学院大学4年)
予選48位 森家盛  (早稲田大学3年)
三択 3位 岡村悟史 (関東学院大学OB)
 2セット目とはうって変わってベテランが多いこの組。

3問目「本名・井原静子/」
岡村「青江三奈」
4問目「現在の三菱商事会長の父親で、50万以上の熟語を集録した「大漢和辞典」を/」
岡村「諸橋轍次」

 何と三択通過の岡村さんが、3問目に渋い正解を見せたかと思えば、4問目で即座に知識系を正解し、二連取で最初の勝ち抜け。それとは対照的に、5、7問目を深澤が誤答してまさかの失格。9問目で神山が抜け、

12問目「その撃退法は「ポマードと3回唱える」「べっこう/」
森「口裂け女」

という何だそりゃ?系の正解で森、続く13問目をRyuさんが正解して早稲田勢が立て続けに3人抜ける。14、15問目を宮澤さんが二連取して、早くもこの段階で残る席が1つ。16問目で深澤同様、栗田がまさかの2×で失格。優勝候補2人がこの組であっけなく消える形となった。17問目、佐々木さんが「ブランタジネット朝」でトリを閉め、早い展開の3セット目が終了。


一口メモ


4セット目
予選 4位 田中伸之(東京工業大学OB)
予選 9位 沼田正樹(慶応大学1年)
予選14位 中溝充雄(QUEST)
予選19位 村上彰 (社会人)
予選24位 能勢一幸(一橋大学OB)
予選29位 秋元雅史(東京大学4年)
予選34位 村上浩一(一橋大学2年)
予選39位 相田聡一(一橋大学2年)
予選44位 保科克浩(東京工業大学3年)
予選49位 新井浩 (同志社大学OB)
三択 4位 光山聡 (グランドスラム)
2問目「化学名はシクロヘキシルスルファミン酸ナトリウムという、ショ糖の30/」
ノビ「チクロ」

専門の化学を正解し、さらに4問目をきっちりと正解してノビさんが早々と最初の勝ち抜け。会場の方々からノブユキ・コールが贈られる中、壇上を降りていた。そして5問目に「サンドロ・ロポポロ」から「藤猛」を正解して新井さんが2人目の勝ち抜け。続いて7、10問目を正解した沼田が3人目、11問目を誤答するが、12、14問目と正解した能勢さんが4人目。
 残る席が2つとなったものの、ポイントを取った人がすぐに抜けていく展開で、1○の者がほとんどいなかったために乱戦の様相を呈してくる。18問目に村上(浩)、21問目に相田の一橋勢が揃って失格。23問目にしてようやく秋元さんが5人目の勝者とはなるが、席に残る4人の中で1○となっているのは中溝さんと光山さん。24問目に村上さんが正解して3人がリーチをかけ、にわかに勝負が盛り上がるかに見えたが、中溝さん、村上さんが立て続けに失格して光山さんと保科さんの2人に絞られる。その後スルーを2問挟んで29問目、光山さんがようやく勝負を決める正解をして長い勝負の幕を引く。
 このセットは3セット目の短期戦とはうって変わっての長期戦であった。もっとも、早々と抜けたノビさんや新井さんには短期戦だったが。


5セット目
予選 5位 舛舘康隆(福島大学4年)
予選10位 神野芳治(慶応大学2年)
予選15位 西田司 (慶応大学2年)
予選20位 井上幸治(明治大学4年)
予選25位 高山慎介(明治大学1年)
予選30位 西山義之(東京大学2年)
予選35位 鈴木亮 (早稲田大学3年)
予選40位 水谷準 (東京大学本学士1年)
予選45位 鈴木雅也(明治大学3年)
予選50位 菅原誠治(なんたまクラブ)
三択 5位 鶴祐一 (東京大学1年)
 三択5位の鶴さんが呼ばれたことで、大部分の人が一縷の望みを絶たれた。鶴さんの三択は28点と、去年と同じボーダーラインとなった。さて、こちらの次点なのだが、何とこれも一橋の新人・駒形哲郎であり、彼はよほど日頃の行いが悪いのだろう。
 4問目に雅也が速攻で来るが誤答。しかしこれが雅也の持ち味。

5問目「初代は近衛秀麿。その後ジョゼフ・ローゼンストック、尾高尚忠/」
雅也「NHK交響楽団」
6問目「大不況の続く1930年代のアメリカで、パーカー・ブラザーズというおもちゃ会社が発売して大ヒットさせたゲームで/」
雅也「モノポリー」

と、3連続の単独押しで、二連取して勝ち抜け。いつもペーパー順位は低いのに、早押しとなると俄然力を発揮するのが雅也である。その後しばらくは1○とする人が増える展開。13問目にして菅原さんがようやく2人目の勝者となり、続く14問目に神野が3人目の勝ち抜け。
 その後はまた間があくが、今度は1×を付ける人が増える展開。20問目にこーぢが4人目の勝者となるが、全体的な誤答の勢いが止まらない。21問目に得意の科学問題を西田が誤答して失格。22問目に鶴さんも失格。2人連続で失格していたが、23問目は「誤答するのでは?」という雰囲気がある中で高山がきっちり正解して5人目の勝ち抜け。
 残る席が一つとなったところで焦りが出たか、舛舘さん、亮が続けて失格し、水谷さんと西山さんの2人が残り、4セット目同様に一騎打ち状態となった。26問目はスルーとなるも、27問目で水谷さんが正解して2R最後の通過者となった。それにしても、95年のマンオブで予選落ちをして、NHKのソリトンで「引退します」と、かっこいいことを言っていた水谷さんはどこへやら。


敗者復活戦(敗者全員→2名)

 三択クイズの間は、司会者は休憩して、問読みの金谷が仕切っていた。まず1問目の音楽が流れ、歌い出しのホンの一、二文字が聞こえた時点で音楽がストップ。

金谷「この曲は中島みゆき作詞作曲の「時代」です。歌っているのは誰?」

と出題すると、方々から「エェ〜」という声が漏れる。すぐ近くにいたラガーは「もう(答え)出てるじゃん」と自信満々であった。

金谷「青.中島みゆき 桃.薬師丸博子 黄.それ以外」

 敗者が一斉に札を上げ、正解を待つ間、ラガーは「あの声は中島みゆきだよ」と言っていた。しかし音楽が流れ、歌が入ると共に金谷が「というわけで正解は黄色の「それ以外」です。ちなみに歌っているのは「研ナオコ」です。」と発表。完全に裏をかかれたようである。三択の単なる確率なら3分の1だが、見た感じでは4分の1しか残っていないようである。それだけみんな「それ以外」の選択肢を除外していたのだろう。
 続けて2問目の音楽が流れる。リラックスさせるような変なテンポのメロディで、その音楽が流れる中、

金谷「この曲はα波を分析して作られたバイオミュージックです。何をしながら聴くと良いとされている?」

との出題。この音楽を聴いたことがある人がいるのだろうか?と考えるだけ無駄であろう。

金谷「青.睡眠中 桃.食事中 黄.入浴中」

 青が若干少ないようで、桃色と黄色が半々くらい。「正解は黄色の入浴中」という発表と共にまた多数が座り、残ったのは7名。三択はたった2問で決着がつき、この7名でイントロクイズを行うことになった。

 イントロクイズでは再び飯田たちが登場。しばしのやりとり後にイントロがスタート。どうやらイントロが“凄く”得意という人はいないらしく、若干押すポイントが遅めの展開。それでも白熱した勝負が見られ、「ギンギラギンにさりげなく」「SEXY」と1、2問目を二連取した野口祐亮さんが復活。残る席が1つとなったところで3人がリーチ。6問目「ミセス・ロビンソン」を正解した松村憲昌が敗者復活となって終了。3R進出の32名がこれで出揃った。


3R:[1]ボード&サバイバルクイズ(8名→3名)

挑戦者
予選 1位 池田忍 (慶応大学4年)
予選10位 神野芳治(慶応大学2年)
予選17位 遠藤誠 (早稲田大学1年)
予選29位 秋元雅史(東京大学4年)
予選40位 水谷準 (東京大学本学士1年)
予選45位 鈴木雅也(明治大学3年)
三択 3位 岡村悟史(関東学院大学OB)
敗者復活2 松村憲昌(明治大学3年)
ボード1問目「我が国初の勅撰漢詩集「凌雲集」の編纂を命じた第52代天皇は誰?」

この「嵯峨天皇」は結構正解者が出るかと予想したが、正解したのは水谷さんと松村の2人のみ。2〜4問目は急に難度が上がり、正解者は0。このままろくに得点が入らないまま終了するのかという雰囲気になる。しかしそれを察したかのように、また難度がわずかに下がる。5問目以降、正解者が出なかった9問目を除いて、遠藤が5問正解。中でも6問目の「グラディアトル」を単独正解したのは貴重であった。

 ボードの結果、遠藤が20点、松村が18点、雅也が16点とこの3人が準決勝に最も近い。それにわずかな差を空けられたのは忍と神野の14点、1問目を正解したがその後は全く手が出なかった水谷さんは12点、そして秋元さん、岡村さんの2人はボード正解が0問で10点と苦しい状態からのスタートとなる。

 早押しでは誤答1問のミスを取り返すには2問の正解をしなければならないので、より正確さが要求されるサバイバルである。しかし1問目に雅也、2問目に岡村さんが誤答と、頭ではわかっているだろうが実際の得点を考えると、早く上位に追いつきたい一心で焦ってしまうようである。雅也の誤答によって、いきなり忍・神野・雅也の3人が14点で3位タイ。遠藤と松村、上位2人との得点差は大きく、この2人はもしかしたら早押し正解しなくても抜けられるのではという気になる。

3問目「戦前の岡田啓介内閣では法制局長官を務めたが、天皇機関/」
遠藤「金森徳次郎」

通過確実の得点差がありながらも遠藤が早押しで最初の正解を挙げる。これで3位集団とは7点差でより勝利に近づく。6問目から13問目まで神野が6度の解答権を取るも3○3×の成績。通常の形式ならばプラスマイナス0だが、誤答の減点が通常の倍であるため、3位争いからは完全にリタイア。その間に雅也が2問の正解で忍に2点差を付けて単独3位となる。

14問目「夫である小説家アースキン・コールドウェルと/」
遠藤「マーガレット・バークホワイト」

遠藤がこの段階で早くもダメ押しと言える正解で完全に頭一つ抜け出す。また、この正解で岡村さんが1点、秋元さんが2点、神野が3点となって脱落者が出てくる段階ともなってきた。15問目「ジェルミニー・ラセルトゥー」を忍が正解したことで岡村さんが最初の失格者となる。続く16問目「デラウェア州」を松村が正解したことで、早押しでも正解ができず、全くいいところが出せずに秋元さんが失格。さらに17問目は神野が玉砕し、3問で3人が脱落していった。
 席に残る5人の状態は、遠藤が12点、松村が9点とこの2人はよほどの無理をしない限りは勝ち抜けを確定した。秋元さん同様に早押しでの正解が全く無い水谷さんが2点とやや勝ち抜けるには厳しい。そして最後の席を巡って、雅也が6点、忍が5点と僅差の競り合いをしている。

18問目「1965年の第44回サッカー天皇杯決勝で、延長を含めて0−0と引き分け、八幡製鉄と共に天皇杯唯一の2チーム優勝となった、現在のJリーグチームJEF市原の前身であるチーム/」
忍「古河電工」

ここで忍が貴重な正解をし、雅也に追いつく。逆に水谷さんはあと1点で失格と逆リーチ。
 続く19問目、忍が確定ポイントで押しながらも誤答。せっかく追いつきながらもまた2点差を付けられてしまう。

21問目「昭和35年の浅沼稲次郎刺殺事件の全貌を9章にわたって/」
忍「テロルの決算」

それでもまだ忍が追いすがり、得意の暗殺問題を正解し、水谷さんを失格にすると共に、雅也と再び1点差に迫る。

22問目「1920年代にアメリカのフォルトム・ビンガムがギリシア語の/」
雅也「レオロジー」

雅也が再び2点差で忍を突き放す。持ち点は雅也4点、忍2点と、ラウンドの最終局面を迎えようとしていた。

23問目「江戸初期に完成した戦国大名・武田氏の軍学書「甲陽軍艦」の中で特に喧伝され/」

解答権を取ったのは忍。「山本勘兵衛」と解答するが、無情にも誤答の判定と、あっけない幕切れを迎えた。正解は「山本勘助」と、わずかな違いであるが誤答は誤答。場内から「あぁ〜」と誤答を惜しむ声が漏れる中、遠藤、松村、そして雅也の3人が勝ち名乗りを上げた。

勝者
1位:遠藤誠
2位:松村憲昌
3位:鈴木雅也


一口メモ


3R:[2]タイムレース(8名→3名)

挑戦者
予選 7位 黒巣弘路(法政大学3年)
予選13位 山本剛 (早稲田大学OB)
予選20位 井上幸治(明治大学4年)
予選25位 高山慎介(明治大学1年)
予選37位 春日誠治(明治大学2年)
予選46位 西村陽 (東北学院大学3年)
三択 1位 小野大佐(早稲田大学OB)
三択 4位 光山聡 (グランドスラム)
 ルールを見ればわかるように、合計12分のロングタイムレース。私が知りうる限り、オープン大会史上最長時間のタイムレースである。しかも前半5分と後半7分は完全に別物のルール。両方で上位に入らなければ勝てないという、まさにタイムレース好きの人のためのルールである。メンバーを見れば、何となーくそんな感じもしないでもないだろう。
 しかしこのタイムレースの間、3コース目のボードに出場する人々は控え場所にいて、この勝負をちっとも見られなかったのである。だからある意味“体験記”にはならないんだけれどね。


 さて、控えているプレイヤーは何をやっているのか?と疑問に思う人は少なからずいるだろう。きっと張りつめた空気が流れる中、精神を集中しているのだろうと誤解している人がいるやも知れないので、控え中での会話を一部再現・抜粋してみる。

秋田「長束の奴、モンキーズ勝っちゃったよ〜」
舟太「ワ〜イ、篆刻・・・アレ?・・て、篆書」
秋田「久保さんもやるなぁ、準優勝もってかれちゃったし」
舟太「結局海外へは行かないそうですね」
秋田「もう久保さんの予定はコロコロ変わるね」
沼田「あ〜あ、あの決勝、小川さん何やってたんだよ〜」
ノビ「えっ?それは何ですか?」
秋田「こいつボードサドンデスで、インドネシアの民族料理答えさせる問題で「ナシゴレン」を「ナシレンゴ」って書いて、小川さんに勝ちを持って行かれてんの。」
沼田「おまけに小川さんが、優勝してくれれば負けてもしょうがないと思うのに、決勝7○3×を0○2×で終わってんだもん。チキショー、小川ぶん殴ってやりたいぜ」
(しばしの間)
舟太「ホントに着々と「人類築山化計画」が進んでますね」(築山さんとは、前大会で4位に入っているクイズの強豪であるが、私や東工大の人にはアニメ&ゲームが好きな人としての一面もある)
ノビ「ホント築山さんちは凄いよ〜。それに前回の一橋オープンについて書いたものに、「秋田とノビがATフィールドを張っている」とか書いてあったんだけれど、あの時は意味がわかんなかった。」
秋田「「魂のルフラン」買っちゃいました」
ノビ「あなたみたいな人が影響されて買うからオリコン3位に入っちゃうんですよ〜」
秋田「か〜えり な〜さ〜い〜」(ゴキゲンな秋田さん)
舟太「クイズ界で一時期「ヤマアラシジレンマ」が流行った理由が、あのアニメを見てやっとわかった」
神山「えっ、アニメからクイズ作ってるんですか?でもそれはちょっと」
舟太「でも別にアニメ主体を押し出した出題じゃないからいいんじゃない?実際に心理学用語で使われてるし。他の人には「ああ、そんなのがあるんだ」で、アニメを見ている人は「ああ、コイツあれから作ったな」とわかる人にはわかるって感じの出題なら問題ないだろ。」
吉田(智樹)「綾波とかは?」
舟太「それはやめろ」
秋田「しっかし、あれって心理学用語とか宗教用語が訳わかんない使われ方してるよな」
ノビ「メルキオール、バルタザールなんてのも」
舟太「おっ、ガスパールで東方三博士」
秋田「あのアニメ、「死海文書」って、明らかに使い方違うだろ」

てな感じである。私は今まで、みんな無口で精神統一しているなんて光景は見たこと無い。むしろそっちの方が不自然である。それにしても「エヴァンゲリオン」はクイズネタになるものが多いから、見てる人が多いよなぁ。まぁ私も「ディラックの海」をあのアニメで覚えたんだし。


 かなり脱線したが、廊下でチョットだけ聞こえた事柄と、テープに録音されていた事柄からこのラウンドは記す。

 まず前半。5分間で正解+1、誤答−1の単純ルール。前半で何点稼ごうと後半には何の影響も無いので、上位6人に入りさえすればいいが、この8人の中での6人となることも困難であろう。

1問目「その独特の名前と容貌は、共にラジオドラマ作家の菊田一夫がモデル/」
黒巣「金田一耕助」

片手に早押し機、片手にビールを握る黒巣が幸先の良い出だし。もっとも5分間の長丁場であるから、その後の方が大事である。
 最初のうちは、

10問目「弟グスタフと共に鳥の飛行を/」
?「リリエンタール」
15問目「オスカー・ワイルドの小説「ドリアン・グレイの肖像」/」
?「バジル・ホールワード」
20問目「三菱重工業が堀越二郎/」
?「ゼロ戦」

といったツボを抑えた正解で着々と加点する者が多かったが、25問を過ぎたあたりで誤答の方が目立ち始め、得点が入り乱れた様子。Ryuさんがダントツのようだが、誰が勝ったかというのは判断しづらかった。
 5分間のうちに全部で46問を消費。集計中のため少し時間が空くが、その間

飯田「早いですねぇ〜、何で「ドリアングレイ」→「バジル・ホールワード」と来るんですか?」
深澤「それしかねぇのか!」

という掛け合いや、酒を空けてしまった黒巣が深澤からビールをもらって飲み始め、

深澤「ワンカップ買ってくる?」
黒巣「ワンカップにするかぁ」
深澤「んじゃ、買ってくる」

と、凄い会話が交わされていた。
 そんなこんなでようやく集計結果が発表された。
 何とRyuさんがダントツの10ポイントでトップ。黒巣と春日が3ポイントで並び、西村さん、光山さんが2ポイントでそれに続く。最下位となったのは−2ポイントの大佐で、前半で姿を消した。そして最後の当落線上にいるのは、こーぢと高山で共に0ポイント。この2人に対する2○2×のサドンデスが行われることとなった。
 1問目、こーぢが誤答で1×。2問目をスルーとして3問目は高山が誤答。共に1×となる。4問目はスルーとなって、5問目に高山、6問目にこーぢが正解して両者ダブルリーチ。盛り上がる展開である。勝負を決める7問目、問題が読み切られる直前にこーぢが解答権を取って、「デサント」を正解し、高山に先輩の格を見せつけた。


 後半戦は7分間。黒巣、Ryuさん、こーぢ、春日、西村さん、光山さんの6人で争われることとなった。今度は誤答3回で解答権が無くなることから、どのあたりで勝負に出るかも重要である。
 後半戦がスタートして、まずわかったことは、タイムレースといっても問題が特に短くしてあるわけではなく、押せるポイントを増やした長文問題がメインである。タイムレースの時間が7分と長いのはこのためであったのだろう。とはいえ、難易度調整はタイムレース向きの問題が揃っており、3回の誤答で解答権が無くなることも手伝って、確実に確定ポイントで押す人が多い。だが、逆に慎重になり過ぎで、「英語名をアーチャーフィッシュ(答:鉄砲魚)」という確定ポイントが出ているのに誰も解答権を取らないといった、タイムレースの売り物であるスピード性が損なわれているようでもあった。
 序盤から中盤への橋渡しのあたりで、

14問目「「ソン・ハリスシエンセ」と呼ばれる民族的舞曲を多く演奏する/」
?「マリアッチ」
15問目「自宅の風呂場で転んで骨折したため、東京・麻布のスウェー/」
?「朝永振一郎」

といった速攻の押しがようやく見られ始める。その後も普通の早押しよりかは若干ハイペースの展開で、

22問目「その名を冠した賞の第1号受賞者は井野川利春/」
?「橋戸頑鉄」
28問目「教師を務めていたが巖本善治との結婚を機に創作・翻訳活動を開始し/」
?「若松賤子」
39問目「その名前を廃止する提唱が昭和59年の第1回「日本新語/」
?「トルコ風呂」

といった目を見張る早押しもいくつか見られ、会場内は盛り上がっていた。
 消費問題数は41問と、時間が短かった前半よりも少ない消費に留まった。結局3×を付ける人はいなかったが、春日の正解が群を抜いていたようで、それに黒巣が続き、後はわからないという雰囲気であった。
 前半とはうって変わって、すぐに集計が終わり、激戦の余韻を残さないまま結果発表。1位は春日の10ポイント、2位に6ポイントで黒巣が入り、集計しなくてもわかるほど稼いでいた2人がまず勝ち抜けた。光山さんが1ポイント、西村さんが2ポイントで残念ながら力及ばず敗退。Ryuさんとこーぢの2人が3ポイントで同点。後半においても2○2×のサドンデスが行われることとなった。
 サドンデス1問目はスルー。

2問目「1930年代、ジェリー・シーゲルとジョー・シュスターという2人の若者が生み出し/」
こーぢ「スーパーマン」

こーぢが前半とは逆に、先にリーチをかける。3問目は賭けに出たRyuさんが誤答。ますますこーぢ有利となる。

5問目「大阪では塚本真美がその「友の会」の会長を務め、また現在もそのキーホルダーが万博記念公園で/」
Ryu「太陽の塔」

これで共にリーチ。6問目、何と第4回法政オープン決勝ボード1問目で出題された問題の逆フリ。あの時はRyuさんが単独誤答していたので、インパクトが強かっただろうから覚えてはいないかと見ていたが、結局スルー。どちらが命拾いをしたのだろうか。

7問目「平安末期の僧・皇円によって成立した、神武天皇から堀河天皇までの記事がある歴史書で、渡来人の/」

解答権を取ったのはRyuさん。自信を持って「扶桑略記!」と解答して2○とし、こーぢを倒して3人目の通過者となった。それにしても得意の日本史問題がこの局面で出るあたり、ベテランの強いところである。こーぢも誤答で問題を潰せたのだが、まぁ、過ぎたことであり、Ryuさんの方がより強かったから勝ったのである。

勝者
1位:春日誠治
2位:黒巣弘路
3位:山本剛


一口メモ


3R:[3]ボードクイズ(8名→3名)

挑戦者
予選 2位 鈴木舟太 (明星大学4年)
予選 4位 田中伸之 (東京工業大学OB)
予選 6位 秋田芳巳 (東京大学OB)
予選 9位 沼田正樹 (慶応大学1年)
予選18位 佐々木貴之(東北学院大学OB)
予選23位 神山学  (早稲田大学2年)
予選33位 宮澤大輔 (駒澤大学3年)
敗者復活1 野口祐亮 (東京大学2年)
 ペーパー上位陣が集中したこのコーナー。2Rを勝ち抜けた後、秋田さんが「早押しじゃわかんないが、ボードなら勝てるしな。」と自信満々に話し、それと共にノビさん、沼田、神山といった強敵がこのボードを選択したことを知った。それに佐々木さん、宮澤君といった難敵が加わった。敗者復活してきた野口さんは、私が主催の一人だった第4回法政オープンでも敗者復活している人で、油断ができない人物である。
 私は、勝ち抜けに近いのはノビさんと秋田さんの2人で、まずこの2人が3つの席のうち2つを奪ってしまうことを想定していた。そういうことから、他の6人の中で1番になればよいということを始めから考えていた。ボードクイズということで、知っている問題を思い出せるかが鍵である。
 2Rの時同様、予選成績が上ということで私が先頭で入場。全員が席に着き、司会がルール説明を行っている間、先程のタイムレースで勝ち抜けた黒巣が「しゅうたー!、しゅうたー!」とバカでかい声援を送っていた。

1問目「ブルーリボン賞の第1回作品賞は今井正監督の「また逢う日まで」ですが、それに対抗して作られたピンクリボン賞の第1回作品賞を受賞したのは高橋伴明監督の「少女を襲う」と渡辺護監督の何?」

問題が読み終わると共に、ダダイストカップの早押しボードで使われたのと同じ音楽がシンキングタイム中に流れる。その間、やけに観客が騒がしい。しかし私は、ピンクリボン賞と聞いても「へぇ〜そんな賞があるんだぁ〜。」と、全然“気付かなかった”のである。タイムアップとなって、ボードが順々に読み上げられ、「制服少女全裸スポーツ」などと、ソッチ風の解答を聞いて初めて「あぁそういうことかぁ」と納得したのであった。(しかし、制服少女が全裸でスポーツしたら意味がないのでは?)正解は「少女縄化粧」で、当然正解者0。

2問目「アメリカンフットボールでボールがサイドラインの外に出たときにプレーを再開する、サイドラインの内側に引かれている波線を何という?」

アメフトの本は結構読んでいるのに、こんな事項は聞いたことがない。適当な答えを書いてとりあえずボードを上げる。また順々に解答が読まれ、ノビさんが「ATフィールド」とボケていたが、司会の飯田は私のピンクリボン賞同様に、気付かずに素通り。ノビさんがちょっとブルーになっていた。皆それらしい解答を書くも、正解の「インバウンズライン」を書いた人は0。2問連続正解者0で、他の人はどう考えたかは知らないが、得点チャンスが少なければ、秋田さんやノビさんを抑えられる確率が高くなるので、自分には有利だと考えていた。

3問目「トールキンのファンタジー小説「指輪物語」で、闇の力を秘めた指輪を消滅させるために仲間たちと旅をする主人公の名前は何?」

「やった!これは作った!」と一人ほくそスマイリング。「バギンス」と素早く書き上げるが、「あれ?確かあの話では名前の方で呼ばれていたな。しまった、名前を書かなきゃ不正解だ。」と気づき、「フロド・バギンス」とフルネームに書き直す。タイムアップで各自ボードを上げ、ノビさんと秋田さんがなぜか共に「フログ」と一文字間違えていた。この時、自分が書き間違えているとは全く思わず、何で揃って一文字間違いをしているんだ?と不思議に思ったくらい自信があった。結果、正解の「フロド」は私の単独正解で、一気に7点の先制点を挙げる。リバティ側の席から「舟太すげー」「愛してる!」等と訳の分からない声援が飛び、問読みの金谷から「静かにしてください」と注意されていた。続く4、5問目は正解者が0と、私の考え通りに進んでいた。

6問目「476年、ゲルマン人傭兵オドアケルによって追放された西ローマ帝国最後の皇帝は誰?」

世界史問題はさっぱりわからない。何人かのペンがサラサラ動いているようであった。結局私は無解答だが、多分何人か知っている人がいるだろうと予想していた。しかし幸か不幸か、ノビさんただ一人が「ロムルス・アウグストゥルス」を正解して私と同じ7点となる。秋田さんが「フロド」の時同様に若干の間違いで大量得点のチャンスを逸する。この誤答に秋田さんも「うっひゃ〜〜、シンクロ率が合わねぇ〜〜」とかなり動揺し始めていた。はた目から見ていて、どうも秋田さんの歯車がかみ合っていないようであった。もっともそれは私にとっては逆にチャンスとなるのだが....

7問目「グリム童話をもとにオペラ「ヘンデルとグレーテル」を作曲したドイツの作曲家は誰?」

私が一番恐れていた“良心的な”出題である。「やばい〜これは知っている人がたくさんいるぞぉ〜、やべぇ〜正解が思い出せない〜」と、パニックに陥っていた。この「エンゲルバード・フンパーディング」を正解したのはノビさん、秋田さん、沼田、佐々木さん、宮澤さんと実に5人が正解。各自に3点が追加される。「こういった出題が2、3問あるとまず上位3人には入れないな」と不安になる。更に8問目の「プリマス州」は、解答を迷ったあげくに無解答にしてしまい、頭の中の選択肢にはあったのに書かなかったことを後悔する始末。ノビさん、秋田さんの私が上位を予想した2名が6点追加。もっとも、これで当初の考え通りになったと開き直りつつあった。一応は現時点で3位をキープしているわけでもあったし。

9問目「プロ野球の球団・福岡ダイエーホークスの前の球団名は南海ホークス、ではその前の球団名は何?」

ホークスだから当然パ・リーグの球団なので、セのチームはまず排除。東映や日拓はファイターズ系列、毎日はオリオンズだからロッテ系だし、パールスは近鉄パールスだからこれも違う。クラウンや太平洋はライオンズだからダメだし、トンボや高橋ユニオンズは消滅・合併球団で問題外。次から次へと思いつく球団がことごとく当てはまらない。シンキングタイムが残り少なくなってきたところで、消去法で一個だけ消えなかったが、ほとんど自信がない球団を時間ぎりぎりに書く。
 飯田が私のボードを見て、「グレートリング」と読み上げる。本当にこれしか思いつかなかった。他の人は中途半端に組み合わせた球団名か白紙であった。金谷の口から正解の「近畿グレートリング」が告げられたときは、自信満々だった「フロド」の時とは違って、驚きを隠せなかった。この2度目の単独正解で14点とし、ノビさんの16点に次ぐ2位に浮上。3位の秋田さんが9点で、4位は沼田、佐々木さんの3点、他の3人は未だ正解できず。ここまで自分に都合のいいように行くと、かなり恐ろしいものがある。この単独正解でも黒巣から「舟太あぁー!」の大絶叫があり、また飯田から突っ込まれる。「舟が太いってどういう意味だよ!」「何で舟太って名前なんだよ!」と、また声援の訳が分からなくなってきたところで、また金谷から「静かにしてください」と言われていた。10、11問目は連続で正解0。

12問目「1918年、渡良瀬川の度重なる洪水を防ぐために渡良瀬川に建設された遊水池。この建設に際して、足尾銅山鉱毒事件の汚染が蔓延していたことを理由に廃村となり水の中に沈んだ栃木県にあった村は?」

これは小学校の頃に国語の教科書(田中正造が明治天皇に直訴した話)で読んだ記憶があるのだが、村の名前は覚えていない。勿論その後も田中正造に関することはよく聞いたが、こんなところで村の名前を思い出せずに後悔することになるとは。そしてこれもまた7問目の「フンパーディング」同様、クイズプレイヤーが抑えているべき系統の問題であることから、かなりまずそうな雰囲気。「谷中村」を正解したノビさん、秋田さん、沼田、宮澤君の4人に4点が追加される。残り3問でノビさん20点と1位の地位をほぼ固め、勝ち抜けを決定的にした。2位はまだ私で14点、3位の秋田さんが13点、4位タイで沼田と宮澤君が7点と、ここまででほぼ当落線上が引かれ、佐々木さんの3点、神山、野口さんの0点はかなり厳しい。もっとも1問で最高7点が入るから、まだ十分なチャンスは残っている。

13問目「ベートーベンの作曲した唯一のオペラ「フィデリオ」の原作である「レオノーレまたは夫婦愛」を書いたフランスの作家は誰?」

これはリバティの3問ペーパーで出題されてはいたが、これもまた思い出せずに無解答。神山が「ブイイ」を単独正解し、初得点の7点を獲得して沼田、宮澤君と4位タイで並ぶ。秋田さんが「バイイ」と、三たびの惜しい誤答。勝利が確定しているノビさんを除き、私、秋田さん、沼田、神山の4人が残り2問にかけることとなった。

14問目「数学の無限集合の濃度を表す記号としても用いられる、ヘブライ字母の第1アルファベットといえば何?」

「え〜っと、αに似た奴だよ〜」としか考えられず、これも思い出せなそうであった。これで3連続で思い出せないのかぁと諦めそうになったとき、ふっとその単語が頭の中をよぎった。タイムアップ直前になって「アレフ」とボードに殴り書きする。結果、これを正解したのは私、ノビさん、佐々木さんの3人で5点を追加。これによって15問目を待たずに私が勝ち抜けを決定。あと一つの席に対して、秋田さんが13点と最も近いが、佐々木さんが8点、沼田・神山・宮澤君が7点と、一発逆転は狙える状態であった。果たして秋田さんにロンギヌスの槍を命中させて殲滅する人が現れるか、最後の問題へと突入した。

15問目「ハンク・アーロンがベーブ・ルースの持つ大リーグ通算最多本塁打の記録を更新する715号のホームランを打ったときの相手投手は誰だった?」

これもまたクイズでたまに聞くエピソードだが、アレフでかなり頭を使ったのと、正解すると他のプレイヤーの逆転チャンスをつみ取ってしまうのではという余計な考えが働いて、思い出す気にはならなかった。ただ、逆転のチャンスをつみ取るという考えは、最初のうちはあまり働いていなかったが、シンキングタイム中に突如沼田が立ち上がって、「おまえら、動くな、書くんじゃねぇ!」とパフォーマンスを始めたので、確かに沼田が単独正解すれば秋田さんを逆転するので、私はそれをちょっと期待してもいた。しかし、黒巣が「つぅか、秋田さんが(正解を)書いている時点でおまえ負けだよ。」とミもフタもないことを言っていたので、金谷から「アル・ダウニング」の答えを聞く前に勝敗が決したことを知った。結局私は無解答。隣のノビさんは「キール・ローレンツ」と再びボケたのだが、ATフィールドを知らない飯田が気付くはずもなく、ボケが滑った以前にボケにさえ気付いてもらえなかったノビさんが少し不憫であった。
 さて肝心の得点は、秋田さん、沼田、佐々木さんの3人が正解でそれぞれに5点が追加され、そのまま秋田さんが3位に入って決着した。
 すでに決まってはいたが、司会から勝者として私の名が告げられ、ノビさん、秋田さんとガッチリ握手。黒巣からも「舟太イェー!」「舟太フォーエバー!!」などと、結局最後までよくわからない声援が送られた。とりあえずは席に戻ると、黒巣が「このボード、全部ドッキリカメラだから。」と、最後まで笑わせてくれた。
 ちなみに正解数ではノビさん5問でトップは揺るがないが、2位は秋田さんで4問、3位タイで3問正解が私、沼田、佐々木さんと3人おり、ある意味ルールのおかげで勝てたとも言えた。

 何だか初めて“体験記”っぽいことが書けたなぁ。でも何だか自慢話っぽいな。実際自慢しているのだからしょうがないが。にしても、15問のボードクイズをこんな長々と書いたのは初めてである。

勝者
1位:田中伸之
2位:鈴木舟太
3位:秋田芳巳


一口メモ


3R:[4]早押しクイズ〜ロシア風〜(8名→3名)

挑戦者
予選16位 吉屋大樹(慶応大学4年)
予選24位 能勢一幸(一橋大学OB)
予選27位 串戸尚志(明治大学2年)
予選31位 渡辺徹 (法政大学3年)
予選42位 松石徹 (慶応大学2年)
予選48位 森家盛 (早稲田大学3年)
予選49位 新井浩 (同志社大学OB)
予選50位 菅原誠治(なんたまクラブ)
 一橋恒例とも言える3Rのイロモノ企画。今回はこのロシア風早押しクイズ。クイズに正解することも重要だが、運が勝負のルールである。その運をより大きなものにするのは、自分の実力次第である。
 まずは1セット目。黒巣らが今度は「ラガワさん」コールを送る中クイズが始まる。

1問目「山梨県で食品会社を営む金井芳雄が「子供から老人まで喜ぶ商品」をモットーに開発し、自身のニックネームを付けたという/」
ラガー「だから...よっちゃんイカ」

ラガーが1問目を幸先よく正解。「ラガワ!」の声援が大きくなる。2問目を新井さんが正解し、3、4問目は吉屋が解答権を取って誤答と正解を1つずつ付ける。

5問目「クラーク・ゲーブルとクローデット・コルベールを全米のアイドルに押し上げたフランク・キャブラ監督/」
能勢「あの〜、あれ、だからっ、“夜”が付くやつ。第6回アカデミー賞を取った(ブー)」

長ーい能勢さんの独白で場内大爆笑。正解は「或る夜の出来事」で、確かに夜は付いていた。しかしこの作品は後で調べたところ、第7回のアカデミー賞を受賞した作品で、「ダ・カーポ」に自分の記憶法を掲載した面目丸つぶれである。だが今度は第54回芥川賞から「高井有一」を正解して名誉挽回、汚名返上。7問目は新井さんが正解、8問目は串戸、9問目は森がそれぞれ誤答。

10問目「1938年松本望によって創業/」
串戸「パイオニア」

これで串戸が1○1×。しかし凄い正解をしたからといって得点につながるとは限らない。さて10問が終わったので、抽選となる。新井さんの2○、吉屋・能勢さん・串戸の1○1×が注目点。まずは4等の抽選。

「ウフゥ〜ン。8番」

と、どこからともなく奇妙な声が流れた。どうやら抽選とは、事前に録音した声をランダムに発生させるようである。まぁ、そんな冷静な解説よりも、会場中に響く変な声に場内は笑いの渦となった。しかし笑うに笑えないのが串戸。これで−1点。3等に6番、2等に4番と、能勢さんが+2点、吉屋が+3点とラッキーを射止める。そして1等は5番。何とあのアカデミー賞問題を誤答した能勢さんが−4点。天国から地獄へ落とされた。2○であった新井さんは当選せず、ツキが足りなかった。

 2セット目。ここは串戸とラガーの2人が完全に明暗を分けたセットであった。串戸は2、4、7問目を誤答して何と3×。秋田さんに「アフターバーナーに火がついた!」と言わしめるほどの大乱丁であった。そんな串戸を後目に、ラガーはこのセット絶好調。3問目に「アメフラシ」を正解してにわかに調子付き、

5問目「民主党の鳩山由紀夫・邦夫兄弟の、祖父はもちろん鳩山一郎元/」
ラガー「鳩山威一郎」
6問目「1987年の国連総会でガユーム大統領が演説をして以来、国土の最高点が標高3.5mと/」
ラガー「モルジブ」

と二連答してこのセットを串戸とは正反対に3○で終える。
 抽選の結果、4、3等は共に串戸が不幸にも当選して−3点。このまま1等もあたれば違う意味で盛り上がりそうであった。2等は10問目で1○とした松石が幸運にも当選して+3点を得た。1等は3番で、ラガーが+4点を獲得して一気にトップに躍り出た。

 3セット目は好勝負が展開され、地味ながらも渋い正解で能勢さんが2○、新井さんが3○と、ベテラン2人が正解を稼いだ。
 さて、勝負を決める肝心の抽選。4等は新井さんが当選して、ようやく1点を入れる。3等は串戸で、借金を2つに戻す。2等は能勢さんで、こちらは借金を返済しきって+1点と黒字にする。そして1等は10番で、今度は10問目で1×とした松石が不運にも当選してしまい、黒字から一気に赤字へ。能勢さんを越える天国から地獄への転落である。

 4セット目。能勢さんが1、4問目を正解、3問目を誤答と、一人で出入りの激しいクイズを展開。そしてこのセット最大の見せ場を作ったのは串戸。7問目に「MO」、8問目に「メリル・ストリープ」を連取し、

9問目「戦後、日本社会党結党の中心人物になり芦田均内閣では副総理を務めた/」
串戸「西尾末広」

これで三連取として、このセットを3○で終える。しかし串戸のキャラクター性から、1つも当選しなかったという結果が一番おいしい展開だが。
 4等は能勢さん、3等は松石ときて、2等に串戸が当選。串戸は長い借金生活からようやく抜け出せた。そして1等は新井さんで、これで+5点としてラガーを抜いてトップとなった。このセットでの誤答は能勢さんの3問目だけだったこともあり、全員が得点を追加した。

 残るセットはあと一つ。1位は新井さんの5点、2位はラガーで4点、3位には吉屋が3点で、ここまでが一応の通過ラインである。以下は能勢さんが2点、串戸・松石が1点、森・菅原さんが0点。運が勝負のこのコーナー、1つのセットで最大10点が入るので、全員にチャンスは残されている。
 勝負を決める5セット目がスタート。1問目はラガー、2問目は新井さんが正解してより足場を固める。3問目は同じく足場を固めたい吉屋が解答権を取るが、これは誤答。ここに来ての誤答は精神的に大きい。この吉屋転落の危機に触発されたか、先程のセット同様に串戸が見せ場を再び作る。4、6問目を正解し、

9問目「「安全への逃避」などの写真/」
串戸「沢田教一」

これで4セット目と同じ3○とする。更にこれでも満足しなかった串戸は10問目も解答権を取るが、これは誤答。わずかな影を落とした。秋田さんは「これで+1か+2を取って、−4となってハイおしまいとなるのがおもしれぇな」と言いだし、黒巣はラガワコールからいつの間にか串戸コールに声援を変えていた。
 新井さん、ラガーの2人は転落することが無く、順位を上げられる運があるのは串戸と松石のみであることから、すでに2つの席は埋まったと言って良かった。残る一つの席を巡る抽選が行われた。まず4等は能勢さんが当選したが、これは誤答であったため1点と減って通過が絶望的となる。3等は松石で、これによって残る1つの席は吉屋、松石、串戸の3人に絞られた。2等は3番で、足固めに失敗した吉屋が−3点を受けて完全に脱落。最後の1等、「9番!」「10番!」と、2つの番号のコールが入り交じる中、引かれた番号は7番でしきり直し。

「見てェン、9番」

緊張感のない声が会場に響くのにワンテンポ遅れて、「おぉぉぉーーー」と観衆が沸き上がる。串戸が見事実力で運をつかみ取り、トップでこのラウンドを勝ち抜けた。

吉屋 3○3× +3    −3      0
能勢 6○3× +3+2+1−4−1   +1
串戸 8○5× +4+3+2−2−1−1 +5
渡辺 5○1× +4           +4
松石 3○1× +3+2+2−4     +3
森  3○1×
新井 8○0× +4+1         +5
菅原 0○0×
 ラガーはたった一度の当選が1等で勝ち抜けたが、安定した成績である。それ以上に安定していたのは2位の新井さん。いくら正解しても当選に恵まれなかったが、4セット目で1等に当選し、実力で運を呼び込んだ。1位で抜けた串戸は、成績・当選数からして出入りの激しさがわかるが、減点時は低い当選というのが目を引く。このことから、串戸が一番運を呼び込んだプレイヤーと言えるだろう。反対に運から見放されたのは能勢さんだろう。正誤の比率は串戸と特に変わらないのに、アカデミー賞問題を誤答したことによる−4点が最大の災難であった。松石は正解が全て得点に絡んだが、逆にたった一度の誤答が−4点であるから、能勢さん同様に運が悪かった。
勝者
1位:串戸尚志
2位:新井浩
3位:渡辺徹


一口メモ


準決勝:[1]対決通過クイズ(12名→6名)

通過クイズ 逆通過クイズ
挑戦者
予選 2位 鈴木舟太(2R:2組目3位、3R:3コーナー2位)
予選 4位 田中伸之(2R:4組目1位、3R:3コーナー1位)
予選 6位 秋田芳巳(2R:1組目1位、3R:3コーナー3位)
予選 7位 黒巣弘路(2R:2組目4位、3R:2コーナー2位)
予選13位 山本剛 (2R:3組目4位、3R:2コーナー3位)
予選17位 遠藤誠 (2R:2組目6位、3R:1コーナー1位)
予選21位 松村憲昌(2R:1組目敗退、3R:1コーナー2位)
予選27位 串戸尚志(2R:2組目2位、3R:4コーナー1位)
予選31位 渡辺徹 (2R:1組目4位、3R:4コーナー3位)
予選37位 春日誠治(2R:2組目5位、3R:2コーナー1位)
予選45位 鈴木雅也(2R:5組目1位、3R:1コーナー3位)
予選49位 新井浩 (2R:4組目2位、3R:4コーナー2位)
 明大イージオスが松村、串戸、春日、雅也と4人。法政リバティが私と黒巣、ラガーの3人。早稲田の遠藤が入って、学生組は8人いるもののわずか3つのサークルで独占している。社会人はノビさん、秋田さん、Ryuさん、新井さんで、それぞれ東工大、東大、早稲田、同志社のOBである。
 準決勝直前、勝ち残っている12名全員に1枚の紙が渡された。この紙に自分の名前から過去の経歴といった詳しいプロフィールを書くのであるが、この紙が実際に役立つのは決勝戦。(準決勝→決勝は休憩無しで行う)つまり8枚の紙はタダのゴミとなる。この自分の書いたプロフィールをゴミにしないためにも、何としても決勝、そしてあわよくば優勝もしたかった。
 準決勝を告げる音楽が流れ始める。予選1位の忍が3Rで敗退しているため、挑戦者の入場順は私が最初である。ノビさん、秋田さん以下数多くの強豪を後ろに入場するのは、きっと生涯思い出に残るだろうと、短い時間ながらもその光栄を噛み締めながら入る。
 準決勝PART1は対決通過クイズ。関西・名古屋では準決勝に一騎打ちがよく用いられるが、関東では多分初の試みだろう。もっとも、ここまで残った12人はあまりそんなことは意識せず、誰を対戦相手に指名しようかということばかりを考えていただろう。私はというと、実はほとんど何も考えていなかったのである。とりあえずは指名権を取ったら考えようと、何にも作戦は立てていなかった。

1問目「「アヴェ・クローネ祭」「五十年祭」「十月祭」「主顕祭」の4楽章からなる、イタリアの作曲家レスピ/」
Ryu「ローマの祭り」

レスピーギの辺りで、ほぼ全員の手が動くが、やはり早かったのはRyuさん。指名権を得てからちょっと考えた後、松村を指名。知識量が同等の相手で、早押し勝負なら勝てると踏んだのであろう。
 2問目を正解したのは秋田さん。「ノービ!ノービ!」とノビさんを指名しろというコールが湧くが、「そんなバカなことができるか、バーロー!」とうまく切り返して笑いを取る。私は秋田さんと早押しをやって勝つ自信はこれっぽっちもなかったので、別の人を指名しろぉ〜と賢明にテレパシーを送っていた。しばらくして新井さんを指名。ダダイストの時といい、秋田さんが一騎打ちで指名する人の傾向が読めない。何もこの人なら勝てるという感じで指名はしていなさそうだし。
 3問目、1問目同様にタッチの差で解答権を取られる。串戸が難なく正解して指名権を得る。この時、串戸の微妙な挙動から「あっ、俺を指名する」ということを察知し、指名される用意と心構えをする。マイクを向けられた串戸は「舟太さん」と一言だけ発し、壇上を降りる。壇の下でどちらからともなく握手をする。串戸の指名理由は、準決勝に進出した12人の中で、早押しのスピードが最も遅い私なら、接戦になったときに効果を発揮することを見越してのことであろうと読んでいた。そしてこの仮説は、勝負が終わった後に正しかったことを串戸の口から知らされるのであった。2年前、串戸がイージオスに入ったころ、私は3年生だというのにオープン大会で予選は抜けるがいまいち活躍できずに目立たない存在であった。逆に1年生ながらも串戸は高い実力を秘め、近い将来にオープン大会の常連となるのは容易に想像できた。その後はアタック25の予選も一緒に受け(二人とも落ちたが)、第6回全日本から帰るムーンライトながらの中で長いことクイズについても話す仲ともなった。オープン大会で名前が知られ始めた時期はほぼ同じでありながらも、実力はすでに逆転している。まともに勝負をすれば串戸の勝利は揺るがないが、このルールからチャンスをものにできれば私にも勝機は残っていた。
 4問目はラガーが正解して指名権を得る。黒巣以外の学生組を指名するかという考えを完全に裏切り、「誰にしようかな〜、うーん、まいっか、ノビ君!」と言い放ち、会場を沸き上がらせる。秋田さんも「おお、「勇気ある人々」だ!ピュリッツァー賞がもらえるぞ!」とラガーの選択を大英断のように讃えた。
 5問目は遠藤が正解し、早押しにクセのある黒巣や雅也では分が悪いとみたか、無難なところで春日を選択。

これにより、全6試合の対戦カードは次のように決定。

山本剛  VS 松村憲昌
秋田芳巳 VS 新井浩
串戸尚志 VS 鈴木舟太
渡辺徹  VS 田中伸之
遠藤誠  VS 春日誠治
黒巣弘路 VS 鈴木雅也
 どんな名勝負が見られるか、壇上にいる私も楽しみであった。ある程度の予想も立てられるが、特殊なルールであるだけに予想通りに行かない勝負もあることだろう。

1問目「大学在学中は100ヤード9秒6の記録を持つ/」
雅也「ジェフリー・アーチャー」

雅也が1問目からいきなりの速攻。遠藤が雅也を避けたのは、こういう理由であろう。2問目は春日が正解し、

3問目「その根にはアトロピンという物質が/」

「アトロピンと言えばアレだろう」という感じでボタンを押すが、ランプが点いたのは隣のラガー。「やっぱりこれはラガーが取るだろうなぁ〜。1点損した」とガックリ来ている私の横で、私が考えていたのと同じ「ベラドンナ」とラガーが解答。ところがこれが誤答で、正解は「マンドラゴラ」。早押しスピードが遅いのは何も欠点だけではないことにありがたさを感じた。ただラガーは−1点。ノビさん相手に苦しい勝負を強いられそうだと見ていたが、直後4、6問目をノビさんがまさかの連続誤答。何とノビさんが逆通過クイズに挑戦する羽目に陥った。さすがにこの出来事に会場中がざわめき始めた。過去の優勝者であり、関東を代表するプレイヤーが、もしかしたらこんな形で姿を消すかもしれないのだから。
 ノビさんに対しての逆通過クイズ。7問目は問題が読み切っても両者動かず。すぐ横で見ていて、ノビさんの表情が「ダメだ....」という風に語っているようだった。

8問目「パキスタンに建設されたアフガニスタン難民のための学校の学生ムラー・ダウドによって結成され、伝統的イスラム/」

解答権を取ったのはノビさん。誤答は即失格という怖さがあるが、さっきの表情は消え、自信ありの表情。

ノビ「タリバーン」

この正解で、逆通過から脱出。しかしまだ−1点に戻しただけでもある。その後は全体的にやや誤答先行で、串戸も誤答してくんないかな〜とちらっと見るが、今日はいつになく慎重そうである。どうも私と串戸の対戦はミスがほとんど無い勝負になりそうで、他がガンガン正解しても確実に拾っていく形を取ることになりそうだと、この段階で踏んでいた。

14問目「1992年4月12日、千葉県佐原市の自宅で/」
雅也「山村新治郎」

これで雅也が+2点とし、最初の通過クイズ挑戦者となる。迎え撃つのは黒巣。だが、15、16問目は両者動かず、結果雅也が0点となって元に戻る。

20問目「建築家の黒川紀章が提唱した、社会の変動/」
串戸「ホモ・モーバンス」

私のところの対戦で先制したのは串戸。この時は何が何だかわからないうちに正解されてしまったので、かなり焦った。

22問目「兄の孫に滝田栄がいるという明治・大正期/」
春日「鳳!」

春日お得意の相撲問題で2人目の通過クイズチャレンジ。対戦者は遠藤。23問目はスルーとして、先程と同じケースに陥るかという雰囲気。24問目は遠藤が解答権を取るが誤答。春日に絶好のチャンスが来るが「わからない」の意志表示をしてスルー。結果として2問スルーとなったので春日も通過に失敗。遠藤が命拾いをする形となった。

28問目「ベトナム戦争の反戦キャンペーンを盛り上げるきっかけにもなった/」
串戸「ソンミ事件」

串戸がこれで+2点。3人目の通過クイズ挑戦となって、とうとう私が阻止側にまわることとなった。ここまで私は正解どころか1度も解答権を取っていないので、何だか最初の敗者になりそうな予感もあった。

29問目「キリスト教徒が最も多くいる国はアメリカ合衆国。仏教徒が最も多い国は中国ですが、イスラム教徒が最も多くいる国はどこ?」

問題の途中「あ、これ作った。けど答え忘れた。」と、一瞬喜んでガクーンと落胆していた。ただ、問題文を読み切ったので、串戸はあと1問チャンスがあるから押さなそうだから、誤答しても影響無さそうだと判断して解答権を取った。半笑いの状態で「イラン」と答え、当然といえば当然だが誤答。「まっ、いいや。次を何とかしないと」と気持ちを切り替えようとしたとたん、串戸が解答権を取っていた。「うそぉ、今のがヒントになったのか?」と内心穏やかではなくなった。串戸が「インド」と答える。「あっ、そうか。インドではヒンズー教徒の次にイスラム教徒が多い国だから、あれだけの人口がいれば確かに1位っぽいな。」と思いつつ、壇を降りる用意をする。が、これも誤答で、黒巣や遠藤同様に命拾いする。もしかしたら串戸は、相手が誤答すると無条件で答えられると思っていたのでは無かろうか?まぁそれはいいとして、私にはまたチャンスが与えられたのである。ちなみに正解は「インドネシア」。

33問目「本名エマヌエル・ベラニンスキー/」
遠藤「マン・レイ」

これで今度は遠藤が+2点として、先程の春日とは逆の立場となる。34問目は「ホルモン」のキーワードが出たところで春日が解答権を取り「スターリング」を正解し阻止。

35問目「南に面したタイパとコロワンという2つの/」

これは「コロアネ(コロワン)」と対にして「タイパ」を答えさせる問題を作っていたので、完全に単独押しをすることができた。

舟太「マカオ!」

35問目にしてようやく初日を出す。この正解はうれしかった。これだけのメンバーが全く手を出さないうちに解答権を取って正解するというのは一種の快感である。35問目に初正解というのは遅いと感じる人もいるだろうが、それでもラガー、松村、新井さん、そして秋田さんもまだ正解をしていないのである。しかも秋田VS新井のカードは一度も解答権を取っていないのである。一斉対決では、ヒートアップする対戦とゆっくりした対戦があることも知っていて損はないだろう。そんな私を見てか、続く36問目は新井さんが正解して、ようやくこちらの対戦も動き出す。
 そして39問目に思わぬハプニング。この問題はスルーとなり、誤答のボタンが押されて金谷が答えを言ったのだが、何と次の問題の答えを間違えて言ってしまったのである。こういう勝負での1問は大きいからまずいんじゃ無かろうか?と私は思っていたら、すかさず飯田が「それじゃぁ、次の次の問題行ってください。」とうまいフォローで会場を和ませる。知り合いとはいえ、飯田の司会はうまいなぁと感心させられた。
 その後しばらくは多少の上下変動があり、45問目。問題文がすべて読み切られ、スルーになりそうなところでノビさんが解答権を取る。この段階での押しだから、迷った末に勝負に出たのだろうが、残念ながら誤答。1度逆通過回避をしてからも0と−1点の間ばかりを行き来していたノビさんが、2度目の逆通過クイズ挑戦。46問目はスルーと、1回目の時同様の展開。そして1回目と同様の展開で、47問目に「ニューロマンサー」から「ウィリアム・ギブソン」を正解し、2度目の生還を果たす。しかし、ラガーにしても「ニューロマンサー」が出ていたのだから、勝負に出ても良かったのではないかと聞きたかったが、チャンスを逸した直後ということもあり、どうもそんなことを聞ける雰囲気ではなかった。もっとも黒巣は「ニューロマンサーで押せるじゃん!」とはっきりラガーに対して言い切っていたが。
 直後の48問目、串戸が「アレニウス」を正解して、通過クイズ挑戦回数は違うが、ルール上何回行こうと関係ないので、+1点同士タイとなる。
 49問目、「アラスカ州の州都」という確定ポイントでノビさんが取り、誰もが0点に戻したと、ノビさんが答えるのを待つが、何とノビさんが答えを思い出せずに誤答。生還したばかりで3度目の逆通過クイズ挑戦となった。(正解は「ジュノー」)

50問目「男役の生、女役の旦、豪快な人物や敵役の/」
ノビ「京劇」

今度は1問で正解してあっけなく復活。これで50問を消費しても、誰一人として通過者がいない状況となった。

51問目「1971年にイスラム教に改宗して改名した本名ルイス・フェルナンド・アルシダ/」
黒巣「カリーム・アブドゥル・ジャバー」

これで黒巣が+2点として、通過クイズに挑戦。先程、とは言っても30問以上前だが、雅也は逆の立場となって阻止しなければならない。

52問目「1924年にシュニット神父の尽力でその活動が復活した、現在はアウガルデン宮殿を本拠とする、シューベルトやハイドンらの音楽家を輩出したことで知られる、1498年7月7日にハプスブルク家の皇帝マキシミリアン1世/」

解答権を取ったのは黒巣。わずかに考えた後

黒巣「ウィーン少年合唱団」

と答え、対決通過クイズ初の通過者となった。逆に最初の敗者となった雅也は、黒巣との名勝負を終えて席に戻っていった。これで壇上に残ったのは10人。

53問目「1958年「モデラート・カンタービレ」/」

2人減って残り10人ではあったが、この対決通過クイズで初めてまともに押し勝った。すぐ隣で落胆する串戸の姿を見ながら「マルグリット・デュラス!」と正解し、遂に+2点。これで今度は自分が通過クイズに挑戦できることになった。

54問目「もともとはスペイン語で「聖フランシスコの神聖な信仰の宿る国王の町」という意味の名が付けられたが、長すぎるため、「神聖な信仰」という部分だけで呼ばれるようになった、アメリカ・ニューメキシコ州の/州都」

ニューメキシコという言葉が出たときに、一瞬押そうかどうか迷った。その一瞬を突くように、串戸がきれいな読ませ押しをし、「サンタ・フェ」を正解して阻止。千載一遇のチャンスを逃し、今度は私がガックリ。この時点で私が0点に戻って、串戸は+1点だから、再び串戸有利の状況となった。串戸にとってみれば、早押し合戦になった場合は勝てると踏んで私を指名したことがここで初めて生きたから、かなり悦に入っていただろう。

55問目「授賞式に際してインディアナ州立大学教授の/」
遠藤「イザヤ・ベンダサン」

しばらくの間−1点で苦しい状況だった遠藤が凄い押しで0点に戻し、これで勢いづいたか、58、60問目を正解して二度目の通過クイズ挑戦。61問目はスルーとし、62問目「昭和25年の巨人・藤本英雄による日本プロ野球初の完全試合の3ヶ月前に....」という出だし。私は複雑な気分でそれを聞いていた。これは昨日読んだ本に書いてあったことで、私はもうこの時点で押して答えることができたのである。ただ、他の全員も同じ条件であることに変わりがないのだから、串戸もそんなケースが多分一度や二度あっただろう。しかし、確実に1点取れる問題が目の前を通り過ぎていくのは、本当に複雑な心境である。結局、1つ後のポイントで春日が「田宮謙次郎」を正解して遠藤を阻止。

64問目「18世紀フランスの外交官エオン・ド・ボーモン/」
串戸「エオニズム」

これで串戸が+2点として2度目の通過クイズ挑戦。流れからいって、さすがに今度阻止するのは難しそうな気がした。せめてさっきの「田宮謙次郎」がここに来ていれば....と感情的にもまずくなってきた。65問目はスルーとなり、

66問目「アメリカのアルメニア人の生活をユーモアと感傷を織り交ぜて描いた作家で、短編集「我が名はアラム」、戯曲/」

串戸の手が動いた。逆に私は全く動かなかった。いや、動けなかった。ランプの点いた早押し機を見やり、そのすぐ上を見ると、期待と不安が入り交じった串戸の顔があった。

串戸「ウィリアム・サロイヤン!」

会場中がほんのわずかな間沈黙した後、正解を知らせる音が鳴り、その途端会場中が堰を切ったように拍手喝采を一人の男に浴びせていた。
 「終わったのか....」それが最初に思ったことである。串戸との勝負の間、数多くの局面があり、一時は勝つチャンスもあったので悔しさもあった。だが最後は実力で勝敗が決まったこともあり、素直に串戸に優勝して欲しくなった。壇上から降りた後少し待って、串戸と握手を交わし、「頑張って決勝行って、優勝してくれよ。」とハッパをかける。串戸がプレッシャーに押しつぶされないかとも思ったが、率直に言った方がいいだろうとそのままを伝えた。これでもう私が勝負を演じることはなくなったが、これだけの勝負を演じられたことには満足であった。
 壇上に残ったのは8人。

67問目「古代ローマ人の区分によると正午から午後3時が第六区分/」
ノビ「シェスタ」
68問目「「人間と蛆」「甲板上の/」
ノビ「戦艦ポチョムキン」

串戸が勝ち抜けた余韻が冷めぬうちに、ノビさんが速攻の二連取。初めて+の点になったかと思った途端の通過席に、ラガーが「うわっ、はえぇ」と驚愕と落胆が入り交じった声を漏らす。これでノビさんが3度の逆通過クイズをはね返し、とうとう通過クイズ挑戦にたどり着いた。そして私が席に戻ったとき、ノビさんとラガーの対決が始まった。

69問目「本名シャローム・ラビノビッチ。ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」の原作「牛乳屋テビエ」などを書いた、イディッシュ語/」

ほぼ答えが確定したところでノビさんが解答権を取る。

ノビ「アライヘム」

勢いよく答え、ノビさんがこれで三連答とし、3人目の通過者となる。残るは6人。直後の70問目を新井さんが正解。これで初の通過クイズ挑戦。串戸、ノビさんがポンポーンと抜けていることから、勢いに乗れるかどうかが鍵である。71問目、秋田さんがこの準決勝初の正解をして阻止。やはりここぞという時に勝負強い。
 72問目、問題を読み切ったところでRyuさんが攻めるが誤答。これで−2点となって逆通過。ここまで唯一通過・逆通過によるチャンスの局面が来なかった松村からすれば是が非でも取りたいところであろう。

73問目「司馬遼太郎の小説「菜の花の沖」にその生涯が描かれている、1812年、ゴローニンが松前藩に/」
Ryu「高田屋嘉兵衛」

Ryuさんが危機を回避。ここぞというときに得意の日本史問題が来るところもベテランの持ち味である。
 74問目、遠藤が誤答して−1点と一度下がるが、77、78問目を二連取。そして80問目を正解して三度目の通過クイズ挑戦。

81問目「パリの植物園「シャルダン・デ・プラント」にその銅像が建っている、「動物哲学」などの著書を残して用不用説を/」

解答権を取ったのは遠藤。チャンスを逃さないよう、慎重に考えてから、つぶやくように答える。

遠藤「ラマルク」

これで4人目の通過者が決定。前半勢いがよかった春日の攻め手が、中盤から緩くなったことも勝利の一因であろう。

82問目「ナチス・ドイツのユダヤ人抹殺計画の責任者だった人で、1960年、アルゼンチンにいる/」
新井「アイヒマン!」

ノビさんが抜けた時同様、新井さんがここでも遠藤が抜けた直後の問題を正解して2度目の通過クイズへ。だがそう簡単に勝たせるわけもなく、83問目で秋田さんが阻止。だが阻止直後の84問目を秋田さんが誤答して−2点としてしまい、今度は逆通過クイズへ挑戦することとなって秋田さんのピンチが続く。

85問目「教職に就いた後、テレビドラマ「特別機動捜査隊」の脚本を担当するなど創作活動に入り、「マラッカの海に消えた」/」

解答権を取ったのは新井さん。場内から「おっ」という声が漏れる中

新井「山村美紗!!」

自信満々に正解し、秋田さんを失格にしてこの対決クイズを制した。秋田さんは通過阻止分2回の正解が点になっていないから、全体の時にこの正解ができていればという点で惜しかった。
 とうとう残る対戦は1つ。残り1つとなると一気に決着がつきそうだが、人数が少ないので当然今度はスルーの数が多い。また、松村はこの間全くの沈黙で、Ryuさんが一人で上下したが、92、93問目を二連取し、さらに95問目を正解して遂に通過クイズに挑戦することとなった。

96問目「そのトレードマークの1つ星には必ず20世紀初頭のバスケットボールのスタープレーヤーであるチャック・テーラーのサインが入っている、ラバーソウルシューズの傑作「オールスター」で知られるアメリカのスニーカーブランドは何?」

問題を読み切っても両者動かず、5秒が経とうとし、このままスルーになると誰もが思った瞬間、Ryuさんがあの独特な押しを見せ、解答権を取った。

Ryu「コンバース!!」

これで準決勝・対決通過クイズの全カードが終了。100問近くに及ぶ白熱した勝負が終わった。

通過・逆通過クイズの攻防 ()内は対戦相手

逆1:田中伸之(渡辺徹)  7問目:スルー  8問目:田中正解「タリバーン」
通1:鈴木雅也(黒巣弘路)15問目:スルー 16問目:スルー
通1:春日誠治(遠藤誠) 23問目:スルー 24問目:スルー
通1:串戸尚志(鈴木舟太)29問目:串戸誤答「インドネシア」
通1:遠藤誠(春日誠治) 34問目:春日阻止「スターリング」
逆2:田中伸之(渡辺徹) 46問目:スルー 47問目:田中正解「ウィリアム・ギブソン」
逆3:田中伸之(渡辺徹) 50問目:田中正解「京劇」
通1:黒巣弘路(鈴木雅也)52問目:黒巣勝抜「ウィーン少年合唱団」
通1:鈴木舟太(串戸尚志)54問目:串戸阻止「サンタ・フェ」
通2:遠藤誠(春日誠治) 61問目:スルー 62問目:春日阻止「田宮謙次郎」
通2:串戸尚志(鈴木舟太)65問目:スルー 66問目:串戸勝抜「ウィリアム・サロイヤン」
通1:田中伸之(渡辺徹) 69問目:田中勝抜「アライヘム」
通1:新井浩(秋田芳巳) 71問目:秋田阻止「クークラックスクラン」
逆1:山本剛(松村憲昌) 73問目:山本正解「高田屋嘉兵衛」
通3:遠藤誠(春日誠治) 81問目:遠藤勝抜「ラマルク」
通2:新井浩(秋田芳巳) 83問目:秋田阻止「スコット」
逆1:秋田芳巳(新井浩) 85問目:新井勝抜「山村美紗」
通1:山本剛(松村憲昌) 96問目:山本勝抜「コンバース」
 結果だけ見ると、私は60数問やって2問しか正解していない。しかしこの名勝負を忘れることはないだろう。


一口メモ


準決勝:[2]上座争奪クイズ(6名→4名)

挑戦者
予選 4位 田中伸之(2R:4組目1位、3R:3コーナー1位、準決勝[1]3位)
予選 7位 黒巣弘路(2R:2組目4位、3R:2コーナー2位、準決勝[1]1位)
予選13位 山本剛 (2R:3組目4位、3R:2コーナー3位、準決勝[1]6位)
予選17位 遠藤誠 (2R:2組目6位、3R:1コーナー1位、準決勝[1]4位)
予選27位 串戸尚志(2R:2組目2位、3R:4コーナー1位、準決勝[1]2位)
予選49位 新井浩 (2R:4組目2位、3R:4コーナー2位、準決勝[1]5位)
 パート1での勝ち抜け順によって、
  1.黒巣 2.串戸 3.田中 4.遠藤 5.新井 6.山本
という順番で上座から下座へついた。6人中4人が決勝へ進めるが、このメンバーを相手に勝ち抜くのは容易ではないだろう。
 「K・U・R・O・S・U クロス〜」
という不気味な声援が飛ぶ中、準決勝パート2はスタートした。
 1、2問目、私を倒して勝ち残った串戸が、いきなり連続で誤答。最下位へ落ち、更に1×を付ける。次に新井さんが誤答、正解を繰り返し、×こそ付けないもののなかなか上位に上がれない。

6問目「本名プレーク・キッタサンカ。8期15年の長きにわたり政権を担当、国名のシャムからタイへの変更や国歌の制定など/」
ノビ「ビブーン」
7問目「1742年に初めてこの地に立った人物を記念して命名された、ロシアのタイミル自治区に属し、東経104度18分、北緯77度43分/」
黒巣「チェリュスキン岬」
10問目「1914年7月31日にパリで狂信的な国粋主義者によって暗殺されたフランスの政治家で/」
ノビ「ジャン・ジョレス」

ノビさんが先頭に立ったかと思えば再び黒巣が先頭を奪い返す。8、9問目はスルーで10問目、ノビさんが再度先頭を奪い、決勝進出1番乗りはどちらかという雰囲気が強まってきた。

13問目「本名・林たかし/」
遠藤「木々高太郎」
15問目「本名コンスタンチン・セルゲイビッチ・アレクセーエフ/」
遠藤「スタニスラフスキー」

ノビさんと黒巣の先頭争いに割って入るように、遠藤が本名問題を2つ取り、一気に2人を抜き去ってトップに躍り出る。16、17問目はスルーとなって、

18問目「1954年ローマで行われた体操の世界選手権の女子平均台でチェコスロバキアのボサコワらを抑え、金メダルを獲得した選手で、体操の世界選手権において日本/」

解答権を取ったのは先頭に立つ遠藤。しばらく考えたのちに一つの答えを導き出し

遠藤「田中敬子」

と解答。その直後に正解の音が鳴らされ、決勝進出一番乗りとなった。

<遠藤勝ち抜け直後の席次>
1.空席 2.ノビ 3.黒巣 4.串戸 5.Ryu 6.新井
 遠藤が勝ち抜けた直後、串戸が「バナール」「ステロ」「クビチェック」と19〜21問目を三連取。4位の席から一気に黒巣、ノビさんを抜き去ってトップの席に立つ。その後は新井さんとRyuさんの2人が順に正解するも、順位的な関係で順位を上げられず。上座早押しでの単発正解はえてしてこういう状況に陥りやすい。

25問目「イギリスの人類学者リーキーがオルドワイ遺跡から発見し/」

解答権を取ったのは串戸。いつもと変わらぬ感じで「ホモ・ハビリス」と解答するが、これが誤答。場内からため息が漏れ、黒巣が「よかった〜」と胸をなで下ろす。

問題文続き「名付けた、アウストラロピテクスに属する化石人類といえば何?」
答「ジンジャントロプス」

結果論ではあるが、串戸はちと勝負を焦ったようであった。もっとも、こうした強気の押しができたからこそここまで勝ち残れた訳でもあるが。

27問目「弘前大学助教授の城田安幸さんがクイズの問題監修を、声優の三石琴乃が司会の「うらら」という女の子の声をそれぞれ担当し、動物や昆虫の生態をテーマに毎回4問の/」
ノビ「むしむしQ」

ノビさんがかなり自信ありげに解答したが、これも誤答。この「むしむしQ」という意味不明な解答に場内大爆笑。「そりゃ、何なんだ!」「カッコいいー」「バーカ」というヤジの嵐。しかし、のちにスタッフに聞くと、「ノビさんの解答は惜しかったんだよ〜」という返答。

問題文続き「クイズが出題される、NHK教育テレビで放送されている人気テレビ番組は何?」
答「なんでもQ」

という問題文の続きなど誰も聞かないまま笑いとヤジが続いたが、これで新井さんが3位、黒巣が2位に浮上し、ノビさんが上にいない間に勝ち抜けを決めたい状況となった。28、29問目はスルー、30問目は串戸が誤答。
 31問目にして黒巣が2回目の解答権を取り、「LLBean」を正解してトップに立つ。しかしいつもは強気のクイズをする黒巣が、このラウンドはやけに慎重である。実際、正誤に関わらず30問目までで1度しか解答権を取っていないケースというのはかなり珍しい。誤答による転落を防ぐための処置であることは容易に取れ、黒巣が確実に決勝進出を狙っていることがよくわかった。その後はノビさんが連続で正解し、新井さんも2位へ浮上してきたことから、どこまで先頭に居続けられるかが問題となってきた。

38問目「本名はエドワードという、ジャズバンドリーダーでピアニストでもあるアメリカの作曲家で、近代的学理を導入し代表曲「ソリテュード」「ムードーインディゴ」など多くのジャズ名曲を残した、「公爵」という/」

守りに徹していた黒巣が、確定的となるポイントで解答権を取る。

黒巣「デューク・エリントン!」

「どうだ!」と言わんばかりの解答で、黒巣が2人目の決勝進出者となった。正解数はわずかに3問であるが、勝負どころをギリギリまで待った黒巣の作戦勝ちとも言える。しかし守りのクイズをしている黒巣って、あんまり黒巣っぽくないなぁ。

<黒巣勝ち抜け直後の席次>
1.空席 2.新井 3.ノビ 4.空席 5.Ryu 6.串戸
40問目にノビさん、41問目に串戸が誤答して共に転落。ノビさんは上位に上がっても途中で誤答してしまい、串戸は5位に上がってはすぐ誤答と、泥沼にはまりつつあった。Ryuさんは難度の高さに身動きがとれないようで、3人目の勝ち抜けは新井さんが有力となってきた。46問目、新井さんが「マクワウリ」を正解し、ようやく先頭に立ち勝ち抜けるチャンスがまわってきた。しかも2、3位の席は空席であることから、かなり問題を待つことができる。

49問目「陸上競技の中距離種目の名選手で、サイド・アウィータといえばモロッコの選手、ではヌールディン・モルセリといえば/」

解答権を取ったのは新井さん。思案したのち、「ナイジェリア」と迷うように解答。だがこれが無情にも誤答。再び最下位へ転落。正解は「アルジェリア」で、迷った理由が伺い知ることができ、同時に会場中から「惜しい」という声がそこかしこで聞こえる。50問目も新井さんが誤答し、これで1×を付けてしまう。

<50問目終了時の席次>
1.空席 2.空席 3.Ryu 4.ノビ 5.串戸 6.新井
 他のプレイヤーの誤答によってRyuさんが3位に浮上。しかし問題に解答することすらままならない状況であることから、問題運を呼び込む必要がある。ノビさん、串戸はコンスタントに正解してはいるが、誤答で一気に転落することが多い。新井さんは着実に順位を上げてはいたが、先程の誤答でそれが脆くも崩れてしまった。いずれも苦戦の展開を強いられているが、この中で2人は勝ち抜け、2人は失格するのである。
 そんな状況下、黒巣同様に誤答を避けるためかノビさんが確実に正解を重ねる作戦に出た。51問目に「逗子」を正解し、3問連続スルーののちに55問目「都留重人」を正解し、2位に浮上。早押しの押すポイントも今までとはうって変わって確実性を重視したものになっていた。

61問目「ボルネオ島北部のマレーシア・サラワク州の中に2つの飛び地になった国土を持つ、首都を/バ」
ノビ「ブルネイ・ダルサラーム」

ノビさんがうまいタイミングで正解し、遂に1位の席に立ち、決勝進出のチャンスをつかむ。その後しばらくは串戸とRyuさんがアップダウンを繰り返し....

70問目「従兄弟のレーモンは、1913年から/」

今まで確実に来ていたノビさんが速攻の押し。

ノビ「ポアンカレ」

最後は目の覚めるような正解で3人目の決勝進出者となる。しかし、2、3位の席が空席だったにも関わらずこの勝負度胸は並のものではない。と言うよりも、見方を変えれば、ノビさんにとっては確実なポイントだったのだろう。

<ノビさん勝ち抜け直後の席次>
1.空席 2.空席 3.空席 4.新井 5.Ryu 6.串戸
 司会の飯田が「最悪の事態」とか言い出し始めた。確かに1〜3位が空席ということは、他人のミスで順位が上がる可能性が低いので、勝ち抜けの確率が減ることにもつながる。だが先程からスタッフ側があわただしく動いている様子から、別の意味の方が大きなウェイトを占めていることが容易にわかった。やはりと言うべきか、問題が足りなくなってきているようである。まぁ、パート1の時点で100問近くを消費し、さらにここでもすでに70問を消化しているのだから、すでに準決勝用の問題が底を尽きたのは明らかであった。
 ノビさんが抜けた直後しばらくは串戸の一人相撲が続く。その串戸を後目に、新井さんが75問目に「テスラ」、78問目に「三浦雄一郎」を正解して2位に浮上。

79問目「イタリア統一戦争の際、ソルフェリーノで負傷した兵士の救護/」
Ryu「アンリ・デュナン」
80問目「万葉集の中に有名な「浜松が枝」の歌を残している人物/」
Ryu「有馬皇子」

それまで最下位だったRyuさんがこの二連取で4位に浮上。さらに串戸とRyuさんが共に正解を重ね、準決勝の終わりが近づいてきたようであった。

<86問目終了時の席次>
1.空席 2.新井 3.Ryu 4.串戸 5.空席 6.空席
87問目「第2次大戦中にはド・ゴール派の自由フランスの活動拠点となっていたアフリカの都市で、その名前はフランス人探検家ザボルニャン・ド・ブラザにちなんでつけ/」
新井「ブラザビル」

この正解で新井さんが2度目の先頭に立つ。その直後の88問目をRyuさんが正解し、すぐ後ろにつける。89問目、得意の日本史問題でRyuさんが解答権を取るが意外にもこれを誤答してしまい、先頭を目の前にしながら最下位へ転落。さらに90問目を串戸が誤答し、新井さんが圧倒的優位に立ったが、思わぬ落とし穴が待っていた。

飯田「申し訳ありません。不測の事態です。これが最後の問題となってしまいました。」

こうなると勝ち抜けのチャンスは新井さんにしか残っていない。その最後となる92問目はRyuさんが正解し、最後の勝者が出ないまま上座早押しを終了することとなった。

<上座早押し終了時の席次>
1.新井 2.空席 3.Ryu 4.空席 5.空席 6.串戸
 問題数不足というのは大会にとってあってはならない事態である。そういうことが無いように、長引く可能性が強い形式には問題数限定が設定されるものだが、この準決勝にはその設定が明記されていなかった。スタッフ側の落ち度ではあるが、実際これだけ長引くとは誰も予想だにしなかったのだろう。色々な批判も聞きはしたが、これだけの接戦を体験でき、また見ることができた自分にとっては複雑な心境である。
 さて、肝心なのはその後のフォローである。このまま3人を決勝に行かせるわけにもいかないし、全員を失格にして3人で決勝というのも無理があるだろう。そうなると1人の勝者を明確に決しなければならないが、その選出方法が問題である。これまで行った上座早押しでの雰囲気から、1位の席にいる新井さんをその勝者にするのが有力そうであった。だが、判断基準は最後に着いていた席だけではなく、正解数、誤答の少なさ、予選成績、準決勝パート1での勝ち抜け順など、さまざまに存在する。残念ながらその判断基準はルールに明記されていない。果たしてどういう判断が下るのか。


一口メモ


準決勝:[特]3○2×(3名→1名)

 上座争奪クイズでの成績をリセットし、完全に別のルールで3人の勝負の決着をつけることとした。残っていた問題は決勝とタイムレース(前半)の問題。決勝は40問限定であることから使用できないし、タイムレース(前半)の問題は問題文が短く準決勝向きではない。しかしタイムレース(前半)の問題十数問があれば、一人抜けの3○2×は十分に行える。実際にこの判断を下すのは相当に勇気がいったことだろう。
 さて、3人のうちタイムレース(前半)問題で3○2×となると、当然のことながらRyuさんが最有力であろう。何と言っても実際にその時のタイムレースをダントツトップで抜けているのである。もっとも、串戸も新井さんもそう簡単に勝ちを譲るわけはないだろうが。

1問目「フランスの作家サルトルの小説「嘔吐」で、突然襲う/」
串戸「アントワーヌ・ロカンタン」

先制点は串戸。タイムレース用だけあって押すポイントが各段に早い。この速攻展開を制するのは誰になるのか。2問目はRyuさんが誤答して0○1×となり苦しい状況に陥る。3問目に新井さんが1○とするが、串戸が4問目を押さえて2○としリーチ。

6問目「隅っこでいつも頑張っているという意味から、ボーリングの7番ピンの愛称を「しゅうとめ」という意味/」

解答権を取ったのは串戸。しばし考えたのち、

串戸「マザー・イン・ロー」

これで3○として、最後の決勝進出者となる。長い勝負を戦った者同士、固い握手を交わしていた。やや準決勝の終わり方としてはお粗末という感じも否めないが、上座早押しがあのまま続いたとしても、3人のうち誰が勝ってもおかしくなかっただろう。
 しかし準決勝自体、かなり早いポイントで正解しても問題文の続きを読まれることが少なかったので、時間がおしていても多少のフォローも欲しかった点もある。それ以外にも多くの問題点は残ったが、勝ち残った4名の強さは、決勝を戦うに値するだろう。200問近くに及ぶ激戦を勝ち残ったのは次の4人である。

勝者
1位:遠藤誠
2位:黒巣弘路
3位:田中伸之
4位:串戸尚志


一口メモ


決勝:7○2休(4名→1名)

挑戦者
予選 4位 田中伸之(東京工業大学OB)
 (2R:4組目1位、3R:3コーナー1位、準決勝[1]3位、準決勝[2]3位)
 第9回史上最強のクイズ王本戦出場
 1994年:東大オープン優勝
 1995年:一橋オープン、K−1グランプリ、マンオブザイヤー優勝
 1996年:Ryu杯、明治オープン、きんくり杯優勝
 1997年:ダダイストカップ優勝

予選 7位 黒巣弘路(法政大学3年)
 (2R:2組目4位、3R:2コーナー2位、準決勝[1]1位、準決勝[2]2位)
 第5回Ryu杯準優勝、第1回クイズワールドカップ4位

予選17位 遠藤誠 (早稲田大学1年)
 (2R:2組目6位、3R:1コーナー1位、準決勝[1]4位、準決勝[2]1位)
 第14回マンオブザイヤー5位、第6回全日本クイズ選手権準決勝進出

予選27位 串戸尚志(明治大学2年)
 (2R:2組目2位、3R:4コーナー1位、準決勝[1]2位、準決勝[2]4位)
 ダダイストカップ準々決勝進出
 関東最強のプレイヤー・田中伸之さんを相手に、若い3人が挑むという形となった決勝戦。ノビさん優位は堅いが、若い3人がどれだけ食い込むかが見どころであろう。それにしても、ノビさんのところだけ過去の戦歴が異様に多い。ちなみに、ノビさん以外の3人は共に2Rを2組目で戦っている。
 1問目、黒巣が解答権を取るが誤答。準決勝の確実さはどこへやら。続く2問目は串戸が誤答。

3問目「1986年の第8回大会の途中にヘリコプターの墜落事故で死亡した/」
ノビ「サビーヌ」
4問目「10歳の時には「コーラン」を全て暗唱し、16歳にして天文学、神学などあらゆる学問を極めたという中世イスラム世界を代表する医学者で、友人アル・ジュージャーニーによりまとめられた2大著作「医学典範」「治癒の書」/」
ノビ「イブン・シーナ」

ノビさんが二連取し、まずは2点。他の3人も追いつきたいところだが、余りの難問に誤答やスルーが続く。

10問目「代表作に「エリアス・ポルトルー」などの作品があるイタリアの作家で、1926年にセルマ・ラーゲルレーブに続き、女性/」
ノビ「デレッダ」

これでノビさんが3点目。他の3人が無得点であることから独走である。残り30問もこの調子で進んでしまうのか。

11問目「本名阿部正雄。パリに/」
串戸「久生十蘭」

これで串戸が初得点。ようやく反撃ののろしを上げる。12問目をノビさんが誤答し、13、14問目はスルー。

15問目「賃金を物価が低落すれば人々の保有する貨幣的資産の実質価値が高まり、それが消費を増大させるという、別名“実質残高効果”/」
串戸「ピグー効果」

串戸が2点目を挙げ、ノビさんに1点差と迫る。その後も串戸、ノビさんの2人だけが解答権を取るが、共に誤答続きで点は動かず。黒巣と遠藤の2人は全く動けず、優勝争いからは脱落しつつあった。

25問目「陸軍士官学校と陸軍大学校を共に首席で卒業。1939年に大本営陸軍参謀兼海軍参謀となり、43年のガダルカナル島撤収作戦では主任参謀、さらに45年にはソ連軍との停戦交渉に赴き、56年までソ連に抑留されたものの、帰国後は伊藤忠商事にスカウトされ、同社の繊維商社から総合商社への脱皮に貢献し、78年には同社の会長となった人物は/」
ノビ「瀬島龍三」

ノビさんがほぼ問題全文を読み切る直前で解答権を取り正解し、再び串戸に2点差をつける4点目を入れる。続く26問目もノビさんが取り、他の解答者から「あっちゃ〜」という悲鳴にも似た声があがる中、かなり自信ありげに解答するが誤答。さすがにこの段階での5点目は致命傷であるから、他の3人が命拾いする形となった。27〜30問目はスルーとなり、いよいよ残り10問となった。

31問目「1903年にドイツ東洋協会のシュマッヘルによって初めて発掘が行われたイスラエルのハイファの南南東32kmのところにあった遺跡で、8.4ヘクタールの広さに及ぶ丘が存在し、その丘は「ハルマゲドン」という言葉の由来となっている/」
串戸「メギド」

串戸がこれで3点目。ノビさんとの差を再び1点とする。続く32問目も串戸が取るが、先程のノビさん同様に誤答。答えが半分出かかっていた誤答だけに悔やまれる。続く33問目に遠藤が決勝に来て初めて解答権を取るが誤答。

34問目「明治41年、曽禰達蔵らと共に建築事務所を設立し、東京海上ビル、日本郵船ビルなどを設計した建築家で、作家の宮本/(百合子の父親)」
ノビ「中条精一郎」

再び串戸を引き離す5点目。会場中から大きな歓声と拍手があがり、まさに優勝を決めた一撃と表現するに十分だった。遠藤、黒巣の2人の勝利はほぼ消え去り、残った串戸にしてもこの時点での2点差は厳しい。串戸は、五大対抗戦における大将戦で、沼田にあと一歩と迫りながら負けたときと同様の状況下に陥っていた。
 続く35問目、問題を全文読んでスルーになる直前に串戸が解答権を取る。だが串戸はあまり自信を持っていたように見えず、これをあっけなく誤答。これで2問休みとなるから、勝敗は決したようであった。

37問目「1923年4月6日、エジプトのカイロで肺炎のために亡くなったイギリス人で、その5ヶ月前に考古学者ハワード・カーターのパトロン/」
遠藤「カーナボン卿」
39問目「1959年3月30日、米軍立川基地に労働組合員が侵入したいわゆる砂川事件に際し、駐留米軍は違憲であるとして被告人に無罪を言い渡した、当時の/」
黒巣「伊達秋雄」

勝負は九分九厘決したものの、最後までクイズに挑み続け、遠藤、黒巣が共に大きな1点をものにする。

40問目「同一中心金属イオンに対して、1つの配位子が配位結合によって2つ以上の配位座を占めて環状構造を持つ化合物を、その結合の様子がエビやカニなどの甲殻類のハサミ/」
ノビ「キレート化合物」

 自らの勝利を祝福するかのように最後の問題を正解し、田中伸之さんが第4回に続いて一橋オープン2度目の優勝者となった。関東の大学主催オープン大会でのV2は初であり、オープン系に限定してもRyu杯における秋田さんのV2くらいで、いかにノビさんの力がずば抜けているかがわかる。
 準優勝となったのは串戸。思い出せない問題が多かったり、6回の誤答によって12問休まなければならなかったことなど、まだまだ荒い面が露呈したようである。しかし2年生にしてこれだけの力を持っているプレイヤーはそうはいない。今後の活躍が期待される。また個人的に一騎打ちを戦って勝った相手が活躍してくれるのはうれしいものである。
 3位は遠藤と黒巣。共に関東を代表する全国レベルのプレイヤーであるが、決勝の超難問には歯が立たなかったようである。
 余談を一つ。翌日に行われた弥生杯は、串戸は2R敗退、遠藤が優勝と、明暗が逆転する結果となった。


一口メモ


 これで一橋オープン体験レポートは終了です。私が100人規模のオープン大会で準決勝まで進出したのは初めてのことでした。そのせいもあってか、ようやく体験記らしいものを書くことができました。中にはただのレポートで十分という方もいるでしょうが、自分が参加していてこそ意味があるという信念を持って書いているので、大目に見てやってください。
 今回多くの面でサポートしてくれた飯田暁によると、この大会の問題集は夏頃に発売される予定だそうです。前回もそうでしたが、問題集の収入が次回の開催費用ともなるので、ぜひ買ってくださいとのことです。


訂正: 3Rのタイムレース1問目「金田一耕助」を答えさせる問題は、「黒巣が正解」したのではなく、「春日が誤答」したのが事実でした。


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