(SS)ハルキョン「キョン」
勝手に今日輝いていたハルヒのレス:
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543 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/30(日) 23:54:16 ID:T3WmcEjD
395~415あたりの「鬱な展開」って話題に刺激されちゃったので
書きました。「なんだこれ」なんて思う方いたらどうかご容赦を。
が、これは「鬱」ではないのですっ!断じて。
544 SS「キョン」1/2 sage 2008/03/30(日) 23:55:26 ID:T3WmcEjD
私は都内の精神科の医院に勤めるものです。先日、自身に起こった事件からダメージを受け、い
まだに回復できません。いわば失踪事件という枠組みで語るほかないことなのですが、実は一般
には語れない事情があるのです。語れば私の社会的信用がなくなり、周囲の同僚・知人ばかりか、
家族親戚からも疎外されることは間違いありません。先生に語るのはこうした理由からです。と
もかく語らねば私はどうにかなりそうです。
一人の中年のご婦人が、私の勤務する医院の専門病棟に入ったのが始まりでした。三ヶ月前でし
た。名を仮にHさんとしておきましょう。私は彼女の主治医を任されたのです。Hさんの容貌は
丸顔で小さな目、体つきも丸い50代、いたって普通のご婦人です。ただ、固く結んだ口元には意
志の強さが感じられます。泣く日が多いのか、目元を赤くはらしておりました。Hさんが専門
病棟に入ったのには、込み入った家庭の事情があるらしく、はじめは彼女が社会不適応な重篤患
者には見えませんでした。しかしご家族の困惑は、診断してすぐ納得しました。
彼女は、自分を17歳の高校生と信じていたのです。
Hさんは半年前までは、健康で人付き合いもよく、長男の内定を喜ぶ普通の母・普通の主婦でし
た。それがガラリと変わってしまったのは、ラノベとか言われる、軽い少年少女向けの小説を読
み出してからだそうです。ご家族は「母は性格が豹変してしまい、怖い。どうしていいかわから
ない」と言われます。どうしていいかわからないのは彼女も同じですが。
「自分の認識に間違いはない」と訴えるときの必死な目は、健常者も患者も大して変わりません。
ですから私は、患者の目に「狂気が宿っていた」などという表現はフィクションと思っています。
はじめのうち、彼女は私を大いに警戒しておりました。この数ヶ月語っても誰にも理解されず、
理解されることはありえないという諦めが、彼女を支配していました。私は彼女が、現在の社会
に目をむけ、うまく適応して生きてゆく手伝いをしたいだけだと、繰り返し語りました。しぶし
ぶながら、彼女は私に「症状」を語りはじめたのです。
それは、今のHさんにどことなく似た状況の十代の少女の物語でした。
普通一般の現実認識は確かなのに、特定の事項では妄想に囚われている、といったことはよくあ
る症例ですので、特に驚きませんが、Hさんの場合異様だったのが、妄想の中の現実に、過剰な
ほどの情報が含まれていることでした。偏執的なまでに細部にわたって設定がほどこされ、意味
のない、持っていても仕方のない知識で彩られていたのです。
Hさんは一度自分の故郷に戻るために、地方まで出かけたことがあったそうですが、その場所は
似ているようで違っていて、彼女の心中にあったはずの自分の家もありませんでした。Hさんは
確信していました。自分のほんとうの故郷はここではなく、もう一つ別の世界の日本であると。
もちろん、そんなことがあるはずもなく、第一、今まで数十年間の経験はなんだったのかを考え
れば容易にくつがえる虚言なのですが、彼女は本気で信じていたのです。この確信が妄想である
と理解させるのは、とてもとても長い時間が必要だと私は溜息とともに覚悟しました。
二ヶ月ばかりの入院の間に、日常の会話を少しずつしてくれるようになりましたし、私と話すの
も多少の気晴らしになるようです。しかしその一方で、彼女の体力はみるみる落ちてゆきます。
気丈にしていた心も折れて、やっと現実に目を向けてくれるようになったと思ったのですが、不
吉さも同じく感じたのは事実です。高熱を出し寝込むこともしばしばとなり、うわごとは決まっ
て自分の凶運を呪うものでした。
546 SS「キョン」2 sage 2008/03/31(月) 00:01:07 ID:9D6HHLyw
・・・そしてあの日。
その日は小雨のしとしとと降る、寒い1日でした。たまたま夜間勤務だったその夜、Hさんの病
室のモニターから奇妙な雑音が発しているのに気づきました。私は胸騒ぎがして、Hさんの部屋
へ向かいました。明かりを消した病室の扉ごしから、誰か人の声が聞こえます。私はこっそりと
隣のマジックミラーのついた観察室に入りました。
・・・・・病室にいたのは、立ち姿の見知らぬ二人の男女でした。眠るHさんを見つめていま
す。年恰好は高校生くらいでしょうか。一方の小柄な少女は制服姿。男性のほうはジャージらし
きものを着ているように見えました。「見えました」と表現をぼかすのは、彼らがなにか薄青く発
光し輪郭が奇妙にぼやけていたからなのです。
見てはいけないものを見た気がしました。彼らの会話を少しだけボイスレコーダーに入れられた
ので聞いてください。
547 SS「キョン」3終 sage 2008/03/31(月) 00:02:40 ID:T3WmcEjD
「やっと見つけたな」「・・・」「自分の能力でこんなハメに陥るなんて・・・そろそろこいつに
も真相を知らせなきゃな・・・ホントにこれがこいつの願望だったってのか?」「・・・・悪夢の
ほうと思う」「悪夢?」「こんな結末が待っているのではないかと彼女の心に生まれたかすかな疑
念」「なぜそんな疑いをもつんだ。普通もたんぞ。こんなの」「・・・・・彼女にとってあまりに
突然の幸福だったからかもしれない。幸福すぎると」「?」「・・・・・あなたとの交流が」「・・・・・
そんな・・・・そんなことで・・・・・ばかなやつ・・・」「もう時間がない。迅速な処置が必要」
「よし!」
・・・ここまでです。彼らはHさんを揺り起こしました。うっすらと目を開けたときの彼女のあ
の表情・あの声、今も忘れられない。巨大な稲光と思える白い光の中で彼女は鋭い叫びを発して
いました。
「キョンだ・・・・キョン――――――――――――ッ!!!!!!!!!!!!!!」
次の瞬間には、彼女は病室から消えていました。謎の二人も。その後の騒動は、新聞でも多少記
事になりましたのでご承知かと思います。
「キョン」とは何か?私もよくわかりません。そう、彼女のうわごとも「凶運」でなく「キョン」
だったのかも知れないですね・・・
・・・私はこの事件、不吉な前兆ではないかと思うようになりました。あなたもこのごろ感じま
せんか?この世界の存在感の希薄さを。眠るようなけだるい世界の破滅が待っているのではない
か、という忌まわしい予感を。
「なぜわかるのか」ですって?・・・わかるのだから仕方ないじゃありませんか。
548 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/31(月) 00:08:15 ID:9D6HHLyw
途中投下失敗して3分割になりました。
では。
550 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/31(月) 00:11:49 ID:pI1pLFwA
>>548
最後の行で世にも奇妙な物語的な寒気がしたぜ。
551 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/31(月) 00:12:08 ID:H7uu9rPN
>>548
乙!!
なぜか最初のHさんという所で笑ってしまった自分は病院行くしかないですねorz
552 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/31(月) 00:12:16 ID:G2KHcT0l
>547
おっ、その発想は無かった。
ホラー風でんな……
553 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/31(月) 00:39:51 ID:vWgf/Z3p
>>548
乙!
急に幸せが手に入ってしまうと人はそれと無く逆のこと考えてしまう時ってありますよね。
>>550
しかし世にも奇妙な物語り的とはマトを得ている
555 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/31(月) 00:58:58 ID:nuTWRpdr
>>543
橘乙w
いやいや、でも良いssだった
560 543 sage 2008/03/31(月) 02:01:07 ID:9D6HHLyw
みなさま、コメントありがとうございました。
時間差なく感想がきけてうれしいです。
こんどはギャグが書けたらいいなー。
565 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/31(月) 02:24:06 ID:h+ncCi5M
>>550
世にも奇妙な物語と聞いて、語り手の医者のネームプレートに古泉って書いてあるのが幻視できた。
わかるんだから=ハルヒの心理状態は古泉達超能力者には分かる
とかなんかメタ的な感じ。
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(舟)
ハルヒが創造した悪夢の世界に、残された人々はどんなことになるんだろうか。
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