2008年03月13日

(SS)ハルキョン+古泉「茜色の告白」

勝手に今日輝いていたハルヒのレス:

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763 SS:「茜色の告白」1/3 sage 2008/03/12(水) 14:18:26 ID:ZXsdXmua
 まだまだ日が暮れるのはあっという間だ。
 人気のない校舎裏は夕日に照らされて白の壁が鮮やかな橙に塗られ、風に散る紅葉の赤と溶け合い実に見事でどこか切なさを感じる美しさが光っている。
 そしてこの情景は今のこんな場面にはぴったりの相性を持った借景演出となりうるだろう。
 「わ、私と付き合ってくれませんか?」
 紅葉と同じ色をした少女の頬は年齢相応の可愛らしさを引き立たせてそこはかとなく魅力的だ。
 そう、まさしく今。
 夕日まぶしい校舎裏で告白される、と言う青春の1ページの主演男優として返答を迫られていた。

 さて、どう答えるか。
 と悩むようなことは無い。答えは最初から決まっている。この場所に呼び出された時に既に。
 「ええと、申し訳ありません。お気持ちは大変嬉しいのですが、現在僕にはそういった余裕が無いものですから」
 「やっぱり、SOS団の団長さんのことが……?」
 これはまた。そんな話が囁かれているのか。誰が流した噂なんだろう。
 「いえ、そう言うわけではありませんよ。涼宮さんが見ているのは1人だけですから。そのような噂が立っているんですか?」
 「う、うん。えと……『涼宮さんが本当に好きだから彼女の応援をしてる』って。『だから今は他の女の子とは付き合えない』って聞きました」
 涼宮さんや彼の耳に入ったらなんだか面倒臭いことになりそうな噂だ。彼風に言えば「やれやれ」と言ったところだろうか。
 「そうですか。まあ噂が立つのも仕方ないことですね。とにかく部活にバイトと、僕には今自分の恋愛よりも大事なことがあるんです」
 こちらを見上げていた少女の視線が下に落ちる。わかってくれた、みたいだ。
 心が痛む。当たり前だが悲しませたいわけじゃない。気持ちに応えられないせいで落胆させるのは本意ではない。
 けれどこればかりはどうしようもない。
 「さて、そろそろ部活に行かなくては。本当に申し訳ありません。お気持ちは本当に嬉しいですから」

 「あら、古泉くん今日は遅かったのね」
 「申し訳ありません、少々野暮用があったもので」
 部室に入るといつもの元気な声が。今日は上機嫌なようで何よりだ。
 「野暮用って何やってたんだ?」
 「おや、野暮なことを仰いますね」
 「へいへい、聞いた俺が悪かったよ」
 こちらも、いつも通り。
 「そうよキョン。古泉くんのことだから校舎裏で告白でもされてたのかもしれないじゃない。あんたと違ってさ」
 ……さすがは涼宮さん。まさしくビンゴだ。
 「どーせ俺はラブコメ漫画みたいな展開の無い高校生活を送ってるよ」
 日頃あれだけベタなラブコメみたいな仲を見せ付けておいて何を言ってるんだろう。まあ本人達にその意識は無いのだろうけれど。
 すぐに2人でどこから見ても痴話喧嘩としか言いようの無いやり取りを始める。
 「お茶です、どうぞ古泉くん」
 メイド姿の朝比奈さんが甲斐甲斐しくお茶を給仕してくれる。
 長門さんも定位置で本を読んでいる。いつも通りに。
 この目で見ることが出来る限りもっとも幸福な風景。
 平穏であるいつもの放課後。
 しかし平穏で一般的な人生であれば決して得ることの出来なかった平穏。
 多くの奇跡と努力の上に成り立った不安定な空中楼閣。
 遠くない未来にいつか消えてしまう刹那のモラトリアム。
 部室の風景は今日も変わらず、微笑ましい。


764 SS:「茜色の告白」2/3 sage 2008/03/12(水) 14:19:03 ID:ZXsdXmua
 お茶を啜りながら、飽きもせず可愛らしい言い争いをする2人を眺めつつ、先ほどの少女のことを思い出す。
 今のような生活でなければ、涼宮さんと「機関」に関わり合いを持っていなければ、僕は今のように断っただろうか。
 仮定するだけ無駄な、まるで意味の無い思考。
 一般的に見れば多くの男性が「可愛い」と評価するであろう少女。
 選択授業では教室を同じくする為に幾度か会話も交わしたことはあるが真面目で人当たりもよく明るい性格が好ましかった。
 肩の辺りで切り揃えられた髪に大きな瞳。どこか誰かを髣髴とさせる容姿。
 ただし、やや垂れた目尻と、彼女のような大きな自信を秘めない瞳からはとても柔らかな印象を受けたが。

 しかしまったくおかしな噂が立ってしまっているものだ。
 涼宮さんのことが好きで涼宮さんの恋を応援しているなんて。
 ……見事なほど核心を突いた噂だ。先刻は思わず否定ができなかった。
 とは言え、やはりこの気持ちは世間一般で言う恋愛感情とは趣を異にするものかもしれない。
 既にこの身体と精神は無条件で彼女を拝跪せずにはいられないようになっている。
 この身を超常の者とした彼女を絶対とし、この不安定な世界を支えるという使命を胸に抱いていなければこの心はとっくの昔に壊れていたに違いない。
 すべての支えをなくして引き裂かれるように砕け散り、まともに繋ぎとめておくことはできなかっただろう。
 認めよう。
 僕にとって涼宮さんはこの世界の誰よりも大切な女性だ。
 僕に力が宿り、それが彼女からもたらされたものだと誰に教わるでもなく知ってしまったあの日からずっと。
 だから時期外れの転校生として涼宮さんの、いわば女神の側仕えの任務が下った時は喜びに打ち震えた。
 彼女の心の内側から世界を守ることに徹してきたが、彼女の心そのものを守ることに尽力できる日が来たのだから。
 彼女を悲しませないよう、苛立たせないよう、できるのならば少しでも笑顔を見せてくれるよう。
 そのための努力を惜しまないと心に誓った転校初日。

    「あなたが謎の転校生ね! あたしはSOS団団長涼宮ハルヒ。あなたをスカウトしに来たわ!」

 一限直後の休み時間に教室に飛び込んできた少女はこの3年間において一度も見たことの無い真夏の太陽のような笑顔で。

    「部室に案内するわ。ついてきて!」

 放課後のチャイムがなるとほぼ同時にまた飛び込んで僕の手首をしっかりと掴む。
 返事は勿論「はい」なのだけれど答える間も無く強く引っぱっていくその笑顔は中学までの彼女の強引さとはまた違って。

    「へい、お待ち! 1年9組に本日やってきた即戦力の転校生、その名も、」

 挨拶を促しながら手を離す。
 中を窺うと情報統合思念体のTFEI、未来人のエージェント。そして……

    「古泉一樹です。……よろしく」

 その時は表面上以外ありえないと思えた涼宮さんの「みんな、仲良くやりましょう!」の言葉はすぐに、心からのものとなる。
 僕はその日から涼宮さんを積極的に支えるのではなく、彼と彼女を見守り支える仕事に徹してきた。
 そのまま1年以上経っても劇的な変化の無い2人の関係。
 自分の気持ちすら素直に見ようとしない2人は見ていてもどかしい時もあるけれど、実に彼ららしい素晴らしい関係だとも思う。
 例えば。
 例えばもしも僕が涼宮さんにこの想いをすべて伝えれば。
 2人は自分の想いに向き合って関係性を変化させることが出来るだろうか。


765 SS:「茜色の告白」3/3 sage 2008/03/12(水) 14:19:35 ID:ZXsdXmua
 恐らくは、必ずそうなるだろう。
 けれどそれを僕がすることは決して無い。
 2人なら僕が何もしなくてもきっと収まるべきところに収まる。
 それを無理に早める必要はない。
 彼氏彼女として恋愛するだけが幸福ではない。今の僕のように。今の5人での楽しい時間もまたかけがえの無い幸福だから。
 それに、やっぱりこの想いは恋愛感情とは少し違う。
 言うなれば、妹を心配し守りたいと願う兄のそれに近いのかもしれない。兄にしては妹に心酔しすぎかもしれないが。
 僕にとって涼宮さんはこの世界の誰よりも大切な女性だ。
 だからこそ彼女と、彼女を笑顔にしてくれた彼には幸せになってほしい。
 そろそろ2人の口論が終結するであろうことを横目で見ながら箱を開け、タルを取り出して人形を挿す。
 プラスチックの剣を袋から出して準備完了だ。今日はこれで遊ぶことにしよう。

 帰り道、そっと彼にささやく。
 「涼宮さんを、どうかよろしくお願いします」
 いきなりで驚いたのか彼は引きつった顔で耳を擦りながら振り返った。
 「なんだいきなり耳元で。気持ちわりいな、急になんだよ」
 「いえ、なんとなくそんなことを言いたい気分だったものですから」
 「本当におかしいぞお前。やっぱなんかあったのか?」
 「さあ、どうでしょうね」
 どうも色々考えすぎて「僕」らしくなくなっていたようだ。
 我ながら、まだまだ未熟だな。
 「よろしくって俺は何をすりゃいいんだ?」
 「それはあなたにお任せしますよ。お好きなようになさってください」
 もう少しの間、こうして5人で笑っていたい。
 ならば、僕はこうやって笑顔を絶やさず見守っていればそれでいい。
 高校生活も、この不思議なメンバーの集まりも、いつかは終わりが来るのだから。
 それまでは、
 「あなた方が思うがままになさっていれば、それだけで僕は楽しく日々を送れますから、ね」


766 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/12(水) 14:22:01 ID:ZXsdXmua
 以上。なんかもうむしゃくしゃして古泉→ハルキョン。
 実際こんなことあるんじゃねーの?
 って感じに告白される古泉羨ましい。

 あくまでハルキョンベースなので●スレじゃなくてあえてこのスレに投下。
 「スレ違いじゃね?」と思ったら言ってくれ。
 次回以降古泉メインの話ができたらそっちへ落とす。


767 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/12(水) 14:33:36 ID:Sxcn0QdX
 >>766
 GJありがとう。
 そんなあなたもGJだぜい。
 古泉大人だなー。そいでもってさりげないハルキョンが( ・∀・)イイ!!

 さてと仕事に戻りますか。


768 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/12(水) 14:40:38 ID:GZxtFj1z
 >>766
 GJ!
 個人的に●視点は好きだし、スレチでもないと思う。

 さて、守備位置へ戻るか。

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(舟)
 ハルキョンを応援していると周囲に思われているってのも、あながち的外れではないようで。

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「輝いていたハルヒのレス」リスト一覧:
総合改変ガイドライン
SSSS・ハルキョンSS・長キョンSS・佐々キョン

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引用元:【涼宮ハルヒの憂鬱】涼宮ハルヒを語れ その83

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