2008年03月02日

(SS)ハルキョン「ぎこちなさ」

勝手に今日輝いていたハルヒのレス:

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586 ハルキョンSS:ぎこちなさ(1/4) sage 2008/03/01(土) 15:01:10 ID:J/iipL4h
 
  目が覚めると、あたしはキョンと一緒のベッドの中に居た。
  その正面には、目を閉じたままのいつものキョンのマヌケ面。
 
  それに気付いた瞬間、あたしは勢い良く上半身を起こして、掛け布団を身体に絡ませながらも俊足でベッドの上から床へと飛び降りる。
  そして息を弾ませながら振り向くと、キョンがだらしなく口を開きながら、さっきまであたしが居たその横でいびきをかいていた。ここは…、キョンの部屋。
  あ、その、べ、別に昨夜からベッドの中で変な事なんて何もやってないわよ? だってあたしたち、今もお互いちゃんと服を着たままだし。ただ、ちょっとキョンの腕の中が暖かくて気持ち良かったかなーなんて…、って馬鹿! 何言わせてんのよ!
  あたしは誰にともなくそう思って内心悶えながら、さっき慌てて奪ってしまっていたこのキョンの掛け布団をぎゅっと抱きしめる。どうやら羽毛素材のようで、ふんわりしてて柔らかい。それに先程までの二人分の体温がまだその内にこもったままだ。
  あ…、キョンの匂いがする。何だかほのかに酸っぱくてほろ苦いような香りが鼻をくすぐる。あたしはそっとその上にこの顔を埋める。
  そもそも、何でこんな事になったんだっけ。
 
  そう、昨日である金曜日、キョンが学校で「今夜から週末にかけて他の家族が旅行に行ってしまう」と嘆いていたから、あたしはチャンスだと思って晩御飯を作りに来てあげたのだ。
  SOS団の不思議探索も、一応明日に変更しておいた。あたしが部室でそう告げると何故か、みくるちゃんはその可愛らしい顔を真っ赤にし、古泉くんはいつもの爽やかスマイルを全開、いいえ120%にして、有希まで珍しくこちらを凝視していた。
  もう、何なのよ、みんなして。あたしはただ団長として、このあわれなキョンがちょっと不憫になっただけじゃない。
  それにもし変なものでも食べて体調なんか崩された日には、雑用としての仕事に支障が出るんだからね。こいつ本当に馬鹿なんだからやりかねないわ。
 
  そして二人で一旦あたしの家に寄って、あたしが着替えてから買い物をしてキョンの家へと向かい、夕食を済ませた後、あたしたちはキョンの部屋でとりとめもなく駄弁ったり漫画を読んだりしていた。
  するとそうこうしている内にいつの間にかキョンが寝入ってしまっていて、あたしはその重い身体を引きずってベッドへと載せ、上に布団も被せてやった後、その横でキョンの耳を引っ張ったり鼻をつねったり頬をつついたりして遊んでいた。
  キョンもまるでそれに応えるように、「んが、やめろハルヒ~」だとか「走るなよ、転ぶぞ~」だとか「ハルヒ、ポニーテールにしないか~」だとかうなっていた。…本当に寝言は寝て言え、この馬鹿。
  そうしたら唐突にこの寝相の悪いバカキョンが「ハルヒ、お前な~」などと呟きながらあたしの身体に腕を絡ませてきて、あたしはそこから抜け出せなくなってしまった。
  しょうがないからそのままの状態であたしも布団の中に入り、キョンの寝顔を観察していたら――気付けば今に至っていた。
 
  こうして思い返してみても、やっぱりあたしの側に落ち度は皆無だわね。うん、全部このエロキョンのせいだ。そうしとこう。
  あたしはそう考えて、それからもしばらくの間この胸に懐いている布団の温もりを肌に感じながら、このスェットの上下の間からずぼらに腹を覗かせたキョンの姿を眺めていた。


587 ハルキョンSS:ぎこちなさ(2/4) sage 2008/03/01(土) 15:03:05 ID:J/iipL4h
 
  ――俺は冷えた身体で身震いしながら、この目を覚ました。
  見るとハルヒは床の上に直にしゃがみ込んで、俺の布団をその胸の中に抱いていた。
 「よお、ハルヒ。何だお前、結局うちに泊まってっちゃったのか。しかも何か寒いと思ったら、俺の布団そっちに持っていっちまいやがって。もしかしてそこの床ででも寝てたのか? 身体痛かっただろ」
  俺のその言葉に、ハルヒは咄嗟に怯えたかのようにびくついた後、何故か慌てつつ俺からぷいとそっぽを向いて答える。
 「あ、あぅ…。お、おはょ…ございます」
  ハルヒの声は尻すぼみに小さくなってゆく。
  何で敬語なんだ? しかも変な声出したりして。
 「な、なな、何でもないわよ、この馬鹿! バカキョン! エロキョン! こっち見んな!」
  いや、見んなとか言われてもな。俺が一体何やったと…。あと、どさくさに紛れてエロキョンって何だお前。
 「…色々やったじゃないの、このエロキョン…」
  は!? 例えば何を!?
 
  まあそれはそうと、今日は映画観に行きたいとか言ってただろ? さっさと支度して出掛けようぜ。
 「あ、ちょっと待って。服、着替えてくるから。それと、ちょっとシャワーとか借りてもいい?」
  ああ、タオルなんかも洗面所ら辺にあるの好きに使えよ。そしたら近くに洗濯物籠もあるから、そこに放り込んどいてくれ。
  俺がそう言うと、ハルヒは部屋を出てドタバタと階段を下りてゆく。しっかしあいつ、着替えとは準備いいな…。どうりで荷物が大きめだと思ったんだよ。ていうかそもそも、何で着替えなんて用意してたんだ? あいつ、最初から泊まるつもりだったのか?
  …まあ、いいや。さてと、ハルヒが入り終わったら俺も少し身体流すとするか。

 
  あたしは軽くシャワーを浴びた後、下着も新しいものに換え、キャミソールを身に着けて、デニム地で膝上丈のミニを穿く。ふう、こんなこともあろうかと念のため用意しておいて良かったわ。やっぱり供えあれば憂いなし、ね。
  それなのにあたしはうっかり洗面用具を家に忘れてきてしまっていたので、キョンにハブラシを借りて歯を磨く。
  …そのあたしが言うのもなんだけど、あいつもよく他人に自分のハブラシなんて使わせられるわね。大らかというか、デリカシーが無いというか、何と言うか…。
  まあ、別にあたしの方もキョンのなら一向に構わないんだけどさ。でもこれってやっぱり、間接…ハブラシ…?
 
  そして入れ違いにキョンがシャワーを浴びている間に自分の荷物をまとめて、あたしはキャミの上からに薄手のカーディガンを羽織る。
  やがてキョンも支度を終えるとあたしたちは揃って家を後にした。
 
  外ではそこかしこに春の息吹が感じられた。陽の光が柔らかに降り注ぎ、小さな虫たちが行き交い、そよ風が草と土の香りを運び、木々が青々と色づいていた。
  あたしは歩きながらそんな周囲の景色に見入っていると、いつの間にか並んだこの肩をキョンの方へ寄せてしまっていたので、不意に手と手が触れ、慌ててそれを引っ込ませてしまう。
 「おい、ハルヒ」
 「は、はい!?」
  思わず声が素っ頓狂に裏返る。あたし、さっきから過剰に意識しちゃってる。こんなバカキョンなんか相手に。


588 ハルキョンSS:ぎこちなさ(3/4) sage 2008/03/01(土) 15:05:06 ID:J/iipL4h
 
  道行く間も、ハルヒはどこか動きがそわそわとしていて忙しない。それに何だか、こちらから話しかけても碌に返事もしない時もある。何だ?
  別に対応がそっけなかったりするのはいつもの事だが、今日は何だか普段のそれとは少し雰囲気が違う気がする。昨夜は特にそんなこともなかったと思うが、朝になるまでの間に何かあったのだろうか。
  やがて川沿いの緑地公園に差し掛かったあたりで、俺はハルヒに声をかけて訊ねてみることにする。
 「お前、朝からどっかおかしいぞ。どうかしたのか?」
 「…何でもないわよ」
  何やら俯きがちにハルヒは答えるが、俺としてはこんなわだかまりを抱えたまま遊びに行くという気にもなれない。
 「なあ、何かあるのならちゃんと言ってくれよ。自分の中だけで溜め込むのは良くないっていつも言ってるのはお前の方だろ。隠してる事でもあるのか?」
 「ッ! だからっ、何でもないって言ってるでしょ!」
  唐突にハルヒが声を張り上げ、俺は思わず言葉を失う。いつの間にか立ち止まったまま見つめ合う俺たち。しばし二人の間に、張り詰めた空気が漂う。


  やがてキョンは、ふっとあたしから顔を逸らすと、誤魔化しがちに口を開く。
 「…ちょっとそこで待ってろ、何か飲み物でも買ってきてやるよ」
  ぶっきらぼうにそう言って、そのままこっちを見ようともせずに向こうへ行ってしまった。
 
  少し、怒らせちゃったかな。ふん、でも別にあたしが一方的に悪いわけじゃないじゃない。だって、キョンがあんな問い詰めるような言い方してくるから…。
  そう思いながらも近くにあったベンチに腰掛けて待っていると、やがてキョンが缶ジュースをその両手に一本ずつ持ってあちらからやってくる。
 「ほらよ」
  あたしは礼も言わずにそれを受け取る。さっきの態度へのお返しにと、目だって合わせてやんない。
  ベンチに隣通しに並んで前を向いたまま、しばらくのあいだ黙ってちびちびとジュースを口にするあたしたち二人。何だかちょっと、気まずい雰囲気。
 
 「なあ、ハルヒ」
  何よ。
 「その…何ていうか、悪かったな」
  …え?
 「すまん俺、正直言って昨晩の事はよく覚えてないんだが、知らないうちに何かお前の気に障るようなことをやらかしちまったみたいだな。それが何かは未だに思い出せないんだが、それも含めてとにかく謝るよ」
 
  べ、別にそんな、平に謝られる様なことじゃないんだけど…。
 「…いいのよ、もう、そんな事は」
  でもそんな本音を率直には言えず、あたしはいかにもしぶしぶといった風情を漂わせながらそう返してしまう。本当に素直になれないな、あたしって。…このままじゃ、やっぱりダメなのかな。
 「まあ、あんたがそんなに言うんなら、許してあげないこともないけどさ。心の広いこのあたしに感謝しなさいよね」
  あたしは恩着せがましくそう告げると、座ったままベンチを伝って、つつっとキョンの傍へと身を寄せる。そしてこの首をキョンの肩へとこくんと預け、そっと目を瞑る。


589 ハルキョンSS:ぎこちなさ(4/4) sage 2008/03/01(土) 15:07:11 ID:J/iipL4h
 
 「お、おい、ハルヒ?」
 「…るっさいわね、ちょっと黙ってなさいよ」
 「そろそろ行かないと、映画の予定の時間に遅れちまうんだが…」
 「あんた、馬鹿じゃないの? そんなの次の回に見送ればいいだけでしょうが。つまんない事でいちいち邪魔するんじゃないわよ、もうっ」
 「いや、邪魔って何の邪魔だよ」
 「だーかーらー、さっきからうっさいって言ってんの!」
 「お前、やっぱり怒ってるだろ」
 「怒ってないわよ! あーもう、喋んな! 台無しじゃないのよ、バカキョン!」
 
  やれやれ全く、そんなに眠かったのか、こいつは? やっぱり床の上なんかじゃ上手く寝付けなかったんだろ。事前に言えば、ちゃんとベッドだって譲ってやったってのによ。…ああもしかして、それでずっとむくれてたのか?
  本当にやれやれだな。まあお前が寝たいって言うのなら、この肩くらいいくらでも貸してやるけどさ。
  そして俺は、ハルヒが眠りの最中に誤ってその体勢を崩したりしてしまわぬようにと、その小さな肩へとこの腕を回す――。
 
    -特にオチもなくend-


590 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/01(土) 15:18:53 ID:V3lwcZNi
 >>586-589
 GJ!
 ここに来ると癒される


591 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/01(土) 15:32:31 ID:Z55OVQQF
 今出先なんだけどあまりのニヤケっぷりに怪しい人になってしまう。
 帰ってから読もう。
 グッジョブだぜ!


592 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/01(土) 15:47:46 ID:PszR6eXQ
 なんという週末デート……っ!GJ !


593 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/01(土) 15:50:27 ID:whFU9tKE
 >>589
 GJ!
 同じ歯ブラシを使わせるとは・・・
 なかなかやるなキョン


596 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/01(土) 18:00:44 ID:ir6Ck47r
 >>589
 キョンの鈍感ぶりはもはや策士の域だと思う。
 動揺のあまりしおらしくなるハルにゃんかわいいよハルにゃん


597 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/01(土) 19:35:32 ID:aoZPM6AE
 >>589
 最後の一行がとんでもないキョンデレw
 こんなんでも付き合ってないと言い張るんだろうな。GJ


598 名無しさん@お腹いっぱい。 sage 2008/03/01(土) 20:21:56 ID:ir6Ck47r
 付き合ってない、付き合ってないと言い張り続け、
 気付けばアッサリ結婚してるタイプ。

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(舟)
 特に何てことのない日常、だけれど幸せな風景ですな。

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「輝いていたハルヒのレス」リスト一覧:
総合改変ガイドライン
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引用元:【涼宮ハルヒの憂鬱】涼宮ハルヒを語れ その82

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