2007年09月12日

(SS)長キョン「カレー作り」

勝手に今日輝いていたハルヒのレス:

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626 :SS:2007/09/11(火) 17:14:31 ID:W9NMk9XW
 流れを無視して失礼。数スレ前に出てたエプロン姿の長門で今更妄想が沸いたので
 ちょっと書いてみた。長いので読み飛ばし推奨で。

 「男子、厨房に立つべからず」ってのが誰の言葉かは知らないが、おそらく自分で
 ミカンの皮1つ剥く必要のなかった環境の人間の言葉だろう。
 人間、必要とあれば男女問わず厨房に立つ事はあるし、更に時と場合によっては
 その必要の無いヒューマノイド・インターフェースでも立たねばならない時がある。
 それが今のエプロン姿の俺であり、その横で立っている、これまたエプロン姿の長門だった。

 事の発端は昨日、多くの事態がそうであるようにやはりハルヒの一言からだった。
 「そーいえばさ、有希って料理って作れるの?」
 ふとした記憶から事件解決のヒントを発見した名探偵みたいな言い方で、いつものように
 部室の隅で本を読んでいる長門に言う。
 また随分と今更な質問だな。バレンタインの時、朝比奈さんと一緒に三人でチョコを
 作ったんじゃなかったのか? 
 確か長門は俺用・古泉用に加えてクジ引き大会用のも作っていた筈だぞ。
 「アレは湯煎にかけて溶かしたチョコを型に入れただけだもの、料理の内に入らないわ。
  考えてみれば今までSOS団の活動で料理を作る時があっても、
 あたしとみくるちゃんで大抵のものは作れちゃったし……で、どうなの?」
 興味津々と言った風情でハルヒは再び長門に向き直った。
 対する長門はと言うと、無表情にハルヒの強烈な視線を受け止めている。
 「作れる」
 数秒の間を置いて、長門は淡々と答えた。
 「本当!? 得意料理は?」
 「……………」
 さっきよりも長い沈黙。
 「……秘密」


628 :SS:2007/09/11(火) 17:17:31 ID:W9NMk9XW
 長門らしからぬ回答。だがそれは、我等が団長の探求心を更に刺激してしまったらしい。
 「フフ~ン、団長に秘密……ね。いいわ、それじゃ秘密にできなくしてあげる。
  ってワケでみんな!  今度の日曜のSOS団課外活動はお料理大会よ!
  各自手料理を持参、もしくは材料を持ってきてその場で調理!
  一番美味しい料理を作れた子にはSOS団・料理長の称号をあげるわ!
  キョン!  「どうせ一番になれない」とか思わないでアンタもちゃんと作ってくるのよ。
  会場はどうしようかしら? 凝った料理を作っても大丈夫な所がいいわよね…」
 怪気炎を上げるハルヒに、いつもなら俺は「やれやれ」と思う所なのだろう。
 だが、今の俺は別の事が気にかかっていた。
 いつもなら何事もなかったかのように本に目を戻す長門が、ハルヒに返事をした姿勢のままだったのだ。
 まるで動揺で凍り付いているかのように。


 「おそらく長門さんは料理らしい料理を作った事がありません。これは、機関が遭遇した
 長門さん以外のTFEIからも判明している共通事項です」
 その日の帰り道、長門の様子を話した俺に古泉はそう言った。
 「ちょっと待て、俺は長門たちの料理を食った事があるぞ?」
 そう、俺は何回か食べた事がある。長門の家でのカレー……まあ、あれは確かにレトルトだったが
 もう一件、ハルヒの消えた世界で朝倉涼子が持って来たおでんは確かに自家製だった。
 「それを実際に調理している場所に立ち会いましたか?」
 だが、その程度の論拠ではこいつの口の回転は止まらないようだ。
 「言い方が悪かったですね。正確には、彼女たちは料理そのものを創造する事はできる。
  しかし材料を調理して料理にする事に関しては経験が無いと言う事です。
  例えば、プラモデルの完成形を型抜きで作る事はできても、同じものをパーツから
  組み立てようと思えば、その過程で技量や経験が必要になります。
  その過程の部分を彼女たちは必要としないため、経験が無いのです」


629 :SS:2007/09/11(火) 17:18:45 ID:W9NMk9XW
 古泉の話は、とりあえずここまでの時点では納得できなくはない。
 だがそうなると別の点が分らなくなってくる。
 「それじゃ何で長門は動揺してたんだ? 創造できるのなら、来る前に作っておけばいいじゃないか」
 それに対し、古泉は「これは僕自身の推測ですが」と前置きを置いた上でこう言った。
 「騙したくないんですよ」
 「ハルヒを? それを言ったら、俺を含めた全員が共犯者だ」
 「……………」
 おい、何故人がクイズ番組のサービス問題で間違えたような顔をする。
 「彼女には同情を禁じえませんよ……まあ僕から言えるのは、長門さんが困っているという事だけです」
 分かれ道に来た所で古泉はそう言い残していった。


 ――その直後に長門に電話して、現在の状況に至るワケだ。
 ちなみに今回長門の首を縦に振らせるまでに相当苦戦があった事も付け加えておこう。
 自慢では無いが中学の頃、親が忙しい時とかは妹の遠足の弁当などは俺が作っていたのだ。
 なので多少は料理の腕には覚えがある。親孝行はしておくもんだな、うん。
 そして今、俺達の前にはこれから調理しようとする食材が並んでいる。
 牛肉、玉葱、人参、馬鈴薯、小麦粉にカレー粉。
 切る、炒める、煮るがこれ1つで学習でき、かつ誰が作ってもそれなりに美味い。
 初心者料理の王様、カレーライスである。
 「さてと、それじゃ野菜の下ごしらえから始めるか」
 「………」
 長門は小さく頷き、包丁を手にまな板に向き合った。


630 :SS:2007/09/11(火) 17:20:09 ID:W9NMk9XW
 ちなみに今の長門はいつもの制服の上からヒヨコ柄の白いエプロンを着けている。
 何と言うか、普段の長門からは見られない家庭的な雰囲気だ。
 っていかんいかん、眺めているだけでなくちゃんと教えないとな。

 まず水洗いしたジャガイモの芽を取り、皮を剥く。同様に人参や玉葱も洗って皮むき。
 俺の手元を時折眺めて参考にしつつ、長門も同じ工程を行なう。
 そこまでできたら今度はさいの目に切るわけだが……
 「って、ちょっと待った!」
 まな板の上の人参を押さえつつ刃を当てる長門を、俺は包丁を置いて慌てて止めた。
 「指先で野菜を押さえるのは危険だぞ? そこは指を曲げて……」
 長門の手を取り、細い指先を丸める。
 「……………」
 一瞬驚いたかのように長門は動きを止めたが、すぐに力を抜く。
 「そう、そうやって柔らかく抑える。それで火が通りやすいように大きさは均一にだな……」
 「………」
 包丁を持ったままの右手に添え、ゆっくりと切ってゆく。
 「こんな感じだ。他の野菜も同様だな」
 「………」
 長門は手を止め、俺を見上げてこくんと頷く。
 「……うおっ!?」
 そして、その時になってようやく俺は長門の両手を持ったまま密着している事に気が付いた。
 「す、すまない長門。近すぎた」
 「構わない」
 淡白な返事。しかしその目線は俺の顔へきっちり注がれている。
 「あー……それじゃ続けるぞ。次は肉を炒めてから……」
 向けられ続ける目線にどことなく気まずさを感じ、俺は体を離して次の行程を教え始めた。


631 :SS:2007/09/11(火) 17:21:15 ID:W9NMk9XW
 小麦粉をキツネ色になるまで炒め、そこにカレー粉とスープを入れてルーを作る。
 その一方で肉、野菜を充分煮込む。柔らかくなる前にルーを入れると歯ざわりが
 悪くなるので注意が必要だ。
 そしてルーを入れて更にコトコト煮込む事しばらく。そして―――
 「……できた」
 「ああ、お前が作ったカレーだ」
 鍋の中で香ばしい風味を発するカレーを、満足そうに長門は眺めていた。
 「……あ」
 ところが、ここで俺は致命的なミスに気付いた。
 カレーライスに必須なもう一品。ご飯が炊けていないのである。
 「すまん長門、飯を炊くのを忘れてた……」
 頭を下げる俺を長門は数秒見つめていたが、
 「待っていて」
 と一言言うと、トコトコと台所を出て居間の食卓に置かれていた電子ジャーを持ってきた。
 パカと蓋を開けると、そこには熱々の湯気を放つ炊き立てご飯がぎっしり入っている。
 「最初から炊けていたのか?」
 「……今作った」
 正直に言うかどうか迷っていたのだろう。僅かの沈黙の後、目線を逸らして答える。
 ……なるほど、これが古泉の言う「型抜き」という事か。


632 :SS:2007/09/11(火) 17:22:31 ID:W9NMk9XW
 「よし、それじゃ食うか」
 「………」
 だが、長門はジャーを置き直すと急に俺との距離を詰めてきた。
 「ど、どうした?」
 「動かないで、貴方の右頬にルーが付いている」
 言われて右頬に指を当てるとぬるりとした感触。どうやら跳ねたルーがついたらしい。
 「ああ、この程度自分で……」

 ぺろっ

 「!?」
 「……甘口」
 「……な、長門、今のは……?」
 「皿の用意をする。貴方には鍋を持ってきてほしい」
 「……あ、ああ……」
 ……深い意味は無いと捕えていいんだろうか?

 ……とまあ、かくして長門はカレーの作り方を覚え、来たるSOS団料理大会へ万全の
 体勢を整える事ができたわけである。
 その結果、その料理大会でまた長門と俺は一悶着起こす事になるのだが……それはまた別の話で。


633 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/11(火) 17:29:02 ID:LX1btHTt
 >>626,>>628-632
 死んだ


634 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/11(火) 17:39:41 ID:izgBxp5U
 >>632
 長門の料理モノのSS久しぶりに読んだ。
 長門良い仕事しています!


636 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/11(火) 18:32:22 ID:um4gpEIZ
 >>632
 甘口ひゃっほ~う


637 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/11(火) 18:53:09 ID:PX/Ld88Y
 >>632
 「………甘口」
 ここ萌えたぜ…GJ!


639 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/11(火) 18:59:44 ID:xK+emzCD
 僕もうお腹いっぱいです。


642 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/11(火) 19:08:39 ID:qr1X0p+G
 >>626>>628-632
 素晴らしいカレーSSだぜGJ!!
 続編wktk


644 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/09/11(火) 19:29:53 ID:3LJ9tj13
 頼む。カレーSSの続編を是非。


645 :快速いわき行き:2007/09/11(火) 19:46:13 ID:k2l0izp6
 >>626,>>628-632GJです。
 >数スレ前に出てたエプロン姿の長門
 ひょっとしてこれは俺が作った奴?

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(舟)
 結果の部分ではなく、過程の部分の大事さを知る、いい機会になりましたな。

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「輝いていたハルヒのレス」リスト一覧:総合SSSS・長キョン改変ガイドライン

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引用元:長門有希に萌えるスレ 103冊目

コメント

「ワンダリング・シャドウ」で有希は料理も上手、とハルヒが評する場面があるんですが、どうもどのSS見ても完璧にスルーされてるようで・・・

>Anonymousさん
きっとそのあとの料理大会で長門の料理上手がハルヒの中で確定するんですよ。
つまりこれは『ワンダリング・シャドウ』以前の話という位置付けなんでしょう。

…と、フォローしてみる。

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