2007年08月22日

(SS)長キョン「ユキノシヅク」

勝手に今日輝いていたハルヒのレス:

-----------------------------

388 :SS ユキノシヅク:2007/08/17(金) 01:37:18 ID:8X1HFYZX
 SOS団で過ごす二度目の冬。
 俺達は例によってクリスマスパーティーを開いていた。
 元々は去年同様、長門の部屋でやる予定だったのだが、数日前の「都合が悪くなった」との長門の言葉により、急遽、開催場所はSOS団の活動拠点たる文芸部室に変わった。
 普通に考えて、こんな夜遅くまで(といってもまだ九時台だが)生徒が学校に残っていてはいけないはずなのだが、不思議と教師に見咎められることもなく、俺達は放課後から今現在までひたすら騒ぎ続けていた。
 そういえば昨年の文化祭の時は俺とハルヒがこの部屋に泊り込んだりもしたし、学校側のセキュリティは緩めなのかもしれない。
 まあ何はともあれ、こうして何の懸案事項も持たずに馬鹿騒ぎができるのはこの上なくいいことで、俺はこんな時間がずっと続けばいいと思っていた。
 いや、俺だけじゃないか。
 ここにいる五人は、皆そう思っているはずだ。今の俺にはその確信がある。

 そんなこんなで、俺達の聖夜は更けていった。
 正直、日付が変わる前には帰ろうと思っていたのだが……結局、気が付けば時計の針は二時を回っていた。
 ハルヒと朝比奈さんはとうに夢の中、古泉さえも、いつの間にか椅子に腰掛けたままうつらうつらと舟を漕いでいた。
 まあどうせ明日からは冬休みだ。今更家に帰るのも面倒だし、今日はここで寝ちまおう……
 そう思い、俺も机に突っ伏そうとした。
 ふとその時、一人、窓の外を眺めている長門が目に入った。
 「長門?」
 「………」
 長門は返事をせず、窓の前に立ち尽くしている。
 「どうかしたのか?」
 俺は今一度立ち上がり、団長机の奥、長門の隣に立った。
 「………あ」
 思わず声が漏れた。
 白い結晶が、深々と降っている。
 「雪……か」
 そういや去年のクリスマスイブにも雪が降っていたっけ。
 あれからもう一年も経ったのか。
 「早いもんだな」
 「………」
 長門は何も言わず、ただじっと雪を眺めている。

 消失したハルヒ、眼鏡を掛けた長門、俺の後ろの席の朝倉……
 忘れようとしても忘れることはないであろう、あの稀有な体験。
 幸いにも、今年の冬はあんな具合に世界がイカレちまうこともなく、俺達は淡々と日々を過ごすことができた。
 来年の冬も、再来年の冬も、そうであることを願いつつ、俺は隣に立つ長門の横顔に目をやった。
 いつも通りの無表情……のように見えたが、どこか憂いを帯びているようにも思える。
 長門にも、窓越しの雪景色に何か思うところがあるのかもしれない。
 しかしながら、俺はそんなことに今更驚いたりはしない。
 ほんのわずかな表情の変化、そこに表れる心の機微……それをも含めての『いつもの長門』なのだ。
 そして長門が『いつもの長門』である限り、俺は世界の平穏を実感し、安心することができる。
 今日も…そして明日も、明後日も……この世界は大丈夫だ。
 俺は胸の内にささやかな幸せを感じ、窓に背を向けた。
 流石にもう眠い。


389 :SS ユキノシヅク:2007/08/17(金) 01:38:22 ID:8X1HFYZX
 「長門。俺はもう寝るが、お前はまだ寝ないのか?」

 「…………」

 長門は相変わらず無言のままで、微動だにせず窓の前に立っている。

 俺は少しばかりの違和感を覚えつつも、まあそれだけ外の雪に見入っているのだろうと解釈し、再びパイプ椅子に腰掛けた。
 睡魔に急かされるように、そのまま机に突っ伏す。
 そういえば、去年もこんなことがあったな……
 俺はハルヒの命令でストーブを取りに行かされ、部室に戻ってくると居たのは長門だけで……

 そして……

 ああ、そうだ……

 長門、お前が……カーディガンを掛けてくれたんだっけ……


 ああ、そういや……


 あの時のお礼、言いそびれちまってたな……


 長門……


 一年以上経っちまったけど……


 あの時は……


 あり……が……と……








 「――――」


 ……ん?

 何だ?

 何か、聞えたような……?


 「――――」


 ……誰だ?

 この声は、確か――……


390 :SS ユキノシヅク:2007/08/17(金) 01:39:25 ID:8X1HFYZX


 「……キョン」

 ……きょん?

 「……キョンってば」

 ……何だ…?

 「もう、いい加減起きなさいって!」

 耳元で大音声が鳴り響く。
 途端、世界に光が差し込み、ぼやけた視界に見慣れた輪郭が映る。
 眠い目をこすると、次第に世界がはっきりしてくる。

 「ようやく起きた? ホンット、あんたってば寝ぼすけなんだから」
 俺のよく知る、我らが団長様の顔がそこにあった。
 「……よう、ハルヒ」
 「よう、じゃないわよ。もう十時よ!?」
 何と。どうりで窓からこれでもかと言わんばかりに明るい光が差し込んでいるわけだ。
 だがまあ、昨日寝た時間を考えれば妥当な起床時間だと思うがな。
 「何言ってんのよ。団長を差し置いてぐうすか寝てるなんて団員にあるまじき懈怠だわ。あたしが起きた時には、古泉くんもみくるちゃんもちゃんと起きてたってのに」
 部屋を見れば、俺以外の団員二名が微笑みを称えて俺とハルヒを見ていた。
 なんとなく気恥ずかしさを感じる。
 ただ寝てただけだってのに、なぜだろう。

 「さて、キョンも起きたことだし今日はここでお開きにしましょ。あたしも早く家に帰ってシャワーとか浴びたいし」
 それは俺も同感だった。冬とはいえ、暖房の効いた部屋で寝るとそれなりに汗もかいている。
 何より、椅子に座ったまま寝たもんだから身体の節々が痛い。
 家の風呂にのんびり浸かって、それからもう一眠りするとしようかね。
 「あんだけ寝たくせにまだ寝るの? ホントにぐうたらなんだから」
 仕方ないだろう。あんな姿勢で寝て完全に睡魔を撃退できるのはお前ぐらいだ。
 「まあ、いいわ。明日からまたSOS団の活動だから、今日中に十分休養を取っておきなさい」
 団長のありがたいお言葉を受け、俺達はぞろぞろと部室を後にした。


391 :SS ユキノシヅク:2007/08/17(金) 01:40:38 ID:8X1HFYZX
 「そういえば、あたし学校に泊まったのって初めてです。なんか、不思議な感じ……」
 まだ少し眠そうな目をこすりながら、朝比奈さんが呟いた。
 「こういう経験も学生ならではですね。今しか出来ないという意味では、これぞ青春の醍醐味とも言えますね」
 相変わらず何かよくわからんことを言いながら、古泉が悦に入っている。
 「確かにこういうのも楽しいわよね。次は夏に泊まりましょうか。肝試しもできそうだし」
 SOS団限定スマイルで、嬉しそうに提案をするハルヒ。
 それを聞いた朝比奈さんは顔を青くし、古泉は「それはいいですね」といつものようにイエスマンぶりを発揮し――……

 ……ん?

 「? どうかしたの?」
 不意に立ち止まった俺に、怪訝そうな顔をしてハルヒが尋ねる。
 「あ、いや……何でもない。うん、何でも……ないんだ」
 「ふうん? ならいいけど」
 ハルヒは進行方向に視線を戻すと、さっさと前を歩き出した。

 ……なんだろう。

 何か、忘れているような……

 ……いや。

 気のせいだ。

 まだ半分寝ぼけてるんだろう。
 きっとそうだ。

 俺は頭をぶんぶんと振って、再び歩を進めた。

 ふと、校門のあたりに制服姿の女子生徒が立っているのに気付いた。
 今日から冬休みだが、きっと部活か何かで来たのだろう。
 その少女は小柄で、朝比奈さんと同じくらいの背丈だった。
 少しシャギーの入ったショートカットが、端正な顔立ちによく似合っている。

 俺はそれ以上、特に気に留めることもなく、そのままその少女の横を通り過ぎた。

 「――――」

 ……?

 今、何か――……

 心に何かが引っかかるような感覚を覚え、俺は後ろを振り返った。

 しかし、今まさに俺が横を通り過ぎたはずの少女の姿はどこにもなかった。


392 :SS ユキノシヅク:2007/08/17(金) 01:41:39 ID:8X1HFYZX

 「…………」

 俺が呆然と立ち尽くしていると、ハルヒがまた声を掛けてきた。
 「ちょっとキョン、さっきからどうしたの? ひょっとしてまだ寝ぼけてるわけ?」
 「……ハルヒ。今、そこに女の子が立ってたよな? ウチの制服を着た」
 「……へ? 誰も……いなかったと思うけど」
 キョトンとした顔をするハルヒ。
 俺はすかさず他の二人にも同意を求めたが、古泉も朝比奈さんも、不思議そうに首を傾げるだけだった。

 俺の幻覚だったのか……?

 いや、だが……

 「あ、雪」

 ハルヒの声に空を見上げると、ぽつぽつと、白い塊が降り始めていた。


 そうそれは、まるで……


 「……キョン? あんた……泣いてんの?」
 「え?」

 思わず目元に手をやる。
 指先につく、わずかな水滴。
 それは溶けた雪ではなかった。


 ……俺は、泣いていた。


 「あ、あれ……?」

 涙が。涙が。

 とめどなく、溢れてくる。

 流れる雫は頬を伝い、地面に落ちて、雪に混じる。

 空から降る雫。

 俺の目から、流れる雫。


393 :SS ユキノシヅク:2007/08/17(金) 01:42:47 ID:8X1HFYZX


 ……何でだ?


 何で、俺は――……


 こんなにも、悲しいんだ?


 わからない。


 わからないけど、ただ……悲しい。


 「――――」


 ああ……そうだ。

 その時ふと、俺はさっき聞えたはずの言葉を思い出した。

 俺は涙をぬぐい、その言葉をなぞるように呟いた。


 “ありがとう”


 fin.


394 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/17(金) 01:44:57 ID:8X1HFYZX
 以上です。
 一回のレスで思いの外多くの量が投稿できたので、6レスで済みました(^^;


395 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/17(金) 01:48:27 ID:FkFl4n7/
 GJ
 この手のストーリーは結構久しぶりだな

 それと、目の辺りから出てるこの変な汁は何だ


396 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/17(金) 01:52:59 ID:P/IXD84Y
 >>394
 急「…最高だな」
 穏「最高ですね」
 主「有希ちゃァァーーーッっんっっ!!!」
 GJ!


397 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/17(金) 01:55:57 ID:abhJfV08
 切な過ぎる(つд`)


398 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/17(金) 02:15:33 ID:MHxx869p
 消えてしまうエンドはやめようぜ・・・悲しすぎる・・・

-----------------------------

(舟)
 長門消滅エンドなSSは切なくなりますな。

-----------------------------

「輝いていたハルヒのレス」リスト一覧:総合SSSS・長キョン改変ガイドライン

-----------------------------

引用元:長門有希に萌えるスレ 99冊目

コメントする

コメント投稿に関する注意事項
・当ブログでは、コメント表示にブログオーナーの承認が必要です。承認されるまでコメントは表示されませんので、しばらくお待ち下さい。
・アクセスが殺到して非常に混雑した時などに、SQLエラーが生じるケースがあります。「コメントを受け付けました。」と表示されても、コメントが記録されていない場合がある点、ご了承下さい。

マイクロアドBTパートナーでおこづかいゲット!