(SS)九曜キョン「九曜たんを飼おう」
勝手に今日輝いていたハルヒのレス:
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188 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/11(土) 23:56:57 ID:kUQqn92L
九曜たんを飼おう
気がついたら、俺の家にペットが一匹増えていた。
それがこいつ……犬の「九曜」だ。
ああ、そうだ。膝にシャミセンを乗せて、ボーっと座っている周防九曜がそれだ。
姿は人間だが、紛れもなく犬だ。そういうことにしておいてくれ。証拠ならある。
ほら、頭に黒い犬の垂れ耳がついてるし、スカートのお尻の所には、ふさふさした
しっぽがついているだろう? これは犬だ。うん、疑うことは許されない。
「九曜、今日も散歩に行くぞ」
「…………行く…………」
パタパタとしっぽを振って、俺の方へ寄ってくる九曜。こいつは飼い始めた頃から
感情を表情に出さない奴だったが、最近、しっぽの振り方でうれしがっている時は
わかるようになった。
散歩の時と、食事の時は、必ずリズミカルなスウィングをしてくれる。この辺は、
普通の犬となんら変わるところはないようだ。
九曜の首についている革の首輪に、リードをつけて……さ、外へ行くとしよう。
「…………わん…………」ぱたぱた
うちに来た時点で、九曜はしつけの行き届いた、行儀のいいわんこだった。
今も、俺の右斜め後ろを、黙ってトコトコとついてきている。
……個人的には、犬耳をつけた九曜の首に首輪とヒモをつけて散歩するってのに、
彼女が四つんばいじゃなく、普通に二足歩行しているというのが、なんだかすごく
もったいない気がしてしょうがないのだが……いや、これは妄言だ。忘れてくれ。
189 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/11(土) 23:59:10 ID:kUQqn92L
九曜をつれて散歩していると、同じく犬を散歩させているブリーダーと遭遇する
ことがよくある。
今日最初に出会ったのが、愛犬「会長」を連れた喜緑さんだ。
「あら、こんにちは、キョンさん、九曜さん」
にっこり微笑む、百合の花のように可愛らしい喜緑さんとは対照的に、「会長」は
仏頂面で、メガネをくいっと押し上げる仕草を見せた。飼い主に似つかわしくない
大型犬で、これをボディーガードにつれていれば、喜緑さんに悪い虫がつくことは
未来永劫ないだろう。うちの九曜だって、会長に一睨みされて、さっと俺の後ろに
隠れたぐらいだから。
「あらあら、会長、あまりおいたをしてはいけませんよ」
苦笑しながら、飼い犬をしかる喜緑さん。しかし会長がフンと鼻を鳴らし、制服の
胸ポケットからタバコを取り出し、一服始めやがった。
「もう、この子ったら……今日の晩ご飯、ワカメ尽くしの刑にしますよ。
ごめんなさいね。今、ちょうど反抗期で……がんばって調教しているんですけれど」
「いやいや、気にしないでいいですよ。九曜も別に怒ってないよな?」
「…………(こく)」
喜緑さんと会長のコンビと別れ、俺たちは散歩に戻った。喜緑さんの「調教」って
どんな感じかなあ、とか、空想の翼を羽ばたかせながら。
……ああ、そうだ。みんなもう気付いてるだろうな。
この街には「九曜」や「会長」のような、珍しい犬を飼っている奴が他にもいる。
190 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 00:01:28 ID:kUQqn92L
「ちょっとキョン! 今日は遅かったじゃないの、何チンタラしてたのよ!」
ハルヒが盛大に怒鳴り散らしながら、しっぽをちぎれそうなくらいぶんぶん振って、
こっちに走り寄ってきた。
飼い主である古泉は、完全に犬に引っ張られていた。何やってんだか。そんなじゃ、
飼い主としての威厳を示せないぜ。
「そうは言いますがね、加減がなかなか難しいのですよ。下手に怒らせると彼女は、
閉鎖空間を発生させてしまいますから」
ああ、そういや言っていたな。犬小屋の下に穴掘って、そこに隠れるんだっけ?
でもそれを「閉鎖空間」と呼ぶのは大袈裟だと思うぞ?
「最近は、それも減少傾向にあるのですがね。前に一度だけ発生した、世界改変の
悲劇は、繰り返すわけにはいきません」
ああ、怒ったハルヒが、苗を植えたばかりの花壇をめちゃくちゃに踏み荒らしたっ
ていう、あの事件か? ……なあ、やっぱり世界改変は大袈裟だと思うぞ。
「キョン、古泉君! 二人で何をこそこそ話してんのよ! 小声でぼそぼそ、馬鹿
みたい! 暗いことしてないで、遊びましょ。もちろん九曜さんも一緒にね!」
ハルヒが俺たちの襟を後ろからぐいっと引き、無理やり興味を自分に向けさせた。
その目はらんらんと輝いていて、俺が嫌と言っても、離してくれそうにない。
同じく後ろ襟を掴まれている古泉が、苦笑しながら言う。
「この散歩の途中に、あなたと会って遊ぶようになってからは、彼女のストレスが
減っているらしく、閉鎖空間の発生も少なくなっています。
こちらとしても心苦しいですが、よければ、今日もちょっと遊んであげて下さい」
やれやれ……ま、それは構わないがね。飼い主同士のコミュニケーションを疎かに
する気はないし、九曜の運動にもなるしな。
仕方ない、しばらくの間、いいオモチャになってやるよ。
「オモチャ、ですか……僕としては、涼宮さんがあなたに向ける関心の、五分の一
だけでも分けてもらいたいくらいなのですがね。飼い犬にあまり懐いてもらえない
というのは、どうも……」
古泉が何かぶつぶつ言っていたが、そのあと四人(二人と二匹)で鬼ごっこをして
遊んだ。やはり犬二人(二匹)の運動能力が半端ではなく、俺と古泉の人間様組は
もう惨めなまでに負けまくった。
やがて満足したハルヒ(と古泉)にバイバイすると、もう汗だくだった。
九曜が「……休む……?」と公園のベンチを指差してくれたので、しばらくそこで
横になって休んだ。九曜に膝枕してもらったので、かなりゆっくり休めた。
191 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 00:04:09 ID:kUQqn92L
休憩を終えてしばらく散歩を続けていると、長門に遭遇した。
長いリードを手に持って歩いているから、やはり犬の散歩なんだろうが、肝心の犬の
姿が見当たらない。
「よう長門、お前も犬の散歩か」
「そう」
「で、肝心の犬は? もしかして、リードをはずして、逃げられたのか?」
「……違う」
長門は無表情に、自分の背後、五メートルぐらいの植え込みを指差した。
見ると木の陰から、太い眉を八の字に垂れさせた長門の飼い犬が、顔だけを出して
こっちを見ていた。
「こ、こんにちは……キョン君」
「何やってんだ、朝倉?」
俺が聞いても、犬の朝倉は、困ったように「あはは」と笑うだけで、木の陰から出て
こようとしない。
「たぶん、恥ずかしがっている」
長門が、静かな声で言う。
恥ずかしがっている? 昨日まで、普通に散歩の時挨拶してただろ? 何で急に。
「昨日の晩、私は飼い犬について、ある一つの主張を持った。その主張に、私の飼い
犬である朝倉涼子を同調させようとした。けれど、彼女はその主張を受け入れられず、
現在の状態に至っている」
主張? それのせいで朝倉は木の陰に隠れてんのか? どんな主張だ、それは。
「ペットに服を着せるのは悪趣味だ、という主張」
……………………。
長門の言葉に、俺と九曜の動きは凍りついた。
えーと、ちょっと整理するぜ。長門はペットに服を着せるのは悪趣味だと考えた。
そしてその考えに自分のペットを同調させようとしたってのは、つまり朝倉が服を
着ているのは悪趣味だから駄目って言ったってことで……。
で、ペットは無力だ。飼い主が服を着せるも脱がすも、まあ自由だな。その結果、
朝倉が俺たちから隠れて、出てくるのを拒んでいるということはだ……。
九曜が突然、とことこと朝倉の隠れている木のところまで歩いていき、おもむろに
木の陰をのぞき見た。
「…………すっぱだか…………」
「いやあああああああ!」
九曜が俺に向かってボソッと報告した瞬間、絹を裂くような悲鳴がした。
俺は長門に「じゃ」とだけ言うと、リードを引っ張って九曜とその場を去った。
「……私――あなたが飼い主で――よかった……」
ああ、そう思ってくれ。心からそう思っていてくれ、九曜。
朝倉には、強く生きてくれと心の中で願う他ない俺だった。がんばれ、朝倉。
192 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 00:06:16 ID:qtuy5lz8
「やあキョン君キョン君、それに九曜さんもっ。今日は絶好の散歩日和だねぇっ」
「こ、こんにちは……キョン君、九曜さん」
次に出会ったのは、鶴屋さんと、そのペットの朝比奈さんだった。
鶴屋さんの家は大富豪で、その生活様式は俺たち庶民と大きく異なっていることは
よく知っていたつもりだが、彼女のペットを知った時には、さすがの俺も魂消た。
まさか、犬でもない猫でもない「牛」を飼って、しかも散歩させているなんて。
「あっはっは、問題は牛かどうかじゃないよ、こんなべっぴんさんを家族にできた
ことが、あたしの一番の自慢にょろっ」
言って自慢のペットの肩を抱く鶴屋さん。輝くような笑顔である。
(そしておでこである)
「あ、え、えっと」とかいってどぎまぎしてる朝比奈さんも可愛らしい。
鶴屋さんは長門と違い、ペットに服を着せて飾る考え方に大いに賛同しているよう
なので、朝比奈さんの服装は毎回異なっている。今日はスカートの丈が短いナース
服で、うん、眼福眼福。
「ふふん、その目つき、キョン君も今日のみくるは気に入ってくれたようだねえ?」
それは愚問ですよ。朝比奈さんを気に入らない瞬間があるもんですか。
「よく言うねえ。でも気に入ったよ! どうだい、今度ウチでみくるの乳搾りを
するんだけど、君も手伝ってくれないかい?」
マジっすか! それは何を差し置いても!
「冗談だよぅ。ちゃんといいお婿さん見つけてからでないと、お乳は出ないさー」
逆カモメ口でニヤニヤする鶴屋さん。俺としたことが、こんな罠にかかるとは。
しかし、聞き捨てなりません。いいお婿さん? そんな奴は俺が許しませんよ。
「あたしもさっ」
朝比奈さんを挟んで、心が通じ合った二人のブリーダーは、固く握手を交わした。
「……………………」
鶴屋さんたちと別れてから、九曜がむっつりと黙ったまま、俺の服の裾を掴んだ。
なんだ、嫉妬してるのか? 可愛いなぁこいつも。安心しろよ、朝比奈さんは綺麗
だけど、俺の一番はお前だから。
「…………なら――いいの…………」
193 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 00:08:38 ID:kUQqn92L
「やあキョン。今日も会ったね」
ついに佐々木の登場である。
佐々木は橘と藤原という、二頭のタイプの違う犬を飼っている。橘が小型犬の雌で、
藤原が大型犬の雄だ。こいつらは妙につんけんして、いまいち俺とは気が合わない。
佐々木が物分りのいい付き合いやすい奴だから、飼い主はペットに似る、という
あれは、やっぱり嘘なんだろうな。
「むむっ、どういうことでしょう、何もしてないのにひどいことを言われたような
気がするんですがっ」
ツインテールととんがり耳をピコピコさせながら、不審げに橘は俺を見ていた。
あー、そりゃ気のせいだから、ガルルルとか言わなくていいぞ回転寿司の甘エビ。
「……その――喩えは――何……?」
ん、不思議そうに聞いてくる九曜のために解説しておこうか。回転寿司の甘エビは、
だいたいシャリ一つに二本セットだろ。それを踏まえて橘をよーく見ろ。
「…………ああ――…………」
納得したらしくポンと手を打つ九曜。対して橘も、言われて喩えの意味がわかった
らしく、今更「んんっ……もう! もう! もう!」と、顔を真っ赤にしている。
「ハン。まったく、毎度毎度茶番だな。無意味な言葉遊びで、勝手に勝ち負けが
決まっていくんだからな。馬鹿馬鹿しいことこの上ない」
俺たちをあざ笑うかのように鼻をならして、わざとらしく肩をすくめてやがるのが、
大型犬の藤原だ。ていうか完全に馬鹿にしてやがるな。こいつはそういう奴だ。
「もうっ、藤原さん! 横から割り込んできて、いきなり失礼なことを言わないで
下さいっ!」
「馬鹿馬鹿しいことを馬鹿馬鹿しいと言って何が悪い。そもそもお前は弱いくせに、
無意味に吠えすぎなんだ。そのエネルギーを少しは思考することに回せないのか?
回し車の中で無意味にただ走っているだけのハムスターのようなお前を見ていると、
同情を禁じえないな」
「なんですってー!(むきぃ)」
やれやれ、こいつらはこいつらで犬猿らしいな。しょっちゅう喧嘩なんかされたら、
佐々木も大変だろ。
「くっくっ。そう思うかい、キョン? だがね、この子らはこの子らで、けっこう
仲良しなんだよ。そういえば話したかな、この間ね、橘さんが子供を産んだんだ」
笑いながら、佐々木は俺たち全員に、巨大な爆弾を落としやがった。
「さ、さ、さささささ佐々木さんっ! そ、それは秘密っ!」
「…………………………フン」
顔をゆでだこのように赤くしてあうあうする橘と、そっぽを向いて、こちらもよく
見ると顔の赤い藤原。
そ、そうなのかお前ら……これは俺も、おめでとうと言わなければならないな。
しかし、まったく気付かなかった……。
「僕もさ、キョン。ある朝気付いたら、可愛い子犬が三匹も産まれていてね。
ウチじゃあさすがにこれ以上飼うことはできないから、みんな養子に出したんだが、
引き取り手を探すのが大変だった。僕も仲が良くないと思っていたから、うっかり
対策をしておかなかったことを後悔したものだよ。
ま、今回の教訓を生かして、この間、二匹とも去勢してあげたんだがね」
…………何と仰いましたか、佐々木さん?
見ると、橘と藤原の表情に、どんよりとした暗いものが浮かんでいた。
「さ、佐々木さんを困らせるわけには……私では、せ、責任を取れない以上……」
「規定事項だ……規定事項なんだ……」
(´;ω;`)ブワッ
同情しかできない俺は……無力だ……。
194 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 00:11:04 ID:qtuy5lz8
なんだかどっと疲れて帰宅した俺たちは、風呂に入り、晩飯を食うという癒しの
プロセスを実行することにした。
犬の入浴ときたら、普通はご主人様が一緒に入って、シャンプーをしてやったり
体を隅々まで洗ってやったりするもんだろうに、この九曜ときたら普通に一人で
入って、普通に出てきやがる。期待はずれもいいところだ。俺の仕事ときたら、
長すぎる髪の毛をドライヤーで乾かすのを手伝ってやることぐらい。
……あ、いい匂い。
晩飯だってそうだ。普通は犬の食事ときたら、餌皿に用意されたものを、床に
はいつくばって直接食うもんだろう。しかし九曜は、まず長い髪を太いポニテに
結って、光陽園の制服の上からエプロンを装備し、晩飯を作るお袋の手伝いを
するところから始める。
こいつのこの格好は実はけっこうツボなのだが、恥ずかしいので面と向かって
誉めたことは一度もない。
「いつも悪いわねえ、九曜さん」
「……いえ――したくて――しているだけ、ですから――お義母様……」
実に謙虚だ。しかし、お母様の字がちょっとおかしいみたいだぞ、九曜。
お袋が煮物を作っている横で、九曜は酢の物用のワカメを、包丁でちょうどいい
サイズに切っていた。とんとんとん、と軽快なリズム。ふと気になってあたりを
見回してみたが、幸いなことに喜緑さんの姿はない。想像力豊かな読者諸君は、
どうか安心して欲しい。
出来上がった夕食を、家族と一緒にテーブルを囲んでいただく。実に和やかな
食事時間である。九曜も口数は少ないが、ちゃんと会話に参加している。
こいつも、もうすっかりうちの一員だ……犬らしくはぜんぜんないが。
「……妹、さん――ほっぺに――ご飯粒――ついてる……」
盛大に食い散らかしている妹の頬から、九曜はひょいと米粒をひとつつまんで、
取り除いてやっている。
「あっ。えへへ、ありがとー、お義姉ちゃん♪」
妹もすっかり九曜のことがお気に入りらしい。でもな妹よ、お前もお姉ちゃんの
表記がおかしくないか?
195 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 00:14:06 ID:qtuy5lz8
夜も更ければ寝なければならない。今日も一日おつかれさんっと、我が至福の
ベッドへともぐりこもうとする。
だが、そこにはいつだって、先客がいるときたもんだ。ベッドの布団が大きく
膨らんでいて、それをめくると、お約束の九曜が丸くなっている。
おいおい、大人しく自分の寝床で寝てくれよ。ちゃんと部屋の隅にダンボールと
毛布を用意してあるだろ。
「…………あれは――窮屈――ここで――あなたと、寝たい…………」
やれやれ。
まあ、今日はちょっとあったかくして寝たいと思っていたし、別にいいか。
ほれ、ちょっと奥の方へ行け。俺が寝るスペースがなくちゃどうにもならん。
九曜は無言でスペースを空け、俺はそこへもぐりこむ。すると、途端にこいつは
俺にぎゅっと抱きついてくる。薄いパジャマのみをまとった九曜の体は温かく、
俺を十分快適にしてくれた。……それ以上に、柔らかさの方が気にはなったが、
それは黙っておく。
しばらく、いい匂いのする九曜の髪を撫でながら、まどろみを楽しむ。
九曜は俺の胸元に頬ずりしながら、耳をぴょこぴょこ動かしたりしていたが、
やがて探るような声で、こう聞いてきた。
「……あなたは――いずれ、私を――去勢、するの……?」
いきなり、何を言い出したのかと思ったね。
「…………佐々木が――橘京子や、藤原にした――ように…………」
ああ、昼間のあれか……ま、ありゃショッキングな出来事だったからな。
今んところ予定はないが、うん、いずれはしなけりゃならないかもな。佐々木の
二の轍は踏みたくない。子犬が産まれても、シャミとお前で精一杯だろうから。
「…………そう…………」
寂しげにつぶやいて、顔を伏せる九曜。やっぱり嫌なんだな。
「……ううん――嫌というわけじゃ――ない……。
…………むしろ、あなたに――迷惑をかけることの方が――嫌…………。
……だから――あなたがそうすべきだというなら、私は――受け入れる……」
そこまで言って、しかし九曜は「でも」と続けた。
「……健康な体で生まれたからには――せめて一度は――子を、産みたい……」
俺に抱きついたまま、顔を上げて、俺の目を見つめて、九曜は言った。
196 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 00:16:13 ID:qtuy5lz8
俺は、この愛すべきペットを強く抱擁し、慰めるようにその背を撫でた。
こいつも、自分の血を引く家族を一匹も残せず、寿命を終えるのは嫌なのか。
そりゃあ……そうだよな。
俺は自分が責任を持つべき命が、今まさに腕の中にいることを改めて認識し、
しばし考えた。
一度は、か。うん、それくらいならいいだろうさ。
うちでは飼えないが、大事に育ててくれる里親を探すぐらいの苦労なら、喜んで
買ってやる。その程度なら迷惑じゃない。お前が俺のことを考えてくれるのなら、
俺だってお前にしてやれることをするまでだ。
あ、待てよ! 里親探しより先に、お婿さん探しをしないといけないな。これは
難題だぞ。九曜に相応しい婿を、どこから探してくりゃいいんだ。
うちの子が一番派の俺としては、ちょっと見つけられるか不安でしょうがない。
俺がそんな弱音を九曜に聞かせると、彼女は困ったような顔をして、俺の胴体を
抱きしめていた腕をほどいた。
そして、手のひらをそっと俺の頬に這わせると、ぽつりと言った。
「……私――あなたの、子供が――産みたい……」
言い終わると、俺が何か反応をする前に、素早くその顔を接近させてきた。
彼女の白い顔が、俺の視界を一瞬で覆い、唇に……ぺろり……という、柔らかい、
濡れた感触。
「………………ダメ………………?」
この世界が、結局どういう世界で、誰がこう望んだのかは、わからない。
でも、少なくとも今更ながら気付いたことがある。ここでは、ペットを嫁さんに
迎えることは、特におかしいことではない、という認識だ。
うん、まあこんな具合で、俺に九曜のお婿さんを見つけてやる気がもう完全に
なくなってしまった以上、色んな意味で、俺は一生こいつの面倒を見てやらにゃ
ならないんだろうな。
そりゃもちろん嫌じゃなく、むしろ大いに歓迎したいことなんだが、やっぱり
何というかなぁ……やれやれだ。
おわり
197 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 00:19:03 ID:M9h9rrzJ
長文乙!
しかしまぁなんというカオスwwww
198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 00:19:25 ID:qtuy5lz8
天蓋領域『えーっと、これを読み上げるの? なになに……?
「出来心でやった。後悔はしていない。長門、朝倉、佐々木、橘、ポンジーには深くお詫びする」
だってさー。こんなんで許してもらえるのかな? あははー』
199 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 00:39:18 ID:5yq5g09h
GJwwwこれはいい九曜が再構成した世界www
200 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 01:00:34 ID:2eBmbuXG
「九曜」犬はもちろんだが、「朝倉」犬にも萌えた
ともかくGJ!!
201 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 05:24:18 ID:5Ike1KUa
くーちゃんとキョンが…。
ああもう、羨ましいぞコンチクショウ!
204 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 17:09:44 ID:HtiD54Dn
>>188-196
なんという……なんというSSだwwwwww
GJ以外の言葉が見つからない
207 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 21:35:32 ID:XvsTyIB0
>>188-196
GJ!
208 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/12(日) 23:50:53 ID:qtuy5lz8
おまけ
「あ、キョン君と九曜さんなのね」
「よう阪中、お前も犬の散歩か……って……」
よく見ると、阪中の首に、首輪がついていた。
そこからは当たり前のようにリードが延びていて、そのもう一端はどこに
つながっているかというと、後ろ足で器用に二足歩行をしている、ルソー
(犬)の前足にちょこんとかけられていた。
「阪中……お前が犬で……ルソーが飼い主なのか?」
「そんな当たり前のこと、いまさら確認しなくてもいいと思うのね。
あ、ごめんね、ご主人様が疲れちゃうから、早く行かないといけないのね。
それじゃ行くのね、ご主人様」
「わん」
阪中の後ろを、小さなルソーがチョコチョコと二足歩行でついていく。
もちろん、それは少しも滑らかな動きじゃない。普段四本足で歩いている
ごく普通の犬が、芸としてムリヤリやらされている二足歩行の、逃れ得ない
ぎこちなさがある。
ちょこちょこ。よたよた、ちょこちょこ。
ぽろり。
歩くことに集中しすぎていたのだろう、ルソーの手(前足)から、リードが
ぽろっと落ちる。
「くーん」
悲しげなご主人様の鳴き声を聞いた阪中が、ルソーの手にまたリードの端を
引っ掛け、「がんばるのねっ。家はもう少しなのね」とか言っている。
その後も、この足元がよたよたとおぼつかないご主人様と、それに気を使い
何度もリードをご主人様に持たせ直す飼い犬の大逆転コンビは、俺と九曜に
見送られ、じわじわと去っていった。
「なんか、癒されるな……あれ」
「…………かわいい…………」
(ぽややややや~ん)
209 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/13(月) 00:01:11 ID:nZUq/3fO
>>196
GJ!
動物全員着ぐるみに入ってるような感じを想像した
これは萌えるww
210 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/13(月) 00:05:16 ID:5yq5g09h
長身の阪中が小さい犬コロに首輪付けられて散歩
∧_∧
( ;´∀`)
人 Y /
( ヽ し
(_)_)
211 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/13(月) 00:16:11 ID:USJUpmBE
さらにおまけ。
古泉がハルヒを散歩させていると、黒塗りの車が寄ってきて停車し、後部座席の窓が
ゆっくりと下がった。
「こんにちは、古泉君、涼宮さん。今日はお散歩?」
「おや、誰かと思ったら森さんじゃないですか。こんにちは。
今日はこれからお仕事ですか?」
「いいえ、私もあなたと同じよ。最近犬を飼い始めたから、散歩をさせているの」
「……は?」
車で散歩とはどういうことだろう、と首を傾げる古泉に、森はくすりと笑いかける。
「あら、いけない。そろそろ戻らなくちゃ。それじゃあね、古泉君、涼宮さん。
今度一緒に、ゆっくりお散歩しましょう。……出してください、新川」
「かしこまりました」
ブロロロ、とタイヤを回転させながら、走り去る自動車。それはスピードを上げ、
すぐに車道へ滑り出し
「……って森さーん! と、停まってくださーい! 多丸氏兄弟が引きずられて
ボロ雑巾のようにあああああ」
もう九曜関係ないね……ごめん。
212 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/13(月) 13:59:51 ID:hXUu0TaY
カオスすぐるwww
213 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/08/13(月) 15:48:09 ID:MPEjXyyy
森さんひでーwww
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(舟)
飼い主とペットの組み合わせと、それを基にしたそれぞれの話が面白いなぁ。ペットのハズの九曜が既に、キョンの母と妹からは嫁認定されているってのも。
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「輝いていたハルヒのレス」リスト一覧:総合/SS/SS・長キョン/歌/改変/ガイドライン
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コメント
このカオスっぷりはGJ過ぎる
個人的には長門と朝倉は野良猫(or半野良)の方が…
Posted by: 通りすがり | 2007年08月16日 12:53