2007年05月02日

(SS)長門有希のエラー

*注意:この項には、いじめ・暴力表現が含まれています。その種の内容が嫌いな方は、見ないことを推奨します。

勝手に今日輝いていたハルヒのレス:

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416 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 00:41:22 ID:pc5EIHO3
  「好き」
 勇気を出して搾り出した言葉に、彼が答えてくれたことがうれしかった。
 そっと重ね合わせた唇の感触は、一生忘れないだろう。
 だから、その時の一連の記憶も一生忘れない。
 わたしが手紙で彼を部室に呼び出したこと。
 わたしが、言い出せない告白の代わりに涙さえ流してしまったこと。
 そんなわたしを優しく慰めてくれた彼のおかげで、彼に想いを伝えることができたということ。

 「おい長門?」

  わたしを現実に引き戻したこの男性が、彼だった。
 今日はSOS団の市内探索の日。
 そして今日も情報操作でグループ分けのクジを操作し、わたしは今彼と二人きりで図書館に来ている。
 わたしが本に集中するよう気を利かせてくれたのか、彼はわたしと別行動をとった。
 ポツンと取り残されたわたしは、巨大な本棚の中の一冊を取り出し、広げた。
 これは以前読んでいた本の下巻。ぜひ読みたいと思っていた。
 だけど、今は本を読むこと自体が面白いと思えなかった。
 本を読む時間なんかより、彼と二人でいる時間のほうがもっと面白い。
 こんな表情の無い本なんかよりも、笑ったりしている彼を見ていたほうが、ずっと楽しい。
 彼が笑顔を見せてくれるから、いつからか、あれほど苦手だった笑顔作りを
 わたしは自然にできるようになっていたのだ。

 「おい長門。」

  すぐ隣から彼の声。
 わたしは、広げてみたものの一ページも読んでいない本を本棚にしまう。

 「何。」

 「ハルヒから電話だ。喫茶店に集合だと。」

  本来の集合時間よりも30分も早い。
 まるで、涼宮ハルヒの電話がわたしと彼の時間を邪魔しているかのようだった。

 「・・・わかった。」

  しかし、ここは妥協しよう。
 わたしは彼から20センチ離れた隣で、彼の広い歩幅に合わせようと
 一生懸命歩行スピードを速くしようと努力していた。
 彼と手をつなぐわけではない。
 彼と腕を組むわけではない。
 それをすることはできない。この20センチがわたしと彼との間の距離。
 これ以上近づくことはできないし、離れることはしなかった。
 たとえ20センチの隙間があっても、できるだけ彼の近くにいたい。
 そして、感情の無いインターフェースのわたしに
 これまでしてくれたように、もっと感情を与えて欲しい。
 「好き」だという気持ち
 「楽しい」という気持ち
 それらを与えてくれたのはすべて彼。
 きっとこれからも、彼はわたしを「楽しく」させてくれると、ずっと信じていた。


417 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 00:43:01 ID:pc5EIHO3
  次の日の放課後
 わたしはいつも通り一番に部室に来た。
 二番目に部室に来るのは、十中八九彼だ。
 次に朝比奈みくるが来るまでの数分、いや、数秒の間だけでも
 彼と二人っきりになりたかった。
 わたしは一人きりの部室で、座して本を読みながら彼を待つ気にはなれなかった。
 落ち着かなかった。
 なにもない部室の中を右往左往してみたり、意味も無く棚の中を漁ってみたり。
 そんなことをしているうちに、部室の扉は開けられた。

 「・・・。」

  わたしも無言、扉から入ってきた彼も無言。
 だけど、わたしの予想通り、扉から入ってきたのが彼であったということが
 わたしはうれしかった。

 「・・・長門。」

  横目でしか見えていなかった彼に突然話しかけられ、わたしは彼の方向に振り向く。
 その時、首をひねって痛かったことなんて、全く気にならなかった。
 それはたとえるなら、1ヶ月音沙汰無しのオブジェも同然だった自分の携帯電話に
 突然友達からメールが来た。
 ・・・そんな感じだった。
 その内容は、宿題を教えて欲しいだとかアドレスを変更しただとか
 そんな変哲もないものである確率がほとんど。
 だけど、わたしがそんなメールを心臓を跳ね上がらせながら見るのと同じようにして
 わたしは今、彼の半開きの口からどんな言葉が出てくるのか、待っていた。

 「あ・・・あのな、今度の日曜日、暇か?」

  心臓の跳躍力が倍になったことを全身で感じる。

 「・・・暇。」

  わたしは、即答した。

 「そ・・・そうか、じゃあ・・・」

  彼は、ところどころでセリフをつっかえながら、わたしを買い物に誘う言葉を一生懸命
 喋ってくれた。
 わたしはそれらを、一言一句聞き逃さず、真剣に聞いた。
 あの時、涙を流しながらのわたしの告白を聞いてくれた彼のように。

 「・・・うれしい。」

  彼の言葉を聞き終え、わたしの口から出た言葉に、彼はもちろん、言葉を発したわたしさえ唖然とする。
 上手く言語化することができなかった感情を、一言で表すとこうなった。
 それだけのことだった。

 「・・・そうか。」

  軽く赤くなっている彼の横顔を、いつまでも見ていたかった。
 だけど、そんなわたしに横槍を入れるかのように割り込んできたのは
 誰かの気配だった。


418 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 00:45:42 ID:pc5EIHO3
 わたしは、ずっと眺めていたい彼の顔から視線を引っぺがし、それを部室の扉へと向ける。
 そこにあったのは、人が目を覗かせるには充分すぎるくらいの隙間が開いた扉だけだった。
 聞こえるのは、誰かの走るような足音。
 足音はだんだんと小さくなり、消えてしまった。

 「・・・長門・・・?」

  わたしの尋常でない様子を悟ったのか、彼はそう聞いた。

 「・・・なんでもない。」

  気のせいだと思いたい。
 いや、気のせいのはずはない。
 だけど、気のせいだと思うしかなかった。

  しばらくすると、朝比奈みくるが来て、古泉一樹が来た(彼はバイトがあると告げた後、部室から去った)。
 それからはいつも通りの日常だった。
 ただ、涼宮ハルヒが部室に来なかったこと以外は


419 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 00:46:31 ID:pc5EIHO3
  次の日からは、涼宮ハルヒは部室に来た。
 昨日の欠席理由を問いただす彼に涼宮ハルヒは、「うっさいわね、なんであたしのプライヴェイトを
 あんたに教えなきゃなんないのよ。」と、睨みつけながら答えた。
 よく考えれば、この時点でわたしは気づくことができたのだ。
 いや、もしかすると気づいていたのかもしれない。
 だけど、わたしはたとえ目を潰してでも
 その真実から目を背けたかったのだ。


  一週間後の日曜日
 今日は彼と二人で買い物に行く日だった。
 朝食は家で食べて、その後に合流するとの話だった。
 一緒に朝食をとることもできない。
 だけど、これがわたしと彼の距離なのだから、仕方がないとあきらめ続け
 今ではもうその感情もほぼ無痛化していた。
 わたしは、買い置きの缶カレーを鍋に開け、火にかけた。
 そしてそれが完成するまでの間、本でも読もうかとそれを手にとったときだった。
 突然わたしの携帯が鳴り始めた。
 彼からだろうか、ひょっとして、用事ができて今日の買い物をキャンセルするという連絡だろうか。
 そう考えるだけで、わたしの心臓は鎖で締め付けられるような感覚に陥った。
 もしそうだったなら、もし受話器から聞こえてきたのが彼の声で、もし謝られたりしたのなら。
 そう、たとえるならそれは積み木。
 一週間、積み上げ続けた積み木を、足元から崩されるような気分になるに違いない。
 わたしはおそるおそる携帯をとり、震える指で通話ボタンを押した。

 「もしもし?」

  通話相手の声が、静寂の中に小さく響いた。


420 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 00:47:58 ID:pc5EIHO3
 「・・・。」

  わたしは、いつもそうするように、電話の相手に対して無言で答える。
 今はその人物と、あまり話をしたい気分ではなかった。

 「ねえ有希、聞いてる?」

 「・・・聞いている。」

  仕方がないので、わたしは電話の向こうからの涼宮ハルヒの声に応えた。

 「よかったぁ~、いや、もうあんた家出ちゃったのかと思ってさぁ。」

  それならそもそも通話に応じることができるはずがないだろう。
 なにを言っているんだ?
 そう思った次の瞬間。
 全身に脳内物質が分泌されたような感覚に陥った。
 急な無重力感。寝ている時に時々起こる落下の感覚のそれに似ていた。

  そして、再びわたしは現状の異常さをあらためて察した。
 どうして、涼宮ハルヒはわたしが「家を出ちゃったのかと思った」のだ?
 どうして?どうして?どうして?どうして?ドウシテ?


421 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 00:49:47 ID:pc5EIHO3
 だって、わたしが今日の朝出かけることは、わたしと彼しか知らない。
 彼が涼宮ハルヒに教えたというのは考えられない。
 だって、買い物に行く約束をした日、彼は言った。
 「このことは誰にも内緒」だと。
 なら、どうして涼宮ハルヒは・・・。

 「ねえ有希。実は来週ね、野球大会に出ようと思うのよ。SOS団で。」

 「・・・そう。」

  わたしは無愛想な返事を返しながら、頭の中を精一杯整理していた。
 そういえば、不審な点はあったのだ。
 わたしが彼と買い物の約束をしたときから、古泉一樹は毎日のようにバイトに行っていた。
 そしてそのバイトの内容を、わたしは知っている。
 あの日、彼と二人きりの部室の外にあった、一つの気配も正体も・・・。

 「で、その練習をするから、今から高校のグラウンド集合ね。」

 「で・・・でも・・・。」

  わたしは口ごもる。
 その瞬間だった。

 「ああ、そう言うと思って、実はあたし」

  その後に続く言葉は、永遠と比較しても引けをとらないくらいの間
 わたしの時間を凍らせた。

 「もうあんたの部屋の前、来てるから。」


422 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 00:51:31 ID:pc5EIHO3
  その瞬間通話が切られ、怒気に覆われた涼宮ハルヒの声が聞こえなくなると同時に
 わたしの家のインターフォンが鳴った。
 ピンポーン
 わたしは、それに対応しようかどうか迷う。
 ピンポーン
 二度目のインターフォンは、まるでわたしの判断をせかすかのようなものだった。
 ピンポーン
 三度目のインターフォン。
 ピンポーン
 ピンポーン
 ピンポーン
 ピンポーン

 「い・・・嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!」

  自分の口からこんな声が出たのが信じられなかったが、それもうなづける。
 自宅のインターフォンがここまで不快な音に聞こえたのは、初めてだった。
 もうやめて、その音をやめて。
 そんなわたしの想いを裏切るように、インターフォンは鳴り続ける。
 わたしはついに妥協し、糸の半分切れた操り人形のように
 ふらふらと玄関にむかい、鍵を開けた。

  瞬間、扉は乱暴に開かれ、その向こうには
 金属バットを片手に持った涼宮ハルヒが立っていた。

 「さ、有希。野球やろうか?」

  ライオンに優しくあやされる小動物の気分だった。


423 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 00:53:23 ID:pc5EIHO3
  髪の毛を乱暴につかまれ、わたしは家から連れ出された。
 服だけは着替えていたが、携帯も持たずに、家に鍵もかけずに、コンロ火も消さずに
 わたしは涼宮ハルヒに引きずられるように連れて行かれた。
 すぐに到着した。そこは、高校のグラウンドだった。

 「さ、始めるわよ。はいグローブ。」

  涼宮ハルヒがわたしに投げた黒い物は、野球で使うグローブだ。
 はめ方もわからない。ただ、手袋のように手にはめるということだけは知っている。

 「始めようか、まずはノックね。」

  言いながら涼宮ハルヒはボールを軽く真横に放った。
 それは、寸分狂わず涼宮ハルヒのバットによって捕らえられ
 まだグローブもつけていないわたしの足を直撃した。

 「・・・ッ!」

  思わず声が漏れ、わたしはヒザを襲う激痛をかばうようにそこを抑える。
 すると、すかさず聞こえてきた豪快な金属音と同時に、ホールが今度はわたしの
 頭に当たった。

 「ほらほら!ちゃんと捕りなさいよ!
  言っとくけど、ちゃんと捕るまで帰らせないからね!」

  言いながらまた涼宮ハルヒはボールを投げ、わたしめがけてバットで打った。

 「ぐっ!・・・ぅ・・・!」

  今度はお腹。
 ミゾオチを叩かれた時特有の呼吸困難がわたしを襲う中、また金属音が。
 それが何度も何度も繰り返され、もう何度それをやったかもわからなかった。

 「あ~あ、もうボールなくなっちゃったわよ。
  有希ったら案外どんくさいのね。
  ほら、そこら中に落ちてるボールさっさと拾いなさい。」

  ボールはすべてわたしの体に当たり、跳ね返ったため
 わたしの近くに落ちていた。拾うのは楽だったが、それ以上に気になることがあった。
 腕時計も携帯も持たずに出かけたわたしが時間を知る手段は少なかった。

 「今・・・何時?」

  わたしは、涼宮ハルヒに小声で聞いた。
 思えば、この距離からこんな小声が涼宮ハルヒまで届くとは思えないのだが
 なぜかそれはちゃんと涼宮ハルヒに聞こえていたようで、その時の鬼のような凝相の涼宮ハルヒを
 わたしは忘れることができるのだろうか。

 「なんでそんなことが気になんの?」

  あきらかに不愉快そうに涼宮ハルヒは言う。


424 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 00:54:31 ID:pc5EIHO3
 だが、すぐに言葉をつなげた。

 「あ、キョンとのデートか。
  そっかぁ、キョンを待たせちゃあ悪いもんね。
  あはは、優しいんだ、有希。」

  そのことを涼宮ハルヒが知っていたということに、わたしは今更驚かない。
 わたしは、落ちているボールの一つを涼宮ハルヒにむかって放った。

 「キョンは幸せよねー、アンタみたいな娘に好かれ・・・て!」

  同時に聞こえる金属音は、もう聞き飽きたものだったが
 わたしの体を襲う激痛は、何度味わっても慣れるものではなかった。

 「ほらほら!手が止まってるわよ!さっさとボール拾いなさいよ!」

  言われるがままに、わたしは落ちているボールを涼宮ハルヒに投げた。
 なんどもその作業を繰り返し、また涼宮ハルヒの手元にボールがたまったとき

 「で、今日、服買いに行く予定だったんだって?
  うらやましいわねー、あたしにも、おこぼれでもわけてもらいたいわ・・・ね!」

  ガスッ
 わたしの頭をかすったボールは、かなり遠くまで飛んでいった。

 「何事かと思ったわよ。
  キョンがあたしと出かける予定、いきなりキャンセルした時は!
  それでその放課後、あんたとキョンが部室でまたお買い物の約束だもんね!!
  良い身分ねえ、あんたも、キョンも!!」

  いつもの涼宮ハルヒからは想像もつかないような表情と声で
 わたしをがなりたてながら、涼宮ハルヒはわたしにボールを飛ばした。

 「あんたが今日約束すっぽかしてもねえ!
  どーせキョンは「代わり」なんていくらでも用意してんのよ!!
  かわいそうよね、あたしも、あんたも!
  アイツに裏切られた、いわゆる犠牲者なんだから・・・さ!!」

 「・・・違う。」


425 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 01:02:41 ID:pc5EIHO3
 涼宮ハルヒの打った球が額に当たり、うずくまりながらわたしは言った。

 「あ?なにが違うってのよ。」

  涼宮ハルヒは、ボールを打つ作業をやめ、わたしに聞き返す。

 「わたしはあなたなんかの代用品ではないし
  ましてやわたしの代わりなんて絶対にいるはずがない。
  わたしとあなたは違う。」

  わたしのセリフを聞いていくうちに、涼宮ハルヒはだんだんと表情を
 不愉快なものに変えていく。

 「どう違うってのよ?
  おんなじでしょ?あたしもあんたも、同じニンゲンなんだからさ。」

 「違う!!!」

  わたしは、地面を強く踏みつけながら立ち上がり、叫んだ。
 それは、少なからず涼宮ハルヒにいくつかの威嚇効果があったようだった。
 わたしは、迷わず言葉の続きを、強く叫んだ。

 「だって、わたしと彼は付き合っているんだから!!!!」

  わたしがそう叫んだ瞬間、突然涼宮ハルヒの表情から脱力が読み取れた。
 もう言い返してこない。
 完全に腑抜けた彼女の口から出た言葉は

 「嘘・・・でしょ・・・?」

  常套句だった。

 「嘘ではない。だからわたしと彼は、あなたなんかとは比べ物にならないくらいの強さで
  結ばれている。
  あなたなんかとの安っぽい仲と、一緒にするなぁぁぁぁあ!!!!!」

 「嘘だぁああああああああ!!!!!!!!!!」

  たった今までの無気力な表情とは比べ物にならないくらいの
 鬼の表情を灯した涼宮ハルヒは、再び金属バットを持ち上げた。
 またボールを打ってくるのだろうか。
 そのわたしの考えは、この結果が裏切った。
 涼宮ハルヒが、金属バットを持ってわたしに襲い掛かってくるという結果が。

 「うああああああああああああああ!!!!!!!」


426 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 01:03:33 ID:pc5EIHO3
  怒りで我を忘れ、突進してくる涼宮ハルヒの攻撃は単調なものだった。
 まず、あらかじめバットを振り上げているということは、そこから繰り出されるのは
 それを振り下ろす攻撃。
 わたしは逃げず、その攻撃を左腕でとめた。
 どんな木をへし折っても鳴りそうに無いような不愉快で鈍い音が、わたしの音を発生源として
 辺りに響いた。
 痛いけど、それを気にしている場合ではない。
 わたしは、あらかじめ振りかぶっておいた余った右腕で
 涼宮ハルヒのお腹を殴った。

 「ぅ!・・・がばっ!・・・ぅえ・・・!」

  柔らかいその感触と同時に、涼宮ハルヒの体が「く」の字に曲がる。
 その瞬間をわたしは見逃さなかった。
 涼宮ハルヒのお腹にめり込んだ拳を引き抜き、涼宮ハルヒのバットを奪った。

 「ぅ・・・ゆ・・・き・・・!ご・・・べんな・・・ざい・・・。」

  うるさい。
 うるさいウルサイ五月蝿いウルサイ五月蝿い
 その声でしゃべるな。
 その声を発するな。
 その声を出すのは誰だ。
 このバットで、それを封じてやる。

 「うああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

  片腕だけで振ったとはいえ、思いっきり振りかぶって遠心力たっぷりの一撃を
 涼宮ハルヒの頭にお見舞いした。

 「ゆ・・・有希・・・ユキぃ・・・!」

  何度も何度も殴った。
 この耳障りな声がきこえなくなるまで、頭を。
 それをかばう気力さえなかったらしい涼宮ハルヒが動かなくなったのは
 約5秒くらい後のことだった。
 終わってみれば案外短い時間だったが、執行中のわたしは
 その時間が何分にも感じられた。
 どちらにしても、長い時間でなかったことに違いはない。

  叩き割られた涼宮ハルヒの腕時計は、1時30分を指していた。
 彼との集合時間を2時間もオーバーしている。
 きっと彼は、怒るかあきれるかして帰ってしまっただろう。
 わたしも、もう疲れた。
 今日は帰って寝よう。
 明日は月曜日。
 彼には謝っておこう。きっと笑って許してくれる。
 そして、また幸せな日常が始まるんだ。


427 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 01:05:06 ID:pc5EIHO3
  次の日の放課後、わたしは一番に部室に到着し
 彼の到着を待っていた。

 「よぉ、長門。」

  扉から入ってきたのはやはり彼だった。

 「・・・!?長門、どうしたんだ!?それ!」

  そういえば、今日担任の教師にも聞かれた。
 昨日の涼宮ハルヒの虐待ノックによってできた手足のアザだ。
 教師だけではなく、クラスメイト達にも「転んだ」と説明した。
 だけど

 「あなたには、本当のことを言いたい。」

  わたしはそう答えた 
 そして

 「わたしとあなたが買い物に行く約束をした日、あなたは涼宮ハルヒとの約束を破棄した。」

  質問した。
 彼は、どうしてわたしがそんなことを知っているのかを不思議に思うかのような仕草を見せた。
 だけど、すぐに返事を返した。

 「・・・ああ。」

  こんな状況でも嘘をつかない彼が、わたしは好きだった。
 だから、わたしも嘘をつかない。

 「これは、その時のことを逆恨みした涼宮ハルヒにいじめられてできたアザ。」

  わたしは本当のことを話した。
 すると、彼はまったく疑わずわたしのことを信じてくれた。
 「なんて酷い野郎だ」と、本気で怒ってくれた。
 彼がわたしのために感情を動かしてくれることだけでも、わたしは嬉しかった。
 そして、彼は続けて言った。

 「でも・・・ハルヒの奴・・・」

  その彼の言葉の続きは、わたしが言った。

 「学校に来ていない。」

  彼は首を縦に振った。

 「真剣な話をしたい。茶化さないで、落ち着いて聞いて欲しい。」

  わたしが言うと、すぐに彼はわたしの話を聞く体勢を整えてくれた。

 「彼女は・・・涼宮ハルヒは・・・。」

  わたしと彼は、同時に唾を飲み込んだ。
 彼は、わたしの次のセリフを、あのときのわたしと同じように
 心臓を飛び跳ねさせながら待っているだろう。
 だから、そんな彼のために、わたしは・・・

 「わたしが・・・殺した。」


428 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 01:06:21 ID:pc5EIHO3
  涼宮ハルヒの殺害を告白した。
 以前彼にした愛の告白の時ほど緊張はしなかった。
 だけど、その言葉を聞いた彼の反応を、できれば見たくなかったが、それは不可能だった。

 「ほ・・・本当・・・なのか・・・!?」

  わたしは小さく首を縦に振った。

 「な・・・なんで!どうして!!」

  さっきまでの様子が嘘だったかのように、彼はわたしに駆け寄り
 わたしの肩を乱暴につかんだ。
 そこにもアザがあって、彼の手がそれを握り締めると痛い。
 だけどそんなこともお構い無しに、彼はわたしに聞いた。

 「なんで相談しなかったんだ!なんでそうなったんだ!!」

  わたしは、彼の真剣なまなざしに目を合わせる自信がなかった。
 ただ、わたしの肩にある彼の手を指差して

 「肩・・・痛い・・・離して。」

 「ふざけるな!!」

  わたしの声を掻き消すように、すごい剣幕で彼は叫んだ。
 優しかった彼はどこに行ってしまったんだろう。
 なにが失敗だったんだろう。
 あの優しかった彼を変えてしまった原因は何処?誰?

 「やっぱり、あなたはわたしより涼宮ハルヒのほうが大事なんだ・・・。」

  いつもの彼なら、「何言ってるんだ」と、優しくわたしを慰めてくれた。
 こんな風にいじけたわたしを、彼は放っておかなかった。
 だけど、今目の前にいる彼は、わたしの知っている彼ではないのだ。

 「ハルヒをどうしたんだ!ハルヒは何処だ!!」

  だから、彼がわたしをがなりたてても、わたしの心はまったく傷つかなかった。
 そして、今そうしているように、あらかじめ用意しておいたフォークで
 彼の喉を刺しても、同様に心は傷つかなかった。


429 :魔根金  長門有希のエラー:2007/04/14(土) 01:07:09 ID:pc5EIHO3
 ギ・・・ゥガァァアアア!!!!」

  たまに食べるステーキなんかよりも、ずっと柔らかかった。
 そして、そこから発される異常な悲鳴。
 喉が潰されて、まともな声も出せないのだろう。
 せめて彼だった人間だ、楽に死なせてあげよう。
 そう考えて、わたしはフォークを彼の喉から引き抜いた。
 このフォークは、わたしがさっき昼ごはんを食べたときに使ったものだ。
 これなら携帯しても、誰に見つかっても凶器として不審がられることはない。

  そして、さようなら。
 今なら、アノ時の涼宮ハルヒの気持ちが分かる気がする。
 わたしにとってはあのときの彼が彼で、涼宮ハルヒにとっては
 今の彼が彼なんだ。
 そっか、つまり、もうわたしは
 彼が好きじゃあないんだ。

 「ゥグエ!!!」

  だから、喉元にもう一度フォークを突き立てることに、罪悪感などなかった。
 そして、部室にはもうだれも来ない。
 涼宮ハルヒの死亡と同時に、朝比奈みくるも未来に帰っただろう。
 古泉一樹はどうなったのだろうか。
 そして、わたしはどうなってしまうのだろうか。

  後者は興味が無い。
 だって、わたしにこれ以上墜ちる場所なんて無いのだから。
 あるわけがない。だって、これ以上失う物なんてない。
 これ以上深い心の傷なんて、つくはずがないのだから。

    disk...error...disk...error...

 その言葉だけが、わたしの脳内で何度も繰り返され、ついに口からもこぼれ出始めた。

 「disk...error...disk...error...disk...」


    error...


 完


430 :まとめサイト”管理”人 ◆8cSQWJfJYQ :2007/04/14(土) 01:08:55 ID:xaziSBsT
 神決定。


431 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/14(土) 01:09:40 ID:T4w6MHai
 ……恐っ!


433 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/14(土) 08:15:13 ID:vj4enyw7
 長門……(´;ω;`)ブワッ

-----------------------------

(舟)
 キョンを取られたと思い、長門に理不尽な暴力を加えるハルヒが恐ろしい。それに輪をかけて、ハルヒに反撃し、キョンまでも手にかける長門も。

-----------------------------

「輝いていたハルヒのレス」リスト一覧:総合SS改変ガイドライン

-----------------------------

引用元:涼宮ハルヒ【いじめSOS団】第三弾

コメント

「読まなきゃいい」っていうけど、鬱系2連発はきつ過ぎるんだぜ?

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