2007年03月23日

(SS)小指でぎゅっ

*注意:この項には、いじめ表現が含まれています。その種の内容が嫌いな方は、見ないことを推奨します。

勝手に今日輝いていたハルヒのレス:

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446 : ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:40:30 ID:CldxUeZ1
 んじゃ、ここいらで

 題名は「小指でぎゅっ」で、主役は朝倉涼子

 俺に質問してくれた人、解りづらいヒントでごめんね

 あと今回のは、土台をマッガーレより前に作った奴だから、結構テイストが違うかもです。そこんとこは許して下さい
 あ、そうそう時系列は「涼宮ハルヒの消失」の世界で多分五、六月辺りです
 まあ四の五の説明するのもあれなんで、投下します

 「じゃあ、読んで!」


447 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:42:29 ID:CldxUeZ1
 わたしは朝倉涼子。ちょっとみんなにお話ししたいと思うの。じゃあ、聞いて。


 わたしはいつものようにマンションのエントランスで、ある人物を待っていた。
 「もー、遅いー!」
 「ごめん涼子ちゃん。また寝坊しちゃった」
 その人物は長門有希。
 彼女とわたしは同じマンションに住み、同じような事情で一人暮しをしている事もあって、
 入学間もなくしないうちに仲良くなった。今では有希は、わたしの一番の友達。
 ときどき一緒に晩御飯も作って食べている。
 「また夜遅くまで本読んでたんでしょ?」
 「うん」
 有希は三度のご飯より読書が好きで、少し内気なメガネっ子。
 メガネをしない方が可愛いと思うんだけど、本人はメガネを外したがらない。
 この娘のおかげでいつも予定通りの時間には、学校に行けない。
 でも、なんだかほっとけないのよね。
 「もう、有希はしょうがないんだから。ほら、行きましょ」
 「涼子ちゃん、待って」
 「ほ~ら、早くしないと置いてっちゃうよ!ふふ」
 わたしたちはいつもこんな感じ。こんな毎朝が楽しい。


448 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:43:42 ID:CldxUeZ1
 わたしたちは月並の会話をしながら、いつもと変わらない通学路を歩いていた。
 「あ、あれ・・・」
 坂を登っている最中、有希が前を指差した。
 「どうしたの?」
 「あの人、知ってる」
 有希が指差すその先には、わたしのクラスメイトがいた。
 「何?キョンくんの事?」
 「キョンくんっていうの?」
 「そうキョンくん。で、キョンくんがどうしたの?」
 有希が本以外の物に興味を示すなんて滅多にない。
 その有希が、キョンくんに興味を示すなんて何かあったのかな。
 「前に、図書館でカード作ってもらった人・・・」
 有希はかすかに頬を朱に染めながら言った。
 「ああ、そういえば前にそんな事言ってたわね。あれキョンくんだったの?」
 「うん」
 意外ね。そんな事しない人だと思ってたんだけど。
 「じゃあ、お礼言いに行く?まだ言ってなかったんでしょ。話し掛けてあげよっか?」
 「で、でも・・・」
 モジモジしてても、何も始まらないのに・・・。
 「あっちだって、その気があったから親切にしてくれたんだよ。だから大丈夫だよきっと!
  それに有希も、キョンくんの事好きなんでしょ?」
 「べ、別にそんなんじゃ・・・」


449 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:45:00 ID:CldxUeZ1
 顔を真っ赤にされてそんな事言われても、説得力ないよ。
 「いいから。ほら、行こう!」
 わたしは有希の手を無理矢理引っ張りキョンくんの所へ走り出した。

 「キョンくん、おはよう!」
 「おう朝倉か、おはよう」
 わたしたちはいつものように挨拶を交わす。
 「あなたって以外と優しいのね。見直しちゃった」
 「何がだ?」
 「ふふ。この娘に見覚えは無い?」
 わたしは後ろに隠れている有希を前に出した。
 「ちょっと、涼子ちゃん・・・」
 有希はモジモジしながら前に出る。
 キョンくんは驚いたように直ぐさま反応した。
 「あ、あの図書館の時の!」
 「そう、その時の事で有希から言いたい事があるらしいのよ。ね、有希?」
 有希はいまだモジモジしながら下を見ている。
 「はやくお礼言わないと。キョンくん困ってるわよ」
 わたしは有希に耳打ちした。
 有希は何回か小さく深呼吸をした後、か細い声で喋り出した。
 「あ、あの・・・図書館の・・・ありがとう・・・」
 それじゃ何のお礼かよくわからないわよ。
 「お、おう。別に対したことじゃないし気にすんな。あの・・」
 キョンくんは照れて頭をかきながら、わたしにアイコンタクトを取ってくる。
 名前わからないのかな。


450 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:46:06 ID:CldxUeZ1
 「長門有希よ・・」
 今度はキョンくんに耳打ちをした。
 「な、長門さんとやら」
 「うん・・・」
 お互い固まったまま。
 もう、二人ともウブなんだから、しょうがないわね。
 「二人とも、遅れちゃうよ。行こう!」

 登校中、有希はキョンくんと何も喋らずにわたしの後ろを付いて来た。
 キョンくんもキョンくんで、照れ隠しだかなんだか知らないけど、周りの景色に目を向けている。
 「あー、気持ちがいいわ朝の校庭は。二人もそう思わない?」
 「そ、そうだな」
 「うん・・・」
 う~ん、会話が弾まないわね。

 結局下駄箱までこんな感じ、お互いもっと積極的になればいいのに。

 有希のクラスは六組。わたしたちと隣同士のクラスなので、
 わたしはその間までになんとか二人を喋らせようと努力してみた。

 でも、なかなか上手くいかないものね。
 頑張ってみて、会話に持って行く事は出来たけど、あんまり噛み合ってなかった。
 結局こんな調子で有希のクラスまで来ちゃった。
 有希はわたしたちには笑顔を見せて、教室に入っていった。

 わたし知ってるんだ。有希がクラスで馴染めて無いの・・・。
 六組の友達が言ってた。


451 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:47:22 ID:CldxUeZ1
 でも、きっとそれは有希に自信が無いから。きっとキョンくんと仲良くなれば、
 自分に自信が付いてクラスとも馴染めるハズ・・・。
 有希が別れの笑顔の直後に見せる、暗い表情をした横顔はもう見たくない。

 有希と別れ、わたしたちも教室に入る。
 わたしの席はキョンくんの後ろで一番隅っこ。
 キョンくんは荷物を机のフックにかけ、いつものように谷口くんたちとの話しの輪に入って行った。
 わたしも友だちとの話しの輪に入る。

 会話の内容はいつも同じような事ばかり、あの男子がかっこいいとか、
 あの男子と女子が付き合い出したとか。
 別に悪くは無いけどね。

 昼休み、わたしはキョンくんに有希の事を聞いてみた。
 「ねぇ、あなたは有希の事どう思ってるの?」
 「な、長門さんの事か?べ、別になんとも思ってないぞ」
 キョンくんわかりやすいんだから。
 「本当に?」
 「あ、ああ本当だとも」
 「じゃあ、有希にそう言ってもいい?」
 キョンくんは焦りながら、
 「いや待て、それは困る」
 「素直になれば?誰にも言わないからさ」
 三秒くらい間があったかな。


452 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:48:23 ID:CldxUeZ1
 「本当か?」
 もう、用心深いんだから。
 「うん、本当。誰にも言わないから安心して」
 「本当に本当か?」
 わたし、信用無いのかなあ・・・。
 「本当に本当!じゃあ、ちゃんと約束する?」
 わたしは右手の小指を立て、キョンくんの前に出して見せた。
 「なんだよ・・・」
 「指きり。だからあなたも小指を出して!」
 「そ、そんな恥ずかしいこと・・・でで、出来るかよ!」
 キョンくんはそっぽを向いてしまった。
 「だって、キョンくん信用してくれないんだもの」
 「わかったよ。信用するからさ・・・いいだろ、んなことしなくても」
 「ダメ、わたしもあなたに約束してもらいたい事があるんだもの」
 キョンくんはこっちを少し向いてくれた。
 「何だよ。俺に約束してもらいたいことって・・・」
 「小指でぎゅっとしてくれたら教えてあげる。だからぎゅっとして!」
 「しゃあないな。わかったよ・・・」
 キョンくんは照れ臭そうに小指を出してきてくれた。

 指きりも終わり、キョンくんは少しどもりながら打ち明けた。
 「ま、まあなんだ、ほら、かわいいしさ・・」

 キョンくんはいろいろ教えてくれた。
 やっぱり図書館でカードを作ってあげたのは、下心があったからみたい。


453 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:49:25 ID:CldxUeZ1
 でも、いざとなったら恥ずかしくなって、名前も告げず聞かず終いで逃げてきちゃったらしいけど。
 「ねぇ、あなたってまだどこの部活にも入部して無いんでしょ?」
 「ああ、そうだけど」
 「有希ねぇ、文芸部員なの。でも、部員一人しかいないらしいのよ」
 「そ、それがなんだ・・・」
 キョンくんはあからさまにとぼけて見せてきた。
 「わかってるクセに。ふふ」
 キョンくんは数回咳払いをして、わたしに聞いてきた。
 「で、朝倉。お前の約束ってなんだよ」
 「教えてあげない」
 「おい、なんだよそれ!」
 「ふふ、冗談よ。わたしの約束はね、有希を裏切らないで欲しいの。あの娘、すごくナイーブだから・・・
  だから、マジメに付き合ってあげてね。遊びだったら許さないんだから」
 「わかったよ」
 そう言ってキョンくんは深くうなずいた。
 キョンくんのその表情はすごく真剣だった。

 放課後、キョンくんは谷口くんたちの誘いを断ってどこかへ行ってしまった。
 だいたい予想はつくけどね。
 邪魔しちゃ悪いから、わたしは先に帰ろうかな。


454 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:50:27 ID:CldxUeZ1
 そう思ったけど、やっぱり気になって文芸部室の前まで来ちゃった。
 なんだか落ち着いていられなかったから。
 わたしはドアに耳を当て、中の様子を探ることにした。
 「・・・」
 静かね。もしかしてキョンくん来てないのかしら。
 もう、あれだけ促したのに。
 部室に入って有希と話すのもいいけど、わたしはキョンくんを探すことにした。
 特に理由は無いけどね。
 わたしは階段を降りて角を曲がった瞬間、キョンくんと鉢合わせた。
 「ひゃっ!」
 わたしは驚いて悲鳴をあげてしまった。
 「なんだよ朝倉、驚くだろ」
 「なんだとはなによ。あ、それよりはやく行ってあげてよね」
 「俺は別にそんなんで・・」
 またとぼけちゃって。
 「何?じゃあ、わたしと一緒に帰る?有希には明日伝えといてあげるから」
 「何をだよ!?」
 わかってるクセに。
 「キョンくんが、有希に気が無いって事を」
 「おい待て、だからそういう訳じゃ」
 キョンくんは手を前に出して否定した。
 「そっかあ・・・じゃあ、はやく行ってあげなさい。わたし、もう行くから・・・じゃあね!」
 「おう、じゃあな」
 わたしは急いでその場から退散した。


455 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:51:29 ID:CldxUeZ1
 次の日、わたしはいつものようにエントランスで有希を待つ。
 有希は今日も遅れてやってきた。
 「また寝坊でしょ?」
 「う、うん」
 「まあいいわ。昨日の放課後はキョンくんとたくさん話せた?」
 「うん」
 有希はうれしそうな表情をして首を縦に振った。
 有希のそんな笑顔を見るのは初めてだった・・・。
 「あの、涼子ちゃん・・・。昨日部室まで来てくれたなら、寄ってくれても・・・」
 気付いてたんだ。
 「寄ろうと思ったけどさ、二人のお話の邪魔になるかなって思って」
 「そんなことないよ。涼子ちゃんがいてくれたほうがよかった・・・」
 有希は寂しいそうな表情を浮かべた。もしかして・・・。
 「有希、やっぱりキョンくんとはあんまり合わなかった?」
 「違う、ちゃんと楽しく話せたよ・・・ただ、涼子ちゃんがいてくれたほうが安心するから・・・」
 有希の表情は暖かかった。
 でもわたしは、その言葉を素直に喜ぶ事ができなかった。
 胸がモヤモヤしていたからかもしれない。
 今日は登校途中にキョンくんと会わなかった。
 有希は少し寂しそうな表情をしていた。


456 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:52:28 ID:CldxUeZ1
 教室に入ると、もうそこにはキョンくんがいた。
 「おう朝倉、長門さんのアドレス教えてくれないか?」
 「なにもう、いきなりその話し?てゆうか、昨日聞かなかったの?」
 わたしは少し強めに荷物を机に置く。
 「話しに夢中になっててさ、聞くの忘れちまったんだ・・・」
 「自分で聞きに行けばいいじゃない!」
 わたしは会話を中断し、友達のところへ向かう。
 今日はキョンくんとあまり喋らなかった。
 喋るとまた怒ってしまいそうで、喋りたくなかった。
 なんで怒ってしまったのか自分でもわからなかった。

 わたしの胸のモヤモヤは日を追う毎にその色濃さを増して行った。

 大体一週間ぐらいが過ぎた頃かな。キョンくんと有希の間に変化が起き始めた。
 その変化は朝すぐに見ることが出来た。
 わたしはいつものようにエントランスで有希を待つ。
 エレベーター到着のブザー音が鳴り、ドアが開いて中から有希が出てきた。
 しかし、その顔にメガネは無い。
 「おはよう有希、メガネはどうしたの?」
 「涼子ちゃんおはよう。メガネはキョンくんが、掛けてない方がかわいいって言ってたから取ってみた」
 有希は満面の笑みを顔に浮かべながら、そう言ってきた。


457 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:53:33 ID:CldxUeZ1
 何よ、わたしが言ったときは取らなかったくせに・・・。
 「涼子ちゃん、やっぱりこっちのほうが似合ってるかな?」
 「わたしはメガネを掛けてるほうが、可愛いと思うけどなあ」
 本当はわたしも有希がメガネを掛けていない方が可愛いと思う。だけど、素直になれなかった・・・。

 「そう・・・」
 有希は淋しげな表情をしていた。
 「でも、よく見たらメガネ掛けてない有希もかわいいかも!」
 有希は安堵したのか、笑顔をわたしに振り撒いた。
 何やってるんだろう。わたし・・・。

 わたしたちは坂の付近まで歩く。
 すると、一人の男子生徒が手を振っているのが見えた。キョンくんだった。
 「おはよう!」
 有希はそう言って、笑顔でわたしの横を通り過ぎ、走って行った。
 その有希の表情は、わたしには見せたことも無いような笑顔だった・・・。
 それに、有希があんなにうれしそうな声で挨拶するのも初めて聞いた・・・。
 わたしは二人の邪魔をするのも悪いので、少し後ろを歩く。
 有希もキョンくんも、わたしの知らない笑顔で楽しそうに会話をしてる・・・。
 二人の会話が漏れて聞こえてきた。
 キョンくんは有希の事を「長門さん」ではなく、「有希」と呼んでいた。


458 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:54:55 ID:CldxUeZ1
 なんだか悔しかった。有希がわたしから離れて、どんどん他の人のものになる気がして、悔しかった・・・。
 そうなって欲しいと望んでいたのだけど、なんだか悔しかった。
 矛盾している自分、自分の気持ちに嘘をついている自分に嫌気がさした。

 有希と別れ、教室に入る。
 「朝倉、なんか気ぃ使わせて悪かったな」
 キョンくんが話し掛けてきた。
 出来れば今は話したくなかった。
 また辛く当たってしまいそうで・・・。
 「何が?」
 わたしはわざととぼけた。
 「何が?って・・・さっき長門と話し込んじゃってさ、お前をなんだかその・・・」
 「何よ!長門じゃなくて有希って言えばいいじゃない!さっき有希の事そう呼んでたでしょ!」
 わたしは叫んでしまった。我慢することが出来なかった。
 胸のモヤモヤがわたしの心を押し潰すような感覚がした。
 苦しくて涙も込み上げてくる・・・。
 友人たちがわたしのところに駆け寄り、キョンくんを責める。
 事情を知らない友人たちは、泣いているわたしを見てキョンくんを一方的に悪者にしていた。
 キョンくんは友人たちの一方的な態度に逆上して、友人たちと激しい言い合いをしている。
 わたしはただ泣いて見ていることしかできなかった。


459 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:55:53 ID:CldxUeZ1
 「いきなり怒ってごめんね。」
 ってキョンくんに謝って、皆にちゃんと事情を話せば済むことなのかもしれないけど、わたしには出来なかった。
 それどころか、ただ泣いたままクラスメイトから同情をもらっている自分が情けなかった・・・。

 ついにキョンくんは自分の席にふてくされたように座ってしまった。
 わたしも皆に
 「もう、大丈夫だから」
 とだけ言い、席に座った。こんな自分がイヤになる。

 昼休み、有希が教室のドアの所から顔と体を少し覗かせキョンくんを呼んでいるのが見えた。
 何よ、わたしの時は昼食のお誘いどころか教室にも来てくれなかったのに・・・。
 キョンくんも急いで昼食を用意して教室を出て行った・・・。

 昼食は食べた気がしなかった。
 昼休みは友達とずっとキョンくんの文句を言っていた。
 本当はキョンくんの悪口を聞くのはつらかった。
 でも、わたしはキョンくんを悪者にして、一緒になって文句を言ってしまっていた。
 わたしはキョンくんに嫉妬していた・・・。

 キョンくんは五時限目の予鈴ギリギリに戻ってきた。


460 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:56:52 ID:CldxUeZ1
 結局今日はキョンくんとは全然喋らなかった。なんて話し掛ければいいかわからなかったし、
 なんて言われるか怖くて話し掛けられなかった。

 わたしはクラスの友人たちと帰った。
 帰りも、皆はわたしに気を使ってくれたのか、またキョンくんの文句を言っている。
 また、わたしも一緒に文句を言っていた・・・。
 わたしは消えたくなった。その場で消えてなくなりたかった・・・。


 その日の夜、わたしはベッドにうつぶせ、声を出して泣いた。
 いろんな思いが一気に溢れ出てきた。

 次の日、わたしは有希を待たずに学校へ向かった。
 有希たちといると、自分が自分じゃなくなるような気がしてイヤだったから・・・。

 昨日と同じ場所にキョンくんがいた。
 キョンくんは気まずそうにわたしに話し掛けてきた。
 「あ、朝倉ー。なが、あっ、有希はどうしたんだ?」
 「何よ!挨拶も無しにいきなり有希の話、見ればわかるでしょ!いないわよ!」
 本当は話し掛けて来てくれてうれしかったけど、わたしは素直になれずに怒ってしまった。
 悔しかったから・・・。

 わたしは早歩きで坂道を登る。
 キョンくんと話すのがつらかった。どんどん距離が遠くなっていってしまいそうで・・・。


461 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:57:54 ID:CldxUeZ1
 教室に入ると、友人たちが話し掛けてきた。
 「涼子、昨日の事なんだけどさ。任せといて」
 「昨日の事?」
 「そう昨日の事よ、キョンくんに仕返しするって話しよ」
 わたしは耳を疑った。確かに昨日勢いでそんなに事を言ってしまったけど・・・。
 「で、でも仕返しなんてそんな・・・」
 「いいからいいから、私達、キョンくんを無視することにしたの。クラスの皆にも言っといたから大丈夫」
 「だから涼子、そこんとこよろしくね」
 わたしは怖くなった。時間を戻せるなら戻したかった。
 「別にそんな・・・」
 「いいのよ、女の子泣かすような奴は、サイテーだもんね!」
 「でも・・・」
 わたしはそれ以上の言葉が出す事ができなかった。心の中でいろんな気持ちが葛藤していたから。
 わたしはそのまま席に座った。
 サイテーなのはキョンくんじゃない。わたしだ・・・。
 あの時、あの言葉を口に出しておけばこうならなかったかもしれないのに・・・。

 しばらくしてキョンくんが教室に入ってきた。キョンくんはいつものように皆に挨拶をする。
 しかし、誰も反応せずにクラスが静まり返る。
 この静けさが怖かった。でも、キョンくんはもっと怖いハズ。


462 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:59:02 ID:CldxUeZ1
 「おはよう」
 って笑顔で声をかけたかった。
 でも、皆を裏切る事になる。という勝手な解釈をしてわたしは何も言わずに外の景色に目をそらした。
 わたしはホントにサイテーだ・・・。

 その日は居心地が悪かった。
 キョンくんが先生に指されるたびに、クラスは変に静まり返る。
 キョンくんはずっとわたしに背を向け、つまらなそうに外の景色を見ている。
 授業が終わると、そそくさと教室を出ていく。
 有希のところに行ってるのかな・・・。

 今日、わたしは一人で帰った。
 皆と帰っても、皆はきっとキョンくんを馬鹿にした話しをするに違いない。
 きっとわたしも馬鹿にしてしまう。
 そうなるのがイヤだった・・・。

 わたしは昨日と同じように、ベッドで咽び泣いた。
 もう、自分がイヤでイヤでしょうがなかった・・・。
 苦しかった・・・。


463 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 20:59:58 ID:CldxUeZ1
 次の日、わたしはいつものようにエレベーターで降りる。
 エレベーターは一階を表示し、ドアが開いた。
 ドアの前には有希がいた。
 有希はわたしに話し掛けてきた。
 「昨日はごめん。私が遅いから、先行っちゃったんだよね・・・」
 有希は申し訳なさそうにそう告げた。
 わたしは言葉が出なかった。
 「これからは早くするように頑張るから、だから一緒に行こう・・・」
 わたしは自分が情けなると同時に、どこまでも純粋な有希に苛立ちを感じた。
 「何もう!そうやってわたしに、キョンくんと仲良くしてる所を見せ付けて馬鹿にするのがそんなに楽しい!?」
 わたしはまた怒ってしまった。
 「涼子ちゃん、違う。私そんなつもりじゃ・・・」
 有希は今にも泣きそうな顔をしていた。
 有希がそんなつもりで言ったんじゃないってホントはわかってる。
 でも止める事が出来なかった。違うとわかっていても止められなかった。
 「違わないわよ!後ろから一人で歩いてるわたしが滑稽なんでしょ!見下したいんでしょ!!」
 有希は泣き出してしまった。
 でも、わたしの口は止まらなかった。
 「有希なんか友だちでもなんでもないわよ!」


464 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 21:01:01 ID:CldxUeZ1
 「ごめん、涼子ちゃん・・・。お願いだから、そんな事言わないで・・・」
 有希は泣きながらわたしに謝る。
 なんで謝るの・・・。悪いのは、わたしなのに ・・・。
 どうして・・・。
 わたしは自分が我慢できなくなった。
 「何よ!アンタなんかね、死んじゃえばいいのよ!」
 本当は自分に言いたかった。
 でも、わたしは有希に言ってしまっていた・・・。
 ひどいこと言ってごめんね有希・・・。

 有希の一番見たくない表情を見てしまい、わたしは怖くなって走りだした。
 視界がどんどんぼやけて行く。


 教室に入り、わたしは席に座ってうつぶせる。
 友人たちが心配して近寄ってきた。
 「どうしたの涼子?キョンに何かやられたの?」
 「アイツ、本当にサイテーね。涼子、安心して!とっちめてあげるから!」
 違う・・・そんなんじゃ無い・・・。
 悪いのは全部わたしなの・・・。

 すると、キョンくんが教室に入ってきた。
 キョンくんは教室に入るなり、わたしを引っ張り廊下に連れ出した。
 その間、女子たちがキョンくんに向かって罵声を浴びせる。
 耳を塞ぎたかった・・・。
 わたしは、皆に「心配しないで。大丈夫だから」とだけ言い、キョンくんに付いていった。


465 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 21:02:05 ID:CldxUeZ1
 キョンくんはわたしを壁に押し付け怒鳴り散らす。
 「おい、なんのつもりだ!ふざけんなよ!」
 「何の事よ」
 わたしはまた素直になれなかった。
 「とぼけてんじゃねぇぞ!有希に何言ってんだよ!!」
 「別に大した事言って無い」
 キョンくんはわたしが話している最中に割り込み、さらに怒鳴りつける。
 「大した事言って無いじゃねぇだろ!有希は本気で悩んでるんだぞ!!お前のせいだぞ!!」
 キョンくんの怒った顔が見たくなくて、わたしは目線を横に向ける。
 気がつくと、ほかのクラスの人たちまでがわたしたちのケンカを見ている。
 その中には、隣のクラスから少しだけ顔を出す有希の姿があった。
 有希は、わたしと目が会うなり顔を引っ込めた。
 すっかり嫌われちゃった。裏切ったんだから当然か・・・。
 「おい!お前聞いてんのか!有希に謝れよ!」
 「聞いてるわよ!なんで謝らなきゃいけないのよ!わたしはホントの事を言っただけだもん!」
 わたし、なんで意地張ってるんだろ・・・意地なんか張ったって良い事無いのに・・・。
 「お前、それ本気で言ってんのか!?」


466 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 21:03:04 ID:CldxUeZ1
 「本気じゃなきゃそんな事言わないわよ!有希なんかね、死んじゃえばいいのよ!」
 こんな自分がつくづくイヤになる。
 「ふざけんな!」
 キョンくんがそう言った瞬間、わたしの頬にキョンくんの握り拳が当たり、わたしは床に倒れた。
 みんなの悲鳴が聞こえてきた。
 涙が溢れてくる。心が痛かった。胸のモヤモヤがわたしの心を激しく圧迫する・・・。

 さわぎを聞き付けたのか先生がやってきて、わたしたちは生徒指導室へと連行された。
 そこでもキョンくんの言い分は通らず、先生がキョンくんに
 「どうせお前が因縁つけて殴ったんだろ、朝倉に謝れ!」
 などと怒鳴り付けている。
 なんでいつも・・・。
 わたしが悪いのに・・・。
 でも、それを言えないわたしはやっぱりサイテーな人間なのかな。
 何もかもがイヤになった。


467 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 21:04:04 ID:CldxUeZ1
 結局キョンくんはわたしに謝り、この件は折り合いとなかったが、キョンくんには処分が待っていた。

 五日間の停学処分。

 わたしはキョンくんに謝る事が出来なかった。
 少しキョンくんと間隔を開けて教室に戻る。

 さすがにわたしもあんな事を言ってしまったせいか、クラスの皆は話し掛けてこなかった。
 今日はほとんど一人で過ごした。
 帰りのホームルームで、キョンくんが停学処分になった事が皆に伝えられた。
 しかし、クラスは静まり返ったまま。誰もキョンくんに声をかけなかった。
 ホームルームが終わると、キョンくんはすぐに教室を出て行った。

 わたしは今日も一人で帰った。
 本当はキョンくんと一緒に二人で帰りたかった・・・。

 家に帰っても、わたしは夕食を食べる気にも、作る気にもなれなかった。
 暗い部屋で、ただ時間だけが経過する。
 わたしはベッドの上で、丸くなって座っていた。


468 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 21:05:06 ID:CldxUeZ1
 外では救急車とパトカーのサイレンが鳴り響いていた。
 何かあったのかな・・・。
 でも、わたしは行く気になれなかった。そんな気力はもう無かった。
 わたしはベッドに入り、眠ることにしたが、中々寝付く事が出来なかった。
 胸をずっとモヤモヤが駆け巡り、今日の事を思い出す度に心が締め付けられ、涙がこぼれ落ちてくる。
 わたしは抱き枕を強く抱き締めた。
 わたしは優しく微笑むキョンくんの顔を思い浮かべて、心の痛みをごまかすしかなかった。

 次の日、わたしは一人で学校に向かう。有希に会わせる顔が無かったから・・・。
 わたしは有希を利用していただけなのかもしれない・・・。
 有希をキョンくんに近づくためのきっかけに使っていただけなのかもしれない・・・。
 わたしは激しい自己嫌悪に陥った・・・。

 学校についたが、周りはなんだか慌ただしかった。
 わたしは席に座り、ただ窓から外の景色を見ている事だけしかできなかった。
 クラスメイトが、キョンくんやわたしの悪口を言っているのが聞こえてきた気がした。

 予鈴が鳴ったが、キョンくんはやってこない。
 そうか、キョンくん停学処分だったっけ・・・。


469 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 21:06:09 ID:CldxUeZ1
 予鈴が鳴って、しばらくしてから先生が入ってきた。
 「遅れてすまない。一時限目は中止だ。全校集会になった。急いで講堂に集まりなさい」
 どうしたのかな。

 わたしたちは講堂に行き、整列して着座した。
 全員が揃い、一連の流れが終わったところで、校長先生が口を開く。
 「あー、非常に残念なお知らせがある。そもそも学校生活において、仲間とは大切なものである」
 昨日のキョンくんとの事を話すのかな・・・。
 皆の視線がわたしに集まっている気がして怖かった。
 校長先生はいろいろ話した後、少し間をあけて重たそうに口を開いた。
 「知っている生徒もいるだろうが。昨日、光陽園駅付近のマンションで飛び降り自殺があった」
 昨日の救急車とかのサイレンはそれだったんだ。
 でも誰がだろう?

 本当は薄々わかっていた。信じたく無かっただけで・・・。
 隣のクラスから、その人物の名前がチラホラ飛び交っていたから・・・。

 校長先生は再び話しを続けた。
 「飛び降りたのは本校生徒だ。それも一年生。そもそも・・・」

 わたしは胸が締め付けられ、呼吸をするのが苦しくなった。


470 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 21:07:13 ID:CldxUeZ1
 隣のクラスはさらにざわめいている。
 そのざわめきの中から、飛び降りたとおぼしき人物の名前が何度もはっきりと聞こえた。
 「長門さん」、「長門」、「長門有希」
 呼び方なんてどうでもいい。
 飛び降りたのは有希だ・・・。
 わたしはますます胸が苦しくなった。
 わたしのせいで有希が・・・。

 周りからは徐々にわたしの名前も聞こえ出してきた。
 昨日、大声であんな事言ったんだから当然か・・・。

 全校集会が終わり、わたしは下を向きながら廊下を歩く。
 皆がわたしの噂をしてるのが聞こえてきた。
 わたしは教室に戻らず、ある場所へ向かった。

 わたしの気持ちとは対称的な雲一つない青空、そよ風がとても気持ちよく、いい香りを運んでくる。
 校庭や街の景色を一望できる絶好の場所。そう、屋上。

 いつだったか、有希と一緒にお買い物に出掛けた時も、こんな天気だった。
 その時はまだ、有希はわたしに笑顔を振り撒いてくれていた。
 しかし、それはもう二度と戻れない過去の思い出。有希はもう、追憶の中だけにしか存在しない。


471 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 21:08:13 ID:CldxUeZ1
 わたしは有希の笑顔がもう一度見たかった・・・。
 有希が最後にわたしに向けた表情は、わたしを畏怖していた・・・。
 その表情が、わたしの心の中に残っている有希の笑顔を掻き消していく。
 有希との楽しかった思い出もろとも消え去りそうでとても怖かった。


 わたしはある人物に電話をかけた。
 よかった。着信拒否はされてないみたい・・・。
 15コール目、やっとその人物は電話に出てくれた。
 わたしはうれしかった。

 『なんだよ』
 その人物は怒った口調で応対してきた。わたしはとても怖くなった・・・。
 胸が潰されそうになる・・・。
 「キョンくん・・・」
 うれしさと怖さがわたしの心の中で入り交じる。
 とても苦しかった。
 『だからなんだよ。ようが無いなら切るぞ』
 「キョンくん・・・」
 涙が溢れ出てくる。
 いざとなると言葉が出ない。名前を呼ぶ事しか出来なかった。
 『おい、お前ふざけてんのかよ!』
 わたしは勇気を振り絞って言った。
 「キョンくん・・・。ごめんね・・・」
 わたしは声が震えないように頑張った。
 『いきなりどうしたんだよ・・・。謝るんだったら、俺はいいから有希に謝れよ』
 キョンくん知らないのかな、有希の事・・・。


472 :小指でぎゅっ ◆OU1AKr4Yyw :2007/03/21(水) 21:09:39 ID:CldxUeZ1
 「ごめんね、キョンくん・・・ごめんね・・・」
 わたしは謝る事しかできなかった。声もすごく震えていた。
 『朝倉・・・お前、泣いてるのか・・・?』
 キョンくんは心配そうに訪ねて来てくれた。わたしはとてもうれしかった。
 わたしはもう一度勇気を振り絞り、キョンくんに最後の言葉を告げた。

 「キョンくん・・・大好きだよ・・・。じゃあね!」
 わたしは返事を聞く前に電源ボタンを押して通話を終了する。
 胸のモヤモヤが無くなった気がした。
 わたしは目を閉じ、両手を胸の前で組んで、右手の小指を胸に当てた。

 「ごめんね有希・・・。今、わたしもそっちに行くから・・・だから許してね・・・」
 そう呟き、わたしは青空に身を投じた。

 そよ風が、強い向かい風へと変わるのを感じた。


 END

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(舟)
 相手を思いやったつもりが「どうしてこんなことに」と悪い方向へ転がり続け、止まることなく崖から落下してしまった哀しい結末ですな。
 「(SS)マッガーレ!スペクタクル」の方ということは、国名シリーズならぬ曲名シリーズといったところですかな。

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「輝いていたハルヒのレス」リスト一覧:総合SS改変ガイドライン

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引用元:涼宮ハルヒ【いじめSOS団】第二弾

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