(13)『金なら返せん! 地の巻』 - 「長門有希の100冊」を読む
「長門有希の100冊」No.78
『金なら返せん!』(第2巻『金なら返せん! 地の巻』)
作者:大川豊

◎感想・評
先日紹介した『金なら返せん! 天の巻』に続く第2巻。
まず第1章は、前巻『天の巻』が発売された後の話。初版6万部という、この手の本としては破格の部数を印刷。(本来は5千部が妥当だが、大川豊本人が「売れ残ったら自分も印刷代を持つ」と豪語したため。)ぴあ編集部側は印刷しすぎを危惧するも、フタを開ければ売れる売れる。大川豊の懐には印税300万円が。そう思ったのも束の間、倉庫には返本の山が4800冊。在庫となってしまった分の経費を考慮すると、125万円は持って行かれるかも....とまあ、リアルな数字を余すところ無く公開しているスタンスは全く変わっていない。これだけでも、本を売ること、本を書く行為だけで生活することって大変だなと思わされる。
大川豊が何の気無しに記したものと思われるが、90年代前半から、今の時代になって実現しているネタがいくつかあることに気を引かれた。
例えば、
「歴史的建造物として原爆ドームが破壊されたことの象徴として残る。」
→原爆ドームは現在、“負の遺産”として世界遺産に指定されている。
「アニメ人形のストリップとか、キャバクラみたいなのや、セクシーなセーラームーンとかがあるとはやるのではないか」
→ストリップとは異なるが、“キャストオフ”できる美少女フィギュアはわんさか出てる。また人形ではないものの、メイド喫茶やコスプレ喫茶はこれに近いか。
なお、これをもって、大川豊には先見の明がある、なんてことは決して思わない。理由は簡単、先見の明が無かった記述の方が、はるかに多いから。発想することは大事だけれど、それが有意義なものかは別だし。
以下、気になったネタのピックアップ。
マハーポーシャ(オウム真理教が経営していた、パソコン販売がメインの会社)を持ち上げているコラムがあって驚愕。まだ地下鉄サリン事件を起こす前の段階で、マハーポーシャを持ち上げていたとは。まぁこの頃って、麻原彰晃が『とんねるずの生でダラダラいかせて!!』に出演していたからのう。
前巻の買い取り屋に続き、本書では本物の夜逃げ屋との会話が。どこまでホントの話か確かめる術など無いが、買い取り屋の時と同様、その内容は真に迫っている。まぁ現実の夜逃げ屋は、『夜逃げ屋本舗』に描かれた夜逃げ屋みたいな甘いモノではないということか。
SM界には大川興業のファンが多い。理由として、「学生服には支配と服従、両方の意味があるから」だそうな。そういえば大川興業には女子高生ファンも多かったし、そんなに的外れな分析では無さそう。
取り立てる側として、電気代の集金人の話。ヤクザの事務所が電気代などを払わないため、ガス、水道と共に“三本の矢”となって取り立てに行った、という話の筋書きが出来過ぎだけれど面白い。これ話の流れが『さるかに合戦』(ただしサルに殺される母ガニはいないけれど)っぽくて、これで一本作品が作れるんじゃないか。そんな風に思っていたら、本書の終盤、『金なら返せん!』のビデオ化に際し、この話もネタとして考慮されていた。「これは作品化できるネタだ」という点で筆者と波長が合ったことが、ちょっと嬉しい。と同時に、『金なら返せん!』って、ビデオ化されていたのかと。
ゆうむはじめ氏との対談。ゆうむ氏は当時の謎本ブームに便乗し、『サザエさんの秘密』(名義は世田谷サザエさん研究会)などの謎本を多数上梓し、一億五千万円の印税収入を得たという。(ただし税金で七千万円くらい持って行かれた模様。)当時謎本ブームで、謎本が数十万部売れていたのは知っていたけれど、印税って、そんな莫大だったのか。ちらっと『涼宮ハルヒの秘密』とか書いたら売れるかな~と思ったが、ブームが発生したあの時代で、『サザエさん』という日本全国民が市場ターゲットになる作品だったからこそ売れたんだろうな。そういえば、ブックオフの105円コーナーでそこそこ見かける『新世紀エヴァンゲリオン』の解析本やら分析本やらって、どれだけ売れたんだろう。
独立国家“ゆたか”を作る、という話の中で、架空の独立国家の流れで吉里吉里国が出てきた。そういえば『吉里吉里人』も「長門有希の100冊」にあるなあと、妙な接点を感じた。
『ぴあ』内メジャーリーグ“Pリーグ”を作る、という話の中で、各ジャンルのメジャーどころをピックアップしているのだが、「サッカーは浦和レッズをはずす」と、今では信じられないような記述があって、軽い衝撃を受けた。そういえば浦和レッズって、Jリーグ開幕当初は典型的な“お荷物クラブ”だったんだよな。あの時、今の隆盛を極める浦和レッズを、とてもではないが想像できなかったな。それとは逆に、ヴェルディの凋落ぶりも。
◎『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズへの影響
◎他
略。「(12)『金なら返せん! 天の巻』 - 「長門有希の100冊」を読む」を参照。
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関連アーカイブ
・(12)『金なら返せん! 天の巻』
・(11)『時間衝突』
・(10)『吸血鬼伝承「生ける死体」の民俗学』
・(9)『有限と微小のパン』
・(8)『昭和歌謡大全集』
・(7)『夏への扉』
・(6)『パスカルの鼻は長かった』
・(5)『猫たちの聖夜』
・(4)『バブリング創世記』
・(3)『海がきこえる』
・(2)『たったひとつの冴えたやりかた』
・(1)『復活祭のためのレクイエム』
関連ページ
・長門有希の100冊
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