2007年02月15日

(7)『夏への扉』 - 「長門有希の100冊」を読む

「長門有希の100冊」No.11
 『世界SF全集12』(収録作)
 作者:ロバート・A・ハインライン(訳者:福島正実)



◎感想・評
 献辞に「世のなべての猫好きにこの本を捧げる」とある点に、作者でなくとも同意。SFに興味が無くとも、猫好きな人に、是非読んで欲しい一冊。ピート(ペトロニウス)かわいいよピート。

 昔、学生の頃に本書を読んだ覚えがあるのだが、「猫好き男がタイムスリップして万事解決」程度の、あやふやな記憶しか残っていなかった。なので読み直してみた。んで、一番の印象がタイムスリップがどうとかではなく、「このロリコンめ!」。主人公のダン(ダニエル・ブーン・デイビス)って、三十路なのに十一歳のリッキィに理想の女性を見出しちゃってるし。時間移動を上手く使って十歳分の差を縮めて二十一歳にし、合法レベルにまで持ってくる策士ぶり。でもそうなると、別に未成熟の少女に恋したというわけじゃないから、ロリコンとは違うか。それでも三十過ぎの男が十歳年下の女と結婚するなんて羨ましすぎる。てかコレがSF小説に対する感想ってのもどうかと。

 時間移動や猫やロリコンについてばかり目が行きがちだけれど、科学技術への啓蒙思想も見所かなと。技術というものは常に進歩している。今日より明日、明日よりあさって。日々の積み重ねが年単位で積もれば、技術の恩恵により社会は別世界へと進化を遂げる。とはいえ、技術者がどれだけ優れたアイデアを生み出したとしても、それを開発するほどの技術が進歩していなければ、どうあがいても駄目である。この物語は1957年に成立し、1970年の世界、2000年の世界を、SFの大家ロバート・アンソン・ハインラインが空想したものである。本書を読み終えた後、既に2000年を7年ほど超過した現実において、「なんで文化女中器(ハイヤード・ガール)って、実現していないんだろう?」という思いにとらわれる。技術が日々進歩しているといっても、人間の想像力に追いつくには、相当な年月が必要なものだ。


◎『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズへの影響
・主人公が時間移動を行って、過去において未来世界の辻褄合わせを行う
 未来を知る者が過去へと戻る。そして未来の出来事を知っているからこそ“未来ではこうなっているから、自分はここでこういう行動を取らなければならない”と、辻褄を合わせる。ハルヒワールドで言うところの「既定事項」である。顕著な辻褄合わせとしては、「笹の葉ラプソディ」「朝比奈みくるの憂鬱」『涼宮ハルヒの消失』『涼宮ハルヒの陰謀』あたりがこれに当たるかと。ただキョンの場合は大抵、未来人・朝比奈みくる(大)からの指令によって、未来を知らないまま辻褄合わせの行動を取っている、という点で異なるが。

・「あたし、あんたとどこかで会ったことがある? ずっと前に」
 初めて会った相手から「どこかで会ったことが?」と首を傾げられる。これが恋愛モノならベタなナンパテクであるが、SFモノにおいてはベタなタイムスリップネタの伏線である。これほど印象に残り易く、回収し易い伏線設定は、そうは無かろう。物語序盤の、涼宮ハルヒのちょっとしたセリフが、よもや後々の伏線であったとは。


◎他
 『バブリング創世記』同様、この作品もAA化がなされ、「(新)モララーのビデオ棚:夏への扉」に収録されている。未来へ行った直後の辺りまでで未完になってしまっているものの、前半の話の流れはほぼ掴める。また単純な原作のAA化ではなく、2ちゃんねる風にアレンジされているので、原作を読んだ人ならばアレンジ具合を楽しめる。これ当時リアルタイムで見ていて、AA職人ってホントすげぇなと感心しながら続きをwktkしたもんです。

 時間旅行者についての記述で、超常現象研究家のチャールズ・フォートと共に、『悪魔の辞典』のアンブローズ・ビアスも引き合いに出しているのが興味深い。ビアスといえば、出入り口が一つしかない洞窟に入ったきり行方不明になったといったオカルト話が伝えられている人だしな。アメリカ人にとってビアスは、オカルト寄りな人なのか。

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関連アーカイブ

(6)『パスカルの鼻は長かった』
(5)『猫たちの聖夜』
(4)『バブリング創世記』
(3)『海がきこえる』
(2)『たったひとつの冴えたやりかた』
(1)『復活祭のためのレクイエム』

関連ページ
長門有希の100冊

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夏への扉
夏への扉
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おすすめ度の平均: 4.5
5 理系人の純愛物語。「がんばれ、ファイト」とプッシュしてくれる本です。
4 ハインラインの最高傑作
5 痛快SF!!


コメント

これ昔読んだなぁ・・・
夏休みの読書感想文これだったような気がする。
こういうものって伏線が多いですよね。

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