(4)『バブリング創世記』 - 「長門有希の100冊」を読む
「長門有希の100冊」No.12
『バブリング創世記』
作者:筒井康隆

◎感想・評
昔、私が学生だった頃の話。ネットか何かで本書を勧められ、図書館で借りたことがあった。早速ページをめくったところ「何じゃこりゃ!?」と驚愕。それが本書の第一印象。その時はその驚愕の印象のみで、ロクに本書を読まずに返却。
時を経て、「長門有希の100冊」の中に本書を見つけた時、「えっ?」と思う一方、妙に納得してしまった。筒井康隆の作品なら『時をかける少女』の方が「長門有希の100冊」に合っていそうだけれど、この『バブリング創世記』もアリなのかなと。
本作「バブリング創世記」は、ほんの数ページから成る短編である。なので本作を読む場合は、十中八九、多数の短編が一緒に収録されている書籍を手にすることになる。
私の場合、徳間文庫『バブリング創世記』で読んだ。以下、表題作と共に、一緒に収録されたいくつかの短編についても合わせて感想などを記述する。
「バブリング創世記」
当初「創世記」というタイトルから、ファンタジックな内容を想像していた。本書を手にとってページをめくると、その想像は大外れ。ジャズの技法「バブリング」を加味し、本物の「創世記」(範囲を絞ると、系譜の箇所)をパロディした内容。学生の時は「こんな小説があるのか!?」と驚愕し、後の短編を読むのを止めてしまったのは、今ではいい思い出。なのか?
「死にかた」
社内に突如現れたオニによって、社員が金棒で次々と惨殺される話。社員一人一人が順番に惨殺されるのだが、それぞれの死に方が非常に特徴的。ユニーク。死を前にした人間の取る行動を、誇張がすぎるくらい上手く表現している。人がバンバン死ぬのに陰惨な話にならず、面白可笑しい。
「発明後のパターン」
こういう作品大好き。
あらすじ:ハリボガト博士はベラルゴしたロチャニをエドドジロビソることに難色を示していたけれど、クロドレズにポルヘリドをピタロレると脅され、しぶしぶ同意。だがハリボガト博士が同意したのは、クロドレズがロレパコることを想定してのものだった。
「案内人」
オチの意味がマジで分からない。単に投げっぱなしなのか、実は意味がある内容なのかの判別もつかず、「むむむ」と頭を悩ませた。
この作品、『世にも奇妙な物語』の原作に使えそうだな~と。もっとも、筒井康隆の作品は、既に何本か『世にも奇妙な物語』で映像化されているけれど。
「裏小倉」
小倉百人一首のパロディ。百首全てのパロディを制作。こんな手間のかかること、よくやったな~と感心しながら読み進めると、後に行くほどあからさまに手抜きになっていて笑った。
「三人娘」
これ、三人娘が気弱な課長をいびり倒すのを笑う話なんだろうけれど、サラリーマン的には背筋が薄ら寒くなるリアルホラーだわ。色んな意味を含めて、強くありたい。
◎『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズへの影響
表題作に関しては、真っ先に思いつくハルヒシリーズへの影響をピックアップできず。ハルヒシリーズに系譜ネタ、ジャズのバブリングに類するネタって、無かったはずだし。
別に無ければ無いで「影響なし」としても良いのだが、あえて無理にこじつける。「まだ無い」→「今後発表される作品に?」として、何らかの系譜ネタが盛り込まれるとか。系譜ネタとして想起できるのが、朝比奈みくると鶴屋さん。未来人の朝比奈みくるには「ご先祖様が誰なのか?」という疑問がつきまとうし、キョン妹との血縁的関係性が匂う。またご先祖ネタとして、鶴屋さんと、オーパーツを鶴屋山に埋めた鶴屋房右衛門が思いつく。今後、鶴屋房右衛門→鶴屋さんへの系譜が語られたりも。
もっとも、「バブリング創世記」並みの、「おぃおぃ」「んなアホな」となるくらい意外性のある系譜でないと「影響を受けている」とは言い難い。単なる家系図ではダメなのが難点。
表題作以外では「鍵」がもろにフロイト入っていて、谷川流氏のツボを刺激したことが伺える内容。(谷川氏が読んでいるという保証は無いが。)無意識の扉を開くための鍵が周到に用意され、主人公は鍵に導かれる形で新たな扉へ到達し、これを開錠する。主人公は扉を開けるたび、ひとむかし前の自分と向き合う形となる。深層心理のより深いところへと到達すると……それは解りましたよ、ユキさん。などといきなり古泉になって誤魔化してみる。
ハルヒシリーズにおいて、キョンは「鍵」で、ハルヒは「扉」である。鍵自身には何の効果も無いが、扉を開けるという唯一にして重大な役割がある。物語は鍵を中心に展開し、扉の心を開くに至る。
俗な書き方をすれば、キョンの立派な鍵をハルヒの鍵穴にぶちこんで、ガチャガチャとかき回してあげれば扉が開く、というわけだ。これだと『涼宮ハヒルの憂鬱』の考察ですな。
てな感じで、「鍵」についてハルヒシリーズへの影響を考察したけれど、「長門有希の100冊」の対象はあくまで『バブリング創世記』であり、「鍵」が一緒に収録されていない本もあるのがネック。
◎他
本書の短編のいくつかはAA化されている。「モララーのビデオ棚」にログがストックされているので、作品の未読・既読問わず、一読をオススメ。
(新)モララーのビデオ棚「バブリング創世記」
(新)モララーのビデオ棚「裏小倉(1)」
発明後のパターン(1)
発明後のパターン(2)
ちょっとしたネタ話。一部の文字を背景色と同じにしているので、未読の方でネタバレを見たくない方はカットの方向で。
第一章の最後の一節「ヨシタカ、ヤスタカを生み、ヤスタカ、シンスケを生めり。」は、筒井康隆の父・筒井嘉隆と息子・筒井伸輔。これに自力で気が付けたのは、ちょっと嬉しい。
ちなみにこの要素についても、ハルヒシリーズへの影響を考慮したのだが、父親や息子が絡んでくる展開って、無かったよなぁ。
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関連アーカイブ
・「長門有希の100冊」を読む(3)『海がきこえる』
・「長門有希の100冊」を読む(2)『たったひとつの冴えたやりかた』
・「長門有希の100冊」を読む(1)『復活祭のためのレクイエム』
関連ページ
・長門有希の100冊
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コメント
「バブリング創世記」といえば吾妻ひでお「不条理日記・電気羊を買う」の元ネタという認知でした(^^ゞ
テクノロジーバンザイ!(爆)
Posted by: unos | 2006年12月10日 19:53
>unos様
『不条理日記』は未読なのですが、『バブリング創世記』をどうやってパロディしたのか、非常に興味をそそられます。機会があったら、読んでみたいと思います。
Posted by: 鈴木舟太 | 2006年12月10日 22:14
>不条理日記
そのくだりは一発ネタぽいんですが結構バカバカしくて好きです(^^ゞ
Posted by: unos | 2006年12月10日 22:25
筒井康隆御大と言えば日本ではSF、メタフィクションの大家ですから、作り手も何かしら影響受けてそうですね
映像関係の人も結構愛読している人が多いそうですよ
Posted by: jwno | 2007年11月03日 16:57