2006年06月05日

研究論文:長門有希の幻想ホラー『無題』三部作に対する考察

 ハルヒシリーズの最新刊『涼宮ハルヒの憤慨』に収録された「編集長★一直線!」の中において、SOS団の面々は文芸作品を記している。その中で長門有希は、「幻想ホラー」の枠組みで、『無題1』『無題2』『無題3』という3つの短編作品を記している。この作品は、長門有希が自身を語った作品であると考えられているものの、内容が暗喩めいている上、抽象的で容易に想像ができない文章となっている。
 今回、この長門有希が記した幻想ホラー『無題』三部作について推測、考察し、私見を述べてみる。


(1)無題1「過去」

 まず一番に気になることは、冒頭で記される「自分は幽霊だ、と言う少女」の正体であろう。後にある「少女は消えて、私は残された。」の一文から、「この少女は長門有希の前から消えた存在」→「朝倉涼子」と考える向きもある。
 しかし、その後に続く文章により、長門有希の「有希」という名前は、涼宮ハルヒの存在する世界において降り続く「雪」から取られた名前であることが推測できる。つまり、涼宮ハルヒの存在する世界に到着した後で「長門有希」の名前を自分自身に付けた点を考慮すると、それ以前の段階で朝倉涼子が消えることは腑に落ちない。

 では「自分は幽霊だ、と言う少女」の正体は誰か。
 『無題3』を読み終えたキョンが、「幽霊=朝比奈みくる」のような感じがする、と述べている。この仮定を元にして『無題1』を読み解いてみると、なるほど、合点がいく。以下にその仮説を記す。

 まだ名前の無かった時の長門有希に、朝比奈みくるは出会った。幽霊には名前は無い、つまり「朝比奈みくる」という名前は本当の名前ではない。「未来」→「みくる」として付けた、偽りの名前。だから長門有希は朝比奈みくるを指して、名前が無い幽霊であると表現した。
 未来からやって来た朝比奈みくるは、長門有希が行くべき場所へ導いた。そして住居とするマンションに到着したところで、「彼女は彼女の場所へと戻ったのだろう」の通り、朝比奈みくるは自分のいるべき未来へ戻った。
 そして後に残された長門有希は、この世界の奇蹟を初めて目の当たりにして、自分自身に「ユキ」の名前を付けた。

 『涼宮ハルヒの憂鬱』において、朝比奈みくるが文芸部部室で長門有希を見た時、朝比奈みくるは目を見開いて驚愕していた。
 読者にとっては、これが2人のファースト・コンタクトだと認知されている出会いである。朝比奈みくるの驚愕は、涼宮ハルヒの観察者同士が接近してしまったことに対する、驚きの表れであると考えられる場面である。しかしこれがファースト・コンタクトではなく、既に一度出会っていて、思わぬ形による偶然の再会であったとしたら。


(2)無題2「現在」

 冒頭の記述については、情報統合思念体の一端末であった自分のことを記していると思われる。「多くの私がいる。」とは、文字通りの意味ではなく、自分と同じ、名も無い情報端末が沢山いることの暗喩であろう。
 情報統合思念体という集合体を氷とし、仲間や自分は水のように広がって拡散した蒸気の一粒子として表現。拡散した粒子である長門有希は「様々な場所に行き、様々なものを見」ることができた。しかし情報端末である長門有希は、情報を収集するだけの機能しか有していない。自分で思考し、自律的な行動を取ることはできない。
 そんな長門有希が、ある時を境に「存在の証明」と表現するに足る、「意味」を見つけた。

 「私は出会い、それぞれと交わった。私にその機能はないが、そうしてもよいかもしれないことだった。」

 この一文について、

それぞれと交わった → 性交渉
私にその機能はない → 生殖機能
そうしてもよいかもしれない → 性行為

とし、「仮に許されるなら、私はそうするだろう。」とは恋愛を意味しているのではないか、という考えも浮かぶ。しかしこの考え方について、私は否定する。


 「私は出会い~」という文章の前に、「光と闇と矛盾と常識。」という一文がある。この「光と闇と矛盾と常識。」とは、SOS団の仲間を指しているものと想定する。

それぞれと交わった
 → 「光」「闇」「矛盾」「常識」との親交を深めた

私にその機能はない
 → 人間が当たり前のように持つ「意思」「感情」「学習」という機能

そうしてもよいかもしれない
 → 人間が持つ機能を有していないのに、人間同様の行動を取る


 自分で考え、学ぶことのできない情報端末が、情報端末としての高度な能力を捨て、知性を持つがちっぽけな存在でしかない有機生命体になることを夢見る。それは既に『涼宮ハルヒの消失』で顕在化しており、この『無題2』でも「仮に許されるなら、私はそうするだろう。」と、その願望を述べている。
 最後の「待ち続ける私に、奇蹟は降りかかるだろうか。ほんのちっぽけな奇蹟。」とは、自身が最初に目撃した「雪」のような奇蹟が、自分自身にも起こることを、長門有希は今も待ち続けていることを意味している。


 なお「光と闇と矛盾と常識。」に対応するSOS団の仲間は、次のように推測する。

「光」:朝比奈みくる
「闇」:古泉一樹
「矛盾」:涼宮ハルヒ
「常識」:キョン

 「光」と「闇」は対照的・対立的な関係。『無題3』における「白い少女」と「黒い棺桶に腰掛けている男」の描写から、朝比奈みくると古泉一樹であると推測。
 涼宮ハルヒは非日常を願いながらも、その実、常識的な考え方を持っている、自己「矛盾」した存在である。
 非現実的な存在に囲まれる中、唯一、自他共に、願望・思考とも「常識」を持ち合わせているのがキョンである。


(3)無題3「未来」

 この作品に登場する「男」と「少女」は、キョンが述べた感想の通り、古泉一樹と朝比奈みくるであると推定する。「男」はキョンで、「少女」は涼宮ハルヒではないか、という説も考えられる。しかし「発表会」という場所を想定すると、「私(=長門有希)」と「男」「少女」は、いずれも同じ立場で何らかの発表を行う存在であると考えれば、古泉一樹と朝比奈みくるである方がしっくりくる。
 この発表会において、長門有希は何らかの発表を行うことになっている。発表を行うことで、自分の居場所である「棺桶」へと戻ることができる。しかし今の長門有希は、「発表することがない。発表会に参加する資格がないのだ。」という。
 「棺桶」は、長門有希が戻るべき場所であることから、情報統合思念体の暗喩であると考えられる。そして長門有希が発表会で発表できる状態になった段階で、長門有希は情報統合思念体へと帰ってしまうことを表現している。


 上述した内容から、『無題』三部作について、次のように結論付ける。

 幻想ホラー『無題1』『無題2』『無題3』は、それぞれ長門有希の過去・現在・未来を記した内容である。

 長門有希の『無題』について考察し、自説の推論を多数述べた。これらの推論は、『涼宮ハルヒ』の物語が進むにつれ、正しいか、誤っていたかが明らかになるであろう。内容が明らかになった時、私は推論の正誤に一喜一憂するであろう。しかし推論の正誤という些末な問題に囚われるよりも、新たに紡がれた物語そのものを楽しめる存在でありたいと願う。

コメント

>「棺桶」は、長門有希が戻るべき場所であることから、情報>統合思念体の暗喩であると考えられる
しかしその考え方だと情報統合思念体の元に行くのを妨害しているのは古泉というよくわからない描写になってしまう。
無題の前後に書かれたキョンの言葉「ハルヒみせてもなんともおもわないのか」、長門聞くのを止めたとの描写にもつながらない気がするが?

>どうなのでしょうか?様
いえ、私は別に「男が棺桶に座っている」→「古泉一樹が邪魔をしている」とは捉えていなかったりします。

はっじめまして~。

いや、興味深く読ませて頂きました。
3の棺桶については僕は「人の輪」だと思いました。
一樹がどかないとってのが気になって…。
彼は未だに長門さんの事を「人型媒体」と認識してますから。
彼以外は長門さんを人として思ってますから「人の輪」に入れるんじゃないでしょうか?
しかし彼の認識が変わらないと、『SOS団』という人の輪には入れないと思ってるんじゃないでしょうか?
そして発表するものについて、僕は『感情』だと考えました。
2と被りますけどね(笑)
感情があれば、自然に人の輪に入れるのではないか?そう考えているんじゃないでしょうか?

長々となってしまってすみません。

コメントとか頂けたら嬉しいです。

>黒い死神様
こちらこそはじめまして。
確かに古泉一樹の口ぶりから、一樹をはじめとした『機関』の面々は、長門有希らを(宇宙人という面を差し引いても)人間とは思っていないフシがありますね。棺桶は帰還する場所ではなく、「人間」として迎え入れてもらえるか否かの象徴。その場合、長門有希は棺桶に「ヒューマノイドインターフェス」としての自分を葬り、「人間」長門有希になると。
なるほど、この解釈は非常に面白かったです。ご意見、ありがとうございました。

通りすがりのものですが、初めまして。

無題3について少し自分の意見を述べると、棺桶は「文芸部室=SOS団アジト」ではないかと思っております。
何かしら作品を書き上げて会誌を捌けば文芸部室は生徒会の手から開放され、いつもの場所に戻れる。
そう考えたほうが自然かな、と。
こう考えると「男=古泉」が邪魔している理由も説明できます。
古泉は今回の件での黒幕(プレゼンテーターと言ったほうが正しいか?)で、間接的とはいえ文芸部室を閉鎖しようとする張本人ですからね。
やっぱりと言うか、長門には全部分かってたんだろうなぁ(笑

長くなりましたが、それでは失礼します。

>通りすがり様
「無題3」については、色々な解釈が考えられますね。特に「棺桶」が何を指していて、「棺桶」の上に古泉一樹が座っている行為の意味するところが。
通りすがりさんの解釈、今回の文芸機関誌作成を主題にした話ですか。この考えは思い浮かばなかったので、非常にユニークで面白かったです。「全部分かっていた」という点に関しましては、後で喜緑江美里に教えてもらっているものと思います。

はじめまして。
他の推論も拝読させて頂きました。

この長門三部作について、私は“棺桶”ではなく“発表会”の方に着目しました。
“棺桶”は死者を収めるものであり、そこから“還るべき場所”の暗喩だ、という点は同じです。
古泉が棺桶に座り、戻る事がままならないというのは、古泉にあるが長門にないもの、の暗喩ではないかと思います。
そこで、私は“キョン (≒SOS団) に対する自分自身の気持ち”の暗喩ではないかと思いました。

古泉が座っているのは、「雪山症候群」で古泉が“『機関』に属する自分を捨て、一度限りであればSOS団の存続のために身を投げてもいい”と、立場からくる発言ではなく、個としての感情を真っ先に明言したからだと察します。
長門はあくまで“(観察対象だから、危機が及ぶ様なことは) 私がさせない”と言ったにすぎない、という揶揄でもあると思います。
つまり感情を持たない、というだけではなく、そこから“自分自身のキョン (SOS団) への気持ちを明確にする”という事が、参加資格であり、それを発表する発表会ではないか、と思います。

だから、少女は“待ちましょう。あなたが思い出すまで”と言ったのだと思います。
“あなたは、「好きにはさせない」と自分のスタンスを明らかにした。あとは、それが感情からくるものだと気付くだけ”という比喩に聞こえない事もないと思います。

これが現時点で私の中で、一番しっくりくる解釈です。

良いお題をありがとうございました。
この推論がなければ、ここまですっきりする自分の解釈を持つことができませんでした。
重ねてお礼申し上げます。

>のっと様
いえいえ、礼には及びません。私の方こそ、また新たな『無題』の解釈を目にすることができて嬉しいです。棺桶よりも発表会の方に重点を置いた考察、非常に興味深かったです。長門有希がキョンに対して、自身の「感情」を発表できる日がやって来るのか、作品の続きが楽しみです。

前挨拶をするのを忘れていたので…始めまして。

考察大変面白かったです。
少し私意見を述べさせていただきますと・・・
私も無題1の幽霊=誰か。を、私も一生懸命考えたのですが…
この話の時間=長門がこの世界に来た時=三年前の七夕より前…つまり、未来人(みくる)は来られないのではないのか?
と、考えたのです。
でも、色々な面から考慮しても(キョンの予想も含めて)やはりみくる説がしっくりきます。
みくるは嘘をついているのでしょうか…?

長くなってすいません…。難しいですね。これはやはり、長門からの「読者への挑戦状」かも知れません…。

初めまして。
推論を興味深く拝読させていただきました。

私も、この三部作が「過去」「現在」「未来」を指し、1作目の「幽霊」が「みくる」であると考えていたので深い共感を得ました。

お目汚しかと思いますが、私の考えを述べさせていただきます。

まず、長門が書いたこれらの文は、説明しづらい概念を文章にしてみたものだと思います。文学少女である長門が考えを文章にするのが苦手というは、あまり考えられないと思うので。ここで言う、説明しづらい概念とは自分たちの存在といってもよいかと思います。

私は1つの可能性として、「長門」「みくる」「古泉」の3人は同源であるという考え方をしています。この3人はおそらく「情報統合思念体」の「思念」であったという考え方です。そう思うと納得できることがいくつかあります。

まず3作目の「発表会」についてですが、「発表会」とはすなわち演劇のようなものだと思っています。これは、もともと「思念」だったものが「役」を与えられて演じる、RPG的な(現実?)世界のことを指しているのだと考えることができます。
そして「棺桶」はこの場合、いうまでもなく「情報統合思念体」であるということができるかと思います。

そして1作目ですが、これは世界に「役」を与えられて生まれる前の情報統合思念体での出来事ではないかと思います。つまり「名前のない幽霊」=「思念」であると考えています。「彼女の場所へと戻った」というのは世界に再び「役」を与えられた、生まれたことへの比喩ではないかと思います。
おそらく「古泉」→「みくる」→「長門」の順で世界に「役」を与えられていることになると思います。「みくる」の発生順がおかしいような気がしますが、「世界」に「役」を与えられることが決定すると「思念」ではなくなるのなら、「時間」は無意味になってどんな時系列でも発生することが可能になるかと思います。

原作では、みくるは『あの人たちは私と極めて近い存在です』と語っていますが、これは同源であることの裏付けに近いのではと思っています。

長文になりすみません。ではこれにて失礼します。

>一条家様
いえ、時系列順では「時間断層がある時期」よりも後に長門有希が造られているので、朝比奈みくるが名無しだった頃の長門有希を訪ねることは可能です。勘違いされているようですが、「時間断層がある時期=七夕の日」ではなく、時間断層がある時期は七夕よりも前の時期です。

>通りすがり者様
こちらこそはじめまして。
古泉一樹や朝比奈みくるも、情報統合思念体という氷から発生した一滴、というわけですか。それは今まで思いつきもしなかった考えなので、ちょっと驚きました。情報統合思念体が既に未来を支配していたり、『機関』を操っている存在である可能性もあり得ますし。
視点を広げる考察、ありがとうございました。

 どうもはじめまして。
 考察、興味深く読ませて頂きました。

 皆さん、色々な意見をお持ちのようなので私の意見も恐れながら書かせていただきたいと思います。

 「無題1」を見ていくと、”私が名前を問うと、彼女は「名前はありません」と答えた”また”「名前がないから、幽霊なのです。あなたも同じでしょう」”という部分をみると「幽霊」つまり他者に存在を認められない存在。それは「憂鬱」で朝比奈みくるがキョンに言った”パラパラマンガの途中に描かれた余計な絵みたいなもの”からその時間平面に本来存在しなかったもの、するはずのないものということになる。そしてその後長門有希は自分の役割を知ったことで、ようやく一人の登場人物になれたのだと思います。またここに古泉一樹が登場しないのは彼は例の日に能力を得た元々存在する人物なので、存在することを認識できなかった長門有希とは立ち位置が違うからだと考えます。

 次に「無題2」の”多くの私がいる”は過去・現代・未来の各時間平面に存在する長門有希を指す。氷→水→蒸気の変化は、全ての自分と同期をし、目的だけを見つめていた自分→外的要因・自我の発生によりあるべき姿を保てなくなってきている自分→自らの意思で行動すると決めた自分。”蒸気のように拡散した”とは、各時間平面の自分と同期をしなくなった。一人ひとりの有希の結晶ということになる。
 また”物質と物質は引きつけ合う”は「無題1」の意見で書いた通り、役を持つことでカタチを象ることができ他者と接触できる。

 最後に「無題3」ですが、注目するのはやはり話題になってる「棺桶」と「発表会」になります。
 私はこの棺桶の中が空だとは思えませんでした。ここは長門有希が出て、そしてもどる場所だと言っています。だからこの中には長門有希の例えるなら「忘れ物」が入っているんじゃないかと考えました。その「忘れ物」は長門有希が誕生したときには必要なかったが、ある日を境に必要になったからそれを取りに来た。そしてそこに「男」と「少女」がいて発表会のことを聞かされ、それを行わないと棺桶には近づけない。私はこの発表会は「答え合わせ」だと思っています。長門有希が、自分の意見を持ちそれを「男」と「少女」に発表するとそれがどんなことでも二人は肯定する。そのことで長門有希はその意見を正しいものとして認識することができ、棺桶へ辿り着ける。しかし、長門有希は曖昧なことを口にできないのでいつまでも答えを発表することができない。という感じなのではないかと思いました。

 ちなみに「幽霊の少女」と「オバケ少女」ですが、キョンは作中で「朝比奈みくる」であると言っています。しかし長門有希がこの似ているけど違う二種類の描写の使っていることから、「幽霊の少女」=「朝比奈みくる(大)」「オバケ少女」=「朝比奈みくる(小)」となるのではないかと考えます。

 この「無題」から私は涼宮ハルヒを中心とする舞台で自分の役を演じる中で生まれてしまった、役という枠を超え用意された行動・台詞以外のことを考え出した長門有希の様子が描かれているのではないかと思いました。

 長文な上、分かりにい文章になってしまいました。失礼します。

初めまして。
考察面白いです。
ここの考察を見てから『無題』を読み返してしまいました。
よろしければ僕なりの意見を聞いてください。

3はちょっと分からないので1について。

まず「幽霊」ですが、これは名前が無いことから、人と区別される
必要がない存在、つまり、人と交わらずに対象を観察する
観察者としての立場を表しているのではないかと考えています。

で、この無題1の中で一番気になるのが、「どうして忘れていたのだろう」の一文です。
長門有希が何かを忘れるということは考えずらいのですが、
過去に一度目的を忘れていたことがあるように僕は思えるのです。
それが『消失』のときの暴走。
あのときは完全に本来の目的とはなれた行動をとっているように思えます。

その暴走した長門を修正したのは未来からきた長門なので、幽霊の少女は未来からきた長門で、
「私」は修正された直後の長門ではないかと思います。

そして、観察者である以上SOS団とつきあい続ければ、
また暴走を起こす危険があるので、『消失』の病院でのキョンとの会話のように処分が検討されます。
それにキョンはマッタをかけるわけで、そうなると観察者の立場からはなれないわけにはいきません。
これが、最後の「幽霊でなくなった」の意味するところではないかと思います。

もちろん、雪を見て有希と自分に名前を付けたのは事実でしょうが、
それは高校で涼宮ハルヒを観察するための方便としてつけたにすぎないのではないかと思います。
名前の無い人がクラスにいたら誰だって怪しいと思うでしょうから。

さらに、長門は「消失」以降は感情をだいぶ表に出しているように感じます。
また、古泉一樹も長門のTFEI内での位置の変化を示唆していますし。

長くなってしまいましたが、これが僕の考えた無題1の考察です。
では、失礼します。

>楊々様
無題2についての、「多くの私」が、過去・現在・未来の長門有希のことを指しているという解釈には感心しました。確かに、この文章を書いている時点での長門有希は、他の長門有希と同期を切っているので、「拡散した」と言えますね。また、「幽霊」と「オバケ」が、別の朝比奈みくるを指している点も、同様に感心しました。新しい解釈、ありがとうございました。

>己巳様
なるほど、『無題1』の記述は『涼宮ハルヒの消失』を語ったもの、という解釈ですか。今までその解釈は見聞したことが無かったので「ユニーク」という単語が脳裏をよぎりました。
ちなみに「長門有希」という名前については、「雪」ではなく「「笹の葉ラプソディ」でキョンが“長門有希”と呼んだから」という、夢の無い説もあったりします。3年前の七夕の時、キョンが待機中の名無しのヒューマノイドインターフェースに対して“長門有希”の名前をインプットしたため、この個体はキョンの命令に忠実、というわけです。

唐突に思いついたことをコメントさせて頂きます。
「無題1」の時間軸を未来、幽霊少女をみくる、行くべき××××を四文字の団体だと仮定してみると、まるでエンディングのような光景になります。

…ただ、名前の由来部分が意味不明になってしまいますが(^^;。駄文、失礼いたしました。

>松様
すみません、何のネタか分からないのでツッこめないのですが、「××××へ行こうと思っていたのではないですか?」の部分ですね。そういえば「××××」も、結構謎ですね。「ちきゅう」「にっぽん」とかそういう意味だろうと、適当に補完していたのですが。具体的な呼称があるんですかね。

初めまして。
長くなってしまったのですが…
「無題3」について考えてみました。

まず、「無題3」は長門が情報統合思念体に帰ってしまう話。ハルヒシリーズラストあたりの話として勝手に考えてみました。

皆それぞれの帰るべき場所、朝比奈さんなら未来へ、長門なら情報統合思念体の元へ帰ってしまうのか…、それともSOS団での日常を選ぶのか。
と、そんな話で、

棺桶=情報統合思念体。
黒い男=古泉。
白いオバケ=朝比奈さん。
とします。
そして、全てが終わったとき(何かは知らないけど)、長門は情報統合思念体の元へ帰ろうとします。
そこで古泉が。
「発表会はまだ始まっていません」と止めます。
「本当に情報統合思念体の元へ帰りたいのか、それとも…」と。
おそらく古泉と朝比奈さんには既に結論が出ていて、それは
「やっぱり自分の居るべき場所はあの日常だ」
と決めているのかもしれない。
そして長門には結論が出ていない。

でも長門には、自分でも解らない気持ち、自分でも気付いていない気持ち、
「本当は統合思念体の元へ帰りたくない」という気持ちがある。

「待ちましょう、あなたが思い出すまで」
長門が消失の時に望んだ時のような気持ち、「普通の世界を望んだ時の気持ち」。
そして発表会=「自分にとって本当に居たい場所はどこか」を確かめ合う、発表会のような物、発表し合う事なのかな、と。

そして、長門にとって情報統合思念体は棺桶のように感じている。
自分でも気付いていないが本当は帰りたくない場所、役目を終えてこの世界とは別れることになる場所。
そうなる事が恐いと思ってる。
それが棺桶となって表されたのではないか。幻想ホラー。長門にとって恐いと思うこと。

古泉くんが腰掛けて退かなかったのも、古泉くんも、長門を統合思念体の元へ帰したくないと思っていて、皆で揃って日常に帰りたいと思ってるけど、長門は自分の気持ちに気付かないまま、結論が出ないまま帰ってしまおうとしたから。

と、考えてみましたが、まとめるのが苦手で長くなってしまいましたが、どうでしょうかね。

>NAG様
なるほど、古泉一樹が棺桶に腰掛けているのは、長門有希を情報統合思念体のもとへ帰さないようにするのが目的、というわけですか。そして長門有希自身も薄々帰りたくないと思っていて、思念体のもとへ本当に帰った場合、そこは「棺桶」となり、『涼宮ハルヒの消失』で望んだ気持ちを披露することが「発表会」へつながると。
これは一樹が「雪山症候群」において語った、「長門有希が窮地に追い込まれた時、一度だけ『機関』を裏切ってキョンに味方する」というセリフにもつながりそうですね。

初めまして。様々な考察を楽しませてもらっています。
私も一説、考えてみました。

まず「幻想ホラー」というキーワードです。
涼宮ハルヒシリーズと言えば、小説としての様々な手法を取り入れています。ある時はSFであったりミステリーであったり映画であったりと。じゃあ幻想ホラーはあったっけ……?
「雪山症候群」はまさに、得体の知れない不気味な力を持つ者によって、目的の知れない洋館に閉じ込められ、終始、暗く重々しい空気に包まれています。P229ではキョンがホラーへの分岐について言及してますし、夢かウツツか判らない幻影も登場します。
しかし「暴走」のP104から長門がこの一件について解説をします。結局、悪意や敵対心という攻撃ではなく、統合思念体とは異なる宇宙存在が、何らかのコミュニケーションを図ろうとしただけではないか……というオチ。つまり、長門とその宇宙人のやりとりが「無題1」になるのではないかと。

遭難してからの長門は、統合思念体とは通信できず、負荷も掛かり、ずっとぼんやりしたままのポンコツロボット然としています。無力な自分に甘んじるように。そのまま自室で就寝した所に(P275)宇宙人が現れたのではないでしょうか。「幽霊」を「宇宙人」に置き換えつつ……「少女に出会ったのは(3ヶ月)ほど前の事だった」「(元の世界)に行こうと思ったのではないですか?」 ここでようやく、統合思念体から切り離されてぼんやりモードだった長門が目覚める。キョンの描写にあるように(P276)窓の外は雪あかり。自意識が覚醒、長門単体による渾身の力で例の幻覚とパズルの鍵を勝ち取った。力を使い果たした長門はその後、まるで人間の女の子のように熱を出して倒れる。
……というのは妄想が過ぎますでしょうか。
実際、この辺のパズルに関するプロセスは古泉の大雑把な推測しか提示されておらず、最後まで明示されていません。また「陰謀」P106では未知の宇宙人の話に対して、みくるが何やら不可解なリアクションをしています。あと、直接的ではありませんが、「雪山」のP197で古泉が「ユキ」について思わせぶりなセリフ。ハルヒの事でキョンに意味深発言することはありますが、これはちょっと違和感あります。P261では長門の宇宙人性が希薄になっていることを語ったりと、「無題1」の幽霊脱却な話に繋がるような。

次に「無題2」。
これはすでに読みが被っている方がいらっしゃるのですが、「陰謀」のP100~102にある異時間同位体との決別だと思います。時間の数だけ無限にいた長門有希を切り離す事によって、エラー回避とより自由な自律機動を得たこと。「私にその機能は無いが」つまり、端末として真っ当なコミュニケーション能力を備えられなかったが、許されるならば手に入れたいと。

最後に「無題3」。
これも被る部分のある方がいらっしゃいますが「編集長★一直線!」の出来事。
棺桶は部室、発表は小説書き、男は生徒会長、オバケ少女は喜緑さん。男が笑っているのは、生徒会長がお芝居をしているだけの道化師に過ぎないということ。少女が白い布を被っているのは、宇宙人が化けの皮を被っているということ。ついでに「遅れてしまいました」は遅れて生徒会に潜り込んだ喜緑さん。長門は自分が文芸部であるとは思えない(思い出せない)、しかし部室(棺桶)が自分の居場所であることは間違いないと。

以上、これら無題三部作は、長門の身に起こった最近の出来事をつづった日記のようなもの。小説は書けないので「発表する事がない、発表会に参加する資格がない」のだと文中で明言している。キョンに覗かれるのを嫌がる描写も、作品ではなく日記である事を意図してるんではないでしょうか。そもそも観察する事を目的に作られたアンドロイドなので、創作(自己表現)は苦手なのかも。
またこの解釈だと、異時間同位体を切り離す前後の、長門にとっては自意識の変化を遂げた時期の出来事でもある。
ちなみに、キョンの感想はミスディレクションの気がします。

>あるみく様
考察の披露、ありがとうございます。『無題1』が「雪山症候群」での出来事を綴ったもの、という考察は非常に面白かったです。「雪山症候群」では、長門有希を襲ったとおぼしきモノの正体や、パズル関連の出来事がはっきりしていないので、それをボカして綴ったというわけですね。

光…何も無い所から情報を生み出すハルヒ。キョンもそのアグレッシブな思考を「ホワイトホール」と例えたことがある。
闇…光から生まれたニキビの治療薬である古泉。登場人物の中ではもっとも「現状維持」を強く打ち出す立場でもある。
矛盾…既定事項と個人的感情の狭間に揺れるみくる。現時点では定かではないが、今後(大)と(小)とでスタンスが変わってきそうな節もある。
常識…世界の舵取り役であるキョン。

この世界では、キョンの「常識人」というのも立派な異能力に分類されるのでしょうね。普通あんな連中に囲まれたら、気が狂うか私利私欲に走って自滅するか、というところです。

光と闇と矛盾と常識ってのをどう解釈するかで皆さん色々あって面白く読ませていただきました。
矛盾と常識は対義しませんが、光と闇は明らかに対義しているので一つの現象についての表と裏って意味でいいと思います。
そう考えると匿名さんの解釈がとってもすっきりする気がします。

光……ハルヒ・通常空間。機嫌が良いと現実世界の改変をしてしまうこともあり。
闇……古泉・閉鎖空間。ハルヒの機嫌が悪いと作られる閉鎖空間でのみ活躍できる能力もち。
矛盾……みくる・未来から来ているのに何も知らない。
常識……キョン・世間一般の常識がなんなのかを思い出させる役割。

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